今年の2月からスタートした不定期連載企画「あなたとトクサツ。」も、いよいよ節目の第20回を迎えることとなりました。
これもひとえに、勇気を持って手を挙げてくださった皆さまと、読者の方々のおかげです。本当にありがとうございます。そして今後も当ブログと「あなたとトクサツ。」をよろしくお願いいたします。
「あなたとトクサツ。」第20回のゲストは、ブログ「れんとのオタ活アーカイブ」で、近年のウルトラシリーズや特撮・アニメ作品と幅広い分野で怒濤の如く名文を連発されている虎賀れんとさん(id:kogalent)です。
●「あなたとトクサツ。」とは?
「あなたとトクサツ。」は、読者の「特撮と人生」にスポットライトを当てる企画です。
人生で最初にハマった特撮作品、好きだった特撮を「卒業」または「復帰」することになったきっかけや時期、特撮のおかげでこんなに良い思い / 悪い思いをした等々、「特撮と人生」にまつわるお話をたっぷりと語っていただき、インタビューを通して更に深堀していきます。
れんとさんとは、TwitterやTwitterのスペース機能で何度も交流させていただいている他、今年の8月には、池袋で行われた『ウルトラヒーローズEXPO2022 サマーフェスティバル』でもご一緒する機会に恵まれました。
非常に厚かましい話ではあるのですが、僕はかねがね「れんとのオタ活アーカイブファン」を公言しておりまして。
特にれんとさんにとって今や名刺代わりとなっているウルトラマンタイガの総括記事と、圧倒的なボリュームで読ませるウルトラマントリガーの総括記事(『トリガーの放送終了後、れんとさんの総括記事が更新されるのを僕は心待ちにしておりました)は、今でも作品を見返す際のお供として繰り返し拝読しながらいつもふむふむと納得させられています。れんとさんの作品への熱量と冷静な考察、そして「ウルトラマン」というコンテンツへの愛情。この3つのバランスが本当に絶妙で、読んだ後にますますその作品のこと好きになっている自分がいるんですよね。まだ未読のウルトラファンの方は是非この機会に!絶対、おすすめです。
今回、れんとさんにはある特撮作品との出逢いを通じて得た「物語への気づき」について語っていただきました。
れんとさんの人生を一変させたという「運命の出逢い」。それは今も続けていらっしゃる創作活動の原動力にもなっているとのこと。一度は特撮から卒業しかけたれんとさんの少年時代から現在につながる実にドラマチックなストーリーに、インタビュアーとしてまた新たな「特撮と人生」を覗き見できたことへの喜びがありました。
それでは、「あなたとトクサツ。」第20回です。
『ウルトラマンメビウス』との運命の出逢い
第20回:虎賀れんとさん
自分の「特撮と人生」について考える時、どうしても外せない「とある一言」があります。
「ウルトラマン卒業するからこれ買って!」
まだ小学生だったある日、僕はあろうことか「自分から」特撮を卒業しようとしていました。その理由として「クラスの皆が特撮を残らず卒業してしまった」ことが大きかったのは間違いないのですが、僕が特撮から離れかけていた根本的な原因は「物語に興味がない」という、自分自身の気質にあったと感じています。
ウルトラマンも仮面ライダーも、スーパー戦隊も怪獣映画も、当時の自分は、まるで物心付く前の子どものように「戦闘などの “派手な場面”」ばかりを楽しみに見ていました。
ドラマシーンから何かを感じることはあっても、そのようなパートを「退屈」と感じる気持ちの方が強く、当時リアルタイムで見ていたはずの『ウルトラマンネクサス』や『仮面ライダー剣』についても、そういったドラマ周りの記憶がほとんどありません。ましてや戦闘シーンのないもの……つまり、学校の図書室にあるたくさんの本や様々なドラマ、映画には全くと言っていいほど興味が湧かず、当時の僕は驚くほど「物語」と縁のない人生を歩んでしまったのです。
そんな僕の人生が一変したのは、冒頭の発言から2年後、とある特撮作品との出逢いがきっかけでした。
その作品とは、2006年に放送された『ウルトラマンメビウス』。『帰ってきたウルトラマン』などの過去作品から毎週のように怪獣が復活し、時にはウルトラ兄弟まで登場する『メビウス』に僕はすっかり釘付けになってしまったのですが、自分がこの作品にハマった理由はそれだけではありません。
『メビウス』は、怪獣たちを物語の軸に据えたバラエティ豊かな作風という「王道」を敷きつつ、そこに「未熟なウルトラマン×未熟な防衛チームの成長譚」や「次々と波乱が巻き起こる多段ロケット風の作品構成」といった斬新な要素をプラスした作品で、安定感のあるオムニバス的な面白さと「早く続きが見たくなる」という強いフックが両立された、ある種「ウルトラマンシリーズの理想形」とも言える作品でした。
当初こそ『メビウス』を過去の怪獣・ヒーロー目当てで見ていた自分でしたが、次々と繰り出される「予想外の展開」にワクワクしたり、種族を越えて絆を深めていくCREW GUYSの姿に心を打たれたりと、徐々に「それ以外」の部分も楽しみになっていき、そのことは転じて、怪獣やヒーローの活躍をより深く味わえることにも繋がりました。恥ずかしながら、自分はこの時ようやく「ウルトラマンシリーズなどの “特撮ドラマ” 」……ひいては「物語」というものを、心の底から楽しめるようになったのです。
また、この『メビウス』を経て自分にはもう一つ大きな変化が起こりました。それは「ストーリー漫画」を描き始めたことです。
当時の自分はクラスの流行に乗っかる形でギャグ漫画を書いていたのですが、本音ではストーリー漫画を描きたいと考えていました。それを実行に移さなかったのは、絵が下手だという劣等感と、真面目な創作をすることへの気恥ずかしさがあったから。
しかし、そんな劣等感や羞恥心に負けず、それを乗り越えてしまえるほどの「自分もこんな物語が作りたい」という衝動と憧れを『メビウス』は与えてくれました。漫画から小説・ブログ記事・ゲームシナリオへとジャンルこそ変わりましたが、約15年もの間自分が創作を続けられているのは、今も当時の想いが背中を押してくれているからに他なりません。
読み手としても書き手としても、今の僕の人生は「物語」なくしては成り立たないものになっています。そんな満たされた人生を歩めているのも、その中でたくさんの大切なものに巡り会えたことも、全ては「物語の面白さ」を教えてくれた存在=『ウルトラマンメビウス』との出逢いがあればこそ。
「この作品から受け取った大切なものを、いつか自分自身の作品で誰かに伝える」こと。それが一番の恩返しになると信じて、僕は今もあの日の憧れを追いかけています。
「物語」の扉をこじ開けるまで
―れんとさんとは、Twitterやスペースで仲良くさせていただいており、昨年の「ウルサマ」でも大変お世話になりました。
この度は「あなたとトクサツ。」へのご参加、誠にありがとうございます。冒頭の「ウルトラマン卒業するからこれ買って!」という一言には、小学生時代のれんとさんを想像しつつ少しドキッとさせられましたが、その後の『ウルトラマンメビウス』との出逢いと、今も続く創作活動へのつながりには僕もれんとさんの一ファンとして大変唸らされました。ここからインタビューを通して、れんとさんの「特撮と人生」を更に紐解いていければと思います。よろしくお願いします!
それではまず、れんとさんがリアルタイムでご覧になっていた『ウルトラマンネクサス』や『仮面ライダー剣』の中で、特に印象に残っている「戦うシーン」もしくは「派手な場面」を教えてください。
よろしくお願いします!
平成特撮で育った人間だからか、印象的なシーンと言えば「新しい形態の初登場~初戦闘」が真っ先に挙がります。『ネクサス』のジュネッスブルーや『剣』のキングフォームなども衝撃的でしたが、やはりダントツで印象深いのが『ネクサス』の最終回、ネクサスがウルトラマンノアに進化したシーンです。
映画の『ULTRAMAN』を見ていなかったこともあってか、両者に関係があるとはこれっぽっちも予想しておらず……。画面の前で「えぇ!?」と驚いたことまでしっかり覚えています。ただでさえ怒濤の最終回でしたが、このシーンのインパクトはまさに別格でしたね。
―確かに、ネクサスがノアに進化するプロセスは、映画『ULTRAMAN』を含めた「ULTRA N PROJECT」の流れを把握していない人にとってはただただ驚くしかないシーンだったと思います。ドラマパートの盛り上がりも含めて、平成の特撮作品の一つの特徴とも言える「強化されていくヒーロー」の代表的なシーンとも言えますね。
それでは逆に、れんとさんが物語に対して関心が無かった頃に、ドラマパートの中から特にこれは退屈だと感じたシーンや思い出などはありますか?
言葉にするのが難しいところなので、語弊があるかもしれませんが……「咀嚼」が必要なものは特に頭に入ってきませんでした。
考えさせられる話、謎が謎を呼ぶ展開、「雰囲気」で魅せてくる作品……等々、今でこそ大好きな要素に当時はどうにも興味が湧かず、『ネクサス』で描かれたミステリアスな物語は(とりわけ姫矢編は、話の暗さやビーストの続投もあって)自分には「退屈」と感じられていました。
当時の自分がそういった「物語」に関心がなかったことを裏付けるエピソードとして、『仮面ライダー響鬼』視聴中のある出来事がありまして。
主役の一人である仮面ライダー轟鬼=トドロキの本名が明かされた話があったのですが、見終わった後に父親(当時『響鬼』にいたくハマっていた)から、「トドロキの本名、何だったか覚えてるか?」と訊かれたんです。当時の自分は「そんな話出たっけ?」と思うくらい『響鬼』を雑に見ており……。「戸田山登巳蔵(とだやまとみぞう)だよ!」と怒られました。
そのくらい当時の自分からは「退屈そう」な雰囲気が出ていたのだろうと思いますし、父親が怒ったのも無理ないな、と今になって思います。今こうしている最中も、当時の自分に「お前さ~~~~~~~!!!!!」と言ってやりたい気持ちでいっぱいですね(笑)。
―なるほど……まあでも、「戸田山登巳蔵」は、真剣に見ていても覚えていられなさそうな気もします(笑)。
さて、『ネクサス』の謎が謎を呼ぶ展開に代表される「『咀嚼』が必要なもの」と、それに対するアレルギーをお持ちだったというお話が出ましたが、そんなれんとさんが虜になった『ウルトラマンメビウス』という作品についてお伺いします。
まずは、れんとさんが『メビウス』にハマるきっかけとなった回とその内容について教えてください。
沼に沈むように徐々にハマっていった『メビウス』でしたが、一番のきっかけは第1話『運命の出逢い』で、街を盾にしてディノゾールを倒したメビウスが「バカヤローー!!」とリュウ隊員に叱咤されたこと……と、それを受けたメビウスが、第2話『俺達の翼』で「戦闘による被害を最小限に抑えるために、戦う場所を変える」という一連の流れだったように思います。
この一連も「戦う場面」での出来事ではあるのですが、グドンというスター怪獣との戦いよりもメビウスの精神的な成長に胸を打たれたことをよく覚えていて……。もしかすると、これが初めて「物語」を頭で理解した上でグッと来た瞬間だったのかもしれません。
―『メビウス』はルーキーウルトラマンの精神的な成長を描くことが主題で、第1話からそのテーマをストレートに投げてきた印象がありますね。第2話におけるウルトラマンが戦う場所を変えるという展開も、第1話のリュウの叫びから良い意味でひねらずに繋げてきたなと感心したことを思い出します。
れんとさんが挙げてくださった『メビウス』の魅力については僕も非常に共感するところなのですが、その中でも特に、当時のれんとさんがお持ちだった「『咀嚼』が必要なもの」へのアレルギーが解消される上での決め手となった一打についてお聞かせください。
『メビウス』においては、第4話『傷だらけの絆』でメビウスからコノミに贈られた「ありがとう。君のおかげで、今日は4分間戦えた」という台詞に感動してしまったり、第10話『GUYSの誇り』でメビウスとツルギのために結束するGUYSの姿に胸が熱くなったり……と、これまでは退屈に感じていたはずのドラマパートも前のめりにになって楽しんでいました。
それは「咀嚼」が必要なミライの過去編 (第21話『虚空の呼び声』~ 第22話『日々の未来』)も例外ではなくて、バン・テツロウと、彼の亡くなった息子=ヒロトの姿で現れたミライのやり取りは固唾を呑んで見守っていた覚えがあります。
こうして振り返ると、自分の中の「『咀嚼』が必要なものへのアレルギー」を解消する決め手となったのは、先程お伝えした第1話『運命の出逢い』第2話『俺達の翼』における一連……もっと言うなら、その一連が気付かせてくれた「“特撮ドラマを、物語も含めて楽しむこと” の面白さ」だったのかもしれません。
―ウルトラマンと人間の関わり合い、そしてミライの成長物語という縦軸。この2つを過不足なく描きつつ、過去と未来をつないだ『メビウス』の挑戦的かつ明快なドラマは、もしかしたられんとさんご自身の成長曲線とも絶妙なタイミングでシンクロしたのかもしれませんね。これぞまさに「運命の出逢い」だと思わされるエピソードでした。
ちなみに、『メビウス』をきっかけに描き始めたという「ストーリー漫画」とは一体どのような……?
平成ウルトラシリーズのヒーローや怪獣を登場させた、言ってしまえば「平成ウルトラ版の『メビウス』のようなオリジナルのウルトラマン」の漫画を描いていました。
クオリティは散々なものでしたが、中学生の間はとにかくそれに没頭していまして……。恥ずかしくもありますが、とても良い思い出です。
当時は『メビウス』の影響で過去に見た特撮を片っ端から見返していて、リアルタイムでは楽しめなかった『ネクサス』や『仮面ライダー剣』『仮面ライダー響鬼』などにハマったり、『ティガ』~『ガイア』の平成三部作や『仮面ライダークウガ』など昔から好きだった作品群に「落ちた」りしたのもこのタイミングでした。
そうした名作を見れば見るほど、自分の描く漫画の力量不足が浮き彫りになっていきましたが、そこで折れずに漫画を描き続けられたのは『メビウス』に受けた衝撃がそれだけ大きかったのだろうなと。
ただ、高校生になって忙しくなった上に「広げた風呂敷がデカすぎた」せいでいつの間にかフェードアウト→そのまま実質打ち切りという、あまりにも「あるある」な結末になってしまいまして……。学生時代の後悔を一つ述べよ、と言われたら、真っ先に「この漫画を完結させられなかったこと」を挙げると思います。
―『メビウス』に受けた感銘が、そのままご自身の創作活動につながる原動力になっているのは本当に素晴らしいことですね。例え二次創作的なものでも、ご自身で「物語」を、しかもそれを中学生の頃から作っていらしたというのは驚きです。本当に『メビウス』との出逢いが、「物語」という一つの扉をこじ開けたんですね。
そして現在も創作を続けられているというれんとさん。ご自身の作品の中で、特にこれは『メビウス』からの影響を強く受けているなと感じるストーリーや展開などはあったりしますか?
『クトゥルフ神話TRPG』というゲームがありまして、ざっくり説明すると「クトゥルフ神話 (『ティガ』のガタノゾーアなどの元ネタです) の世界観を盛り込んだ、プレイヤー自身がキャラクターを演じるロールプレイングゲーム」のようなものです。
自分の最近の創作と言えばこのゲームのシナリオになってくるのですが、僕がシナリオを書くと「小さな力を集めて絶望をはね除ける」というコンセプトが意識していなくても入ってしまうんです。
「なすすべもない絶望からの生存」のような、ホラー映画的なスリルが主軸のゲームなので些か相性が悪いようにも思うのですが、それでもついそうした内容で作ってしまうのは、やはり『メビウス』の影響が大きいのかなと思います。
ウルトラマンだけがヒーローなのではなく「ウルトラマンと、彼らと共に戦う人々」が支え合って初めてウルトラマンは「ヒーロー」足り得る……というテーマはシリーズを通して描かれてきたものですが、『メビウス』はそのテーマや「人との繋がりの大切さ」というメッセージが特に色濃く表れた作品だと感じています。
そんな温かい作品に育ててもらい、今も支えられているからこそ「そうして受け取ったものを、自分なりに誰かへ届けることで恩返しがしたい」という気持ちが、自分の中では大きなモチベーションになっています。
―『メビウス』がテレビ放送されていた頃、僕は高校生でした。当時は特撮以外のことに没頭していたこともあり、そこまで入れ込んで見てはいなかったのですが、「人との繋がり」を重視する作風は凄く今風で少し戸惑った覚えがあります。友情だの絆だのと、あまりにも声高に叫びすぎじゃないかと。「こういうウルトラマンを今の若い子たちはどういう風に受け取るのだろう」と不安に感じたのが正直な感想でした。
でもれんとさんのように、『メビウス』という作品が持つメッセージに支えられ、それがご自身の創作にも色濃く反映され、大人になった今も作品への感謝と恩返しがしたいという気持ちを持ち続けているファンがいる。僕としては、十何年越しにあの頃の不安が解消された思いです。ありがとうございます。
それでは、最後の質問に答えていただきこのインタビューの締めといたします。れんとさんにとって、「特撮とは?」を一言でお願いします!
少し大袈裟かもしれませんが「親」のような存在です。
自分の人生を大きく広げてくれた恩人であり、人生をかけてその背中を追い続けていく目標でもあり……。
実を言うと、「どうして自分にとってのそのポジションが、ドラマでもアニメでもなく “特撮” なのか」については、これまで自分でもはっきりとした言語化ができていませんでした。物心付く前に肩まで漬かったからか、『メビウス』が自分の中で大きな存在だからか、おおよそその二択だろう……と思っていたのですが、今回のインタビューの中で、特撮が「現実と虚構の中間にあるジャンルだからこそ “現実では声高に叫べないけれど、とても大切なもの” を描くことができる」点が大きいのかもしれないと感じました。『メビウス』が一際刺さったのも、実はそれが理由なのかもしれません。
そんな特撮をずっと好きでいられる環境を作ってくれた父や母 (当然ですが、“戸田山登巳蔵” の一件も今は笑い話として良い酒の肴になっています(笑) )への感謝と併せて、特撮がくれた憧れや情熱、大切なものをこれからも忘れずに、いつか胸を張って「独り立ち」できるように日々精進していきたいと思います。
―長時間のインタビューお疲れ様でした。今後もれんとさんの一ファンとして、ブログの更新やツイートを楽しみにしております。ありがとうございました!
お話を伺って感じたこと
子供の頃に特撮番組を見ながら、ヒーローや怪獣が登場するド派手な場面にしか目がいかず、ドラマパートが凄く退屈なものに思えた……という経験は自分にも思い当たる節があります。
しかし僕の場合、いわゆる「物語」を咀嚼しある程度吸収できるようになった頃には既に特撮を卒業していて、きっかけとなった作品を挙げるとすればポケモンや少年ジャンプといったアニメや漫画の影響が大きかったんですね。
なので、れんとさんが『ウルトラマンメビウス』との「運命の出逢い」を通して物語を追いかける楽しさや気づきを得たというお話には、なるほどと思いつつ悔しさにも似た感情を抱いてしまいました。僕も、大好きな特撮からこんな風に人生を一変させられるような経験を得たかった。小学校高学年くらいって、一つひとつの経験が記憶に残りやすいし、人生における宝物みたいになる時期じゃないですか。その真ん中にちゃんと「特撮」があるのが羨ましいなあ、と。
しかもれんとさんは、どうして特撮がご自身にとって「親」と呼べる存在であるかに対して、「『現実と虚構の中間にあるジャンルだからこそ “現実では声高に叫べないけれど、とても大切なもの” を描くことができる』点が大きいのかもしれない」と、既に一定の答えを出されているのがさすがだなあ、と。ご自身で創作をされている方ならではの視点だと思いました。
「物語」の扉をこじ開けたれんとさんのその後の創作活動は今も続いていて、そこにもまだ『メビウス』からもらったメッセージがほんのりと残っていたりする。そしてそれを、また別の誰かに自らの作品を通じて届けたいという目標を明確に持っていらっしゃることは、『メビウス』が「無限の可能性を持つルーキーウルトラマン」として描かれていたことと決して無関係ではないのでしょう。目に見えないバトンは確実につながれていて、まさしく「メビウスの輪」のように途切れることなく続いていくというわけですね。
「れんとのオタ活アーカイブ」の一ファンとしては、今回のインタビューでれんとさんの特撮への情熱や緻密な文章の秘密に迫ることができ、とても充実感がありました。
れんとさんは、作品の良いところも気になるところも常に同じ温度感で考察されていて、文章の一つひとつからその誠実さがこれでもかと滲み出ている。「今度はどんな作品と向き合ってくれるんだろう」と、いつもワクワクさせてもらっています。今後の更なる飛躍を応援しております。
と、言っていたら早速「ゴジラVSシリーズ」に関する総括記事がアップされているではありませんか……!いやぁ、こちらも素晴らしい練度。ゴジラファン、必読です。
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