僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

総括『ウルトラマンタイガ』 / 子供が初めて触れる「差別」と「偏見」の物語として

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 7月から半年間に渡って息子と追いかけてきた『ウルトラマンタイガ』が今日、最終回を迎えました。

 

 『タイガ』に関しては、ブログで取り上げる回数を意識的に増やしていたこともあって個人的な思い入れはかなり強いです。そして何より、前作の『ルーブ』やその前の『ジード』以上に、今年で5歳になった息子の記憶にはこれからも強く残り続けるウルトラマンになったことでしょう。

 一緒にテレビを見ていても、彼は覚えたての言葉を使って具体的な感想を僕に聞かせてくれるようになりました。少しずつではありますが、彼なりに「物語」をちゃんと理解してきているな、と。今日の最終回、主人公・工藤ヒロユキの成長ぶりはもちろんですが、僕はそれを見つめる息子の成長にも少しばかり感動してしまったのでした。

 現行のウルトラマンを見るときに、僕はどうしても「特撮オタク」的な目線と「父親」の目線を分けて考えてしまいます。こと『タイガ』においては、「父親」の目線で見たときに、ひょっとしたらこれは子供が見る番組としてとてつもなく価値のある作品なのではと感じることが多かったです。それは最終回でも描かれた「地球人と宇宙人がいかにして手を取り合うか」という部分。

 

 

 

 

※以下、ネタバレを含む箇所があります。

供番組としての姿勢

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 第9話、イージスのホマレ先輩が実は宇宙人だったという展開。個人的には「ホマレ先輩の宇宙人としての姿をどうして見せてくれなかったんだ」とか色々と不満はあるのですが、ホマレが自身の秘密を仲間に打ち明け、周りがそれをごく自然に受け入れていく様子には子供番組としてのウルトラマンのあるべき姿を見た気がします。

 今日の最終回では、宇宙人を迫害しようとする地球人が逆に宇宙人に命を助けられて心を揺れ動かされる場面があったり、最終決戦で共同戦線を張ったマグマ星人やマーキンド星人がイージスの新入社員として迎えられたりしていました。最後のナレーションにも「これは、宇宙人たちとの共存へ大きな一歩を踏み出した若者たちの物語である」とあったように、地球人と宇宙人の共存の可能性をポジティブに描いて終わった印象です。

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 ただ一方で、これまでの『タイガ』の物語では、その「共存」はそう簡単なことではない茨の道であるという描かれ方もされていて。「地球人がそんな世の中を作れると思うかい?」と地球人への不信感を口にする者もいれば、過去に差別を受けた復讐心から地球人に直接手を下そうとする者もいました。そして、ほとんどの宇宙人は最終的に命を奪われたり、身分を隠して地球でひっそりと暮らすしかなくなっている。特に初期は上の記事にも書いた通り、見終わった後に絶妙な「後味の悪さ」を残す回が多く、それが『タイガ』独自のカラーになっていました。

 『タイガ』が描く地球人目線の宇宙人の物語は、4歳~6歳くらいの子供が初めて目の当たりにする「差別」と「偏見」の具体的な例じゃないかと思うんですよね。

 『タイガ』では「共存」を描く前に、それを実現するために必要な課題や問題点をなるべくオブラートに包まずに見せようとしていて、子供番組としての実直な姿勢や取り組み方が伝わってきました。だからこそ最終回のポジティブな締めくくりにも一定の説得力が生まれていて。テレビ番組としての規制や制約を乗り越えて、子供が見るウルトラマンでこれをやってくれたことに僕は子を持つ一人の父親として最大級の賛辞を送りたい。

 これから10年、20年経って『タイガ』を見ていた子供たちが大人になったら、必ず再評価される時が来ると思います。それこそ、僕たちが未だに『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』を見て考えさせられるのと同じように。人類にとって、ある意味普遍的なテーマとも言える部分から逃げなかったことは称賛に値します。

の他もろもろ思ったこと

 爆発と共に姿を消したウルトラマントレギアの行方(まだ死んでないでしょう)や、ピリカがどうして帰ってこれたのかなど、まだ飲み込み切れていない要素も多いのですが、コンパクトにまとまったいい最終回だったと思います。

 「特撮オタク」的な目線でやや不満が残ったのは、トライスクワッドの3人とヒロユキの間のバディ感が最後までいまひとつだったという点と、トレギアの人間体・霧崎もめちゃくちゃ変な奴で印象には残ったけど悪役としての存在感はジャグラーや伏井出ケイには及ばなかった…そんなところでしょうか。最初に各設定を見たときのワクワク感が凄かったので、ちょっと期待し過ぎてしまったかなと。最高の食材を上手く料理しきれなかった感は正直残りました。

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 ニュージェネと言えばアナログ特撮の充実ぶりを毎年言及していますが、『タイガ』の特撮は過去のシリーズと比べても最上級だったと思います。毎週のように見られる「変態的」と言ってもいいゴージャスなミニチュア特撮の数々には本当に楽しませていただきました。録画を見返す際にコマ送りにした回数なら、僕の中で『タイガ』は断トツのナンバーワンです(笑)。

 

 

 

 

子の記憶に残り続ける作品として

 息子とは、『ジード』『ルーブ』ときて一緒にウルトラマンをリアルタイムで見るのはこれが3作目でした。息子のハマり具合で言えば、今回の『タイガ』が一番だったような気がします。

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 第1話を見たその日になりきりセットを買いに行き、遊び倒したのもいい思い出ですね。結局今年もほとんどの玩具は買い揃えてしまいました。

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 主役の工藤ヒロユキになんとか会いたいと、車で2時間かけてアリオ鳳まで足を運んだりもしました。来年2月の『ウルトラヒーローズEXPO THE LIVE』と3月の劇場版『ニュージェネクライマックス』も今から楽しみです。

 僕が子供の頃にハマった特撮で、最も強く記憶に残っているのは『電光超人グリッドマン』。今の息子と同じ、4歳から5歳になる頃に見た作品です。多分この『ウルトラマンタイガ』が、これからの息子の記憶に最も残り続ける特撮作品になるんじゃないかと僕は踏んでいるのですが、どうなることでしょう。

 買ってもらった玩具で沢山遊んだことや色々な場所でイベントに参加した思い出はもちろん、番組が伝えようとしていた「差別」と「偏見」、そして「共存」へのメッセージが大人になった彼の中にちゃんと残ってくれていたら、ウルトラマン好きの父としてこんなに幸せなことはありません。

 あと、これは最後の最後にほんの少しでもいいのですが…。僕が毎週土曜日の朝、爆睡する君を起こすことにそこそこ苦労していたこともたまに思い出してね、と(笑)。