「あなたとトクサツ。」第15回のゲストは、Twitterの相互フォロワーとして仲良くさせていただいている優香さん(@yuuka_nitiasa)さんです。
●「あなたとトクサツ。」とは?
「あなたとトクサツ。」は、読者の「特撮と人生」にスポットライトを当てる企画です。
人生で最初にハマった特撮作品、好きだった特撮を「卒業」または「復帰」することになったきっかけや時期、特撮のおかげでこんなに良い思い / 悪い思いをした等々、「特撮と人生」にまつわるお話をたっぷりと語っていただき、インタビューを通して更に深堀していきます。
今回お話を伺った優香さんが特撮にのめり込み始めたのは、今から4年前の2018年。これまで「あなたとトクサツ。」に登場していただいた方々の中でも、いわゆる「特撮歴」は比較的お若い方です。
一つの作品をきっかけに、その楽しみ方をいくつも見つけることでどんどん愛着が強くなっていく。優香さんの場合は、それがスーパー戦隊シリーズの『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』で、番組を熱心にご覧になりつつ、当時開催された各地のイベントにも足を伸ばされるなど相当のレベルで熱中されたとのことでした。
僕にとって「特撮にのめり込み始めた時期」というのはもう随分昔のことで、正直記憶もおぼろげになりつつあります。ただ、優香さんとのお話の中で、中学生の頃にレンタルビデオで『ウルトラマンティガ』に熱中したことははっきりと思い出せました。
リアルタイムではなかったのでイベントには追いつけなかったのですが、近所の本屋でムック本を買い漁ったり、ネットの海に放出された特撮オタクならではの様々な考察になるほどと唸らされたり……大人になった今も続く僕の「特撮の楽しみ方」はこの頃にある程度固まったという実感があります。
優香さんのお話には、一人のビギナーが特撮の楽しみ方をどんどん確立させていく躍動感と、それが最終的に将来の夢へと結実する爽快感がありました。そうそう、好きになり始めた頃の好循環ってこんな感じだったよなあ、と。読者の方々それぞれの、「特撮を好きになり始めた頃」も思い出しながら読んでいただけると嬉しいですね。
それでは、「あなたとトクサツ。」第15回です。
『ルパパト』から広がった世界
第15回:優香さん
幼少期の頃の私にとって、特撮はあまり縁のないものでした。
母から聞いたところによると『忍風戦隊ハリケンジャー』と『仮面ライダー龍騎』を見ていたらしいのですが、3歳だったので内容は覚えていません。唯一小学生の頃に見た『炎神戦隊ゴーオンジャー』も、かすかな記憶しか残ってません。子供の頃の私のヒーローはプリキュアでした。
そのプリキュアも、『ハートキャッチプリキュア』で卒業。私は中学生になりアニメ、漫画にハマり、立派なオタクになりましたがやはり特撮には縁がありませんでした。
そんな私が、特撮にハマったのは2018年のこと。
2017年に『キラキラプリキュアアラモード』で小学生以来、いわゆる「ニチアサ」に復帰したのですが、当時は大学受験中でリアタイはせず録画を見ていました。情報を仕入れることができなかった事情もあり、その時点ではまだ特撮を見ようとは思っていませんでした。しかし、2018年で『プリアラ』が終わり、次の『HUGっとプリキュア』を楽しみにしていた私のTwitterのタイムラインに偶然流れてきたツイート。「新しい戦隊が面白い!」これが運命の分かれ道でした。
そのツイートは『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』の第1話の感想でした。気になった私は、『ハグプリ』からの流れで『ルパパト』も見てみることにしました。それが私の本格的な特撮デビューです。
第2話から毎週、『ハグプリ』と共に『ルパパト』を見始めて、「スーパー戦隊は明るく子供っぽい」という認識や偏見がなくなりました。濃厚で繊細なドラマ、キレキレのアクション、シリアスだけでなくギャグも楽しい。決定的だったのは第34話「伝説の銃」でしたね。こんなにも苦しい話があるのかと。放送後はずっとネットで感想を漁っていました。
そこからのめり込むのは早かったです。
私にとって初めての特撮玩具である「VSチェンジャー」に大興奮。初めて行ったシアターGロッソでは、ヒーローショーを見て生のヒーローのかっこよさに惚れ惚れしました(パトレン3号に頭を撫でられたのは忘れられません)。「今までの作品を知らないけど大丈夫だろうか……」と、少し不安になりながら超英雄祭にも参加。生のキャストに歓声を上げ、ついには名古屋にまで遠征してファイナルライブツアーで泣いたりと、初めてのことを『ルパパト』をきっかけにたくさん経験しました。
そしてスーパー戦隊を見るなら仮面ライダーも見たいと『仮面ライダージオウ』を見始め、ウルトラマンも気になる!と人生初のウルトラマン『ウルトラマンタイガ』を見始め、私の好きがどんどん増えていきました。
『ジオウ』は、「初ライダーがアニバーサリー作品って大丈夫だろうか……」と思いましたが、ジオウオリジナルのキャラ、ストーリーにどハマりしたため完全に杞憂でした。本編も映画も一番見返した作品だと思います。
『ウルトラマンタイガ』は、土曜の授業と被っていたので録画勢であったこと、まだウルトラに慣れておらず情報収集ができなかったことから、現行時は完全にハマりきれなかったのですが、『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』で号泣し、テレビ版もHuluで改めて見返し、EXPOとTHE LIVEの円盤を見てますます好きな作品になりました。
特撮をきっかけに若手俳優にもハマり、今まで見てこなかった恋愛ドラマや深夜ドラマ、恋愛映画にミニシアター系の映画、舞台にも行き、写真集やカレンダー発売イベントなんかにも参加するようになりました。
特に『ジオウ』で主演だった奥野壮くんの写真集イベントでは、翌日に新幹線で福島にも足を運び、奥野くんが源義経役をする祭りに参加したのは良い思い出です。
そして、特撮を通じて将来の夢ができました。それは脚本家になることです。そのために今年からシナリオスクールに通いたいと思っています。
私の特撮歴はまだ短いですが、この数年間でとても世界を広げることができました。全てのきっかけである『ルパパト』は未だに一番大好きな作品です。
ちなみに去年からはガールズ×戦士シリーズ『ビッ友×戦士キラメキパワーズ』も見ています。女児向けの特撮作品も、『プリキュア』と同じ用にやっぱりめちゃくちゃ楽しいですね。
「絆の物語」に惹かれて
―優香さん初めまして。当ブログの企画へご参加いただきありがとうございます。『プリキュア』シリーズを中心とした幼少期の思い出から、近年の作品をきっかけに優香さんが特撮にのめり込むまでの経緯を聞かせてもらう中で、僕にとっても大切な作品の名前が沢山出てきて、勝手に親近感を抱いてしまいました。今回は、インタビューを通じてより深く、優香さんの「特撮と人生」を語ってもらえればと思っております。よろしくお願いします!
優香さんの子供の頃のヒーローが『プリキュア』シリーズとのことですが、まずは幼少期の優香さんが『プリキュア』に惹かれたポイントや、作品毎の思い出を語っていただいてもよろしいでしょうか…!
はい、よろしくお願いします!
プリキュアは初代の『ふたりはプリキュア』からハマりましたね。
小さい頃なので覚えていないことも多いですが、中学生のお姉さん2人がかわいい服を着て巨大な敵に立ち向かい、激しいアクションをする姿に強く惹かれました。
2人とも、攻撃する時の声が勇ましくてかっこいいんですよ。それだけでなくキュアブラック/美墨なぎさとキュアホワイト/雪城ほのかの絆も魅力的で、敵に攫われたホワイトをブラックが一人で助けに行く回はとても印象に残っていて大好きな話です。プリキュアの可愛さとかっこよさ、そして絆は現在のシリーズにも受け継がれる大切な要素だと思います。
思い出で言うと、今も発売されている子ども向けのなりきりコスチューム…2年目の『ふたりはプリキュア MaxHeart』に登場するシャイニールミナスのコスチュームを買ってもらった思い出がありますね。他にも変身アイテムであるカードコミューンやルミナスの装備であるハーティエルバトン、食玩のフィギュアもたくさん我が家にあったので、母にかなり強請ったのだなぁと思い返しました。
今やプリキュア映画の定番となっているミラクルライトは、『映画Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』からで、当時はライト自体が光るのではなくライトからの光がスクリーンや壁に当たると蝶の形になるといったもので家の壁に当てて遊んだ記憶があります。
―優香さんが幼少期にご覧になった『ふたりはプリキュア』を、現行の作品の原点としても語れるのは長寿シリーズの強みですよね。コスチュームでいわゆるコスプレ的な遊び方をするのは、更に10年ほど前の『セーラームーン』からの流れもあるのでしょうね。可愛さとかっこよさの同居、そして主人公たちの絆というお話からも、今に続く『プリキュア』の人気の秘訣を垣間見た気がします。
優香さんが特撮にハマるきっかけとなった『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』は、僕も近年のスーパー戦隊の中で一番好きな作品です。レギュラーメンバーの6人(+1人)の中で、特にこの人が好きだった所謂「推し」と言える存在はいましたか?
夜野魁利と朝加圭一郎の所謂「Wレッド」はもちろん好きで注目して見ていましたが、なんやかんやで一番好きなのは明神つかさですね。
強くてかっこよくて常に冷静なところとぬいぐるみ好きというギャップ、朝加圭一郎とのバディ関係も好きでした。
そして送らせていただいた文章にもある通り、シアターGロッソでパトレン3号に頭を撫でられたのが決定打でした。東京宝島でアクスタを買ったり、普段着ないピンクの服を着たりしましたね。
―『ルパパト』は快盗も警察も、それぞれ個性の際立つキャラクター造形が本当に見事でしたよね。僕が行ったファイナルライブツアーでは家族連れよりも大人の女性ファンの方が多く、『ルパパト』がスーパー戦隊という枠組みを飛び出して新たなファン層の獲得に成功していたことを実感させられました。服装を推しの色に合わせるといった楽しみ方は、コスチューム遊びを楽しまれていた『プリキュア』の頃から地続きという感じですね。
優香さんが「決定的」と仰った第34話「伝説の銃」は、魁利がルパンマグナムを手にするイベント編でありながら、快盗の3人がそれぞれに抱える痛みを改めてクローズアップした非常にドラマチックなエピソードでした。この「伝説の銃」で特に印象的だったシーンはどこですか?
やはり魁利が「俺、めちゃくちゃ快盗向いてるわ」と言い、兄の幻覚に銃口を向けるシーンですね。
それまでも魁利は闇のある描かれ方をされてきましたが、ここで一気に暗い方へ足を踏み入れてしまったようで「大丈夫だろうか……」と心配になったのと、彼が抱える闇と覚悟にぐっと引き込まれました。
―これは名シーンですよね…!僕もこの頃になると、魁利の台詞の一つひとつに「俺たちはこれしか無いから快盗やってんだ…!」の文脈が込められているのをひしひしと感じて、話数が重なる度に登場人物への思い入れが増していったことを思い出します。
その後、『仮面ライダージオウ』や『ウルトラマンタイガ』といったスーパー戦隊以外の特撮作品にも触れていったという優香さん。『タイガ』の劇場版では号泣されたとのことですが、それはやはりニュージェネレーションヒーローズが全員集合する場面で…?
ニュージェネレーションヒーローズの集合は泣くというよりもかっこよすぎて興奮する感じでしたね。私が泣いてしまったのは、ヒロユキとトライスクワッドの別れのシーンです。
映画の序盤から別れが示唆され、戦いの前に3人がヒロユキに打ち明けるシーンも寂しくて仕方なかったですし、ラストシーンからエンドロールまでは本当に泣きっぱなしでした。主題歌の「ドラマティック」がまた効きました。
思えばここからが私の「ウルトラマン沼」の始まりでした。
―ウルトラシリーズにおいて、ウルトラマンと人間の別離があそこまでストレートに分かりやすく描かれることって実は結構珍しいんですよね。トライスクワッドの3人とヒロユキのこれまでの繋がりがあったからこそ、奇をてらわない別れのシーンがより感動的だったのだと思います。
『タイガ』を機に「ウルトラマン沼」にハマられたとのことですが、他にウルトラシリーズでご覧になった作品はありますか?
『Z』と『トリガー』はリアルタイムで見ました。『タイガ』の時は土曜日に家にいなくて録画だったので、リアタイで盛り上がれたのは楽しかったですね。
『Z』を見ていた時はウルトラマンの知識が『タイガ』で得たものしかなかったので、防衛隊の存在や小さくなってどこでも変身者と話せるのはトライスクワッドだけだとか、「ウルトラマン=変身者」のパターンもあるといったことを『Z』で初めて知りましたね。
過去作では『ウルトラマンギンガ』『ウルトラマンギンガS』を見ました。ニュージェネレーションシリーズの始まりでもあり、タイガの父であるタロウが出ているということで見たのですが、高校生たちの青春ストーリーである『ギンガ』は「ウルトラマンこういうのもありなのか!」と驚きながら、面白くて1日で全て見終えてしまいました。
作風がガラリと変わる『ギンガS』はまさに王道といった感じで胸を熱くさせてくれました。ウルトラマンの見た目ではギンガが一番好きですね。
―なるほど、ウルトラシリーズでは半ば共通認識と化している、ウルトラマンと変身者のパターンについても、初めてご覧になる方にとってはその違いがより鮮明に映ったというわけですね。ヒロユキのように、3人のウルトラマンと同居している人は他のシリーズにはいなかったと思います(笑)。
特撮をきっかけに出演者のイベントにも参加されるようになった優香さん。『ジオウ』の奥野さんをはじめ、俳優の方々と実際にお会いすると作品への印象にも変化はありましたか?
俳優の方々と会うとテレビで見るのとは全然違うんですよね。
演じている本人なので顔やら声やらは当然同じなのに、醸し出す雰囲気が違うんです。そしてまた作品を見ると、生で見てきた俳優が演じていると感じることはなく、そのキャラクターなりヒーローがそこにいる、生きていると余計に強く感じというのがあります。
あと作品を好きになると出演者が好きになり、イベントに行くほど出演者を好きになるとさらに作品への愛着が湧くという循環が起きますね。
―優香さんの中で出演者の方に実際に会えるイベントへの参加は、作品を楽しむ上で欠かせない一つのピースになりつつあるんですね。そしてそれがまた次の作品への興味にもつながり、「好き」の循環が生み出されている。とても素敵な特撮の楽しみ方をされているなと思いました。
また、幼少期に楽しまれた『ふたりはプリキュア』の「絆」という要素は、『ルパパト』や『ウルトラマンタイガ』、『仮面ライダージオウ』といった優香さんに刺さった特撮作品の共通項でもありますよね。他者との関わり合いによって生まれるドラマに惹かれる根底にはやはり幼少期の記憶が影響しているのかもと、そんなことも感じました。
また、優香さんの将来の夢は脚本家とのことで、目標とされている脚本家の方などはいらっしゃいますか?
香村純子さんです。
『ルパパト』、『映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』、『ヒーリングっどプリキュア』、『機界戦隊ゼンカイジャー』と、ニチアサを見始めてから多くの担当作を目にしてきました。
そのロジカルな構成、繊細なキャラ描写にいつも感嘆してきたので、とても憧れています。
―香村さんは特撮ファンの間でも人気の脚本家ですよね。『ルパパト』も『ゼンカイジャー』も、放送時にTwitterで香村さんの名前をよく見た記憶があります。今年からシナリオスクールにも通われる予定という優香さんにとっては憧れであり、目標にされる一人でもあるんですね。僕も陰ながら応援しております!
それでは最後に、優香さんにとって「特撮とは?」を一言でお願いします!
私にとっての特撮は「恩人」ですね。
特撮を起点として今まで触れてこなかったジャンルにたくさん触れられたこと、好みの物語、キャラクターはどういったものなのかはっきりと見えてきたこと、夢も見つかったこと、毎日を輝かせてくれることに恩を感じています。
―長時間のインタビューお疲れ様でした。改めて、優香さんの夢を僕も応援しております。ありがとうございました!
お話を伺って感じたこと
「そう言えば僕も、中学生の頃にテレビ版の『新世紀エヴァンゲリオン』を1日かけて一気見したなあ」と、優香さんの『ウルトラマンギンガ』を1日で見終えたお話を聞きながら思っていました(笑)。
やっぱり、ビジュアルや設定に惹かれて見始めた作品に「驚き」がプラスされると、時間も忘れて思わず見入ってしまうんですよね。次が見たいという気持ちが抑え切れなくなるし、中学生なら生活環境的にもそれがある程度許される。思春期から20代前半くらいまでの若い時期にそういう経験をさせてくれた作品は、その人の人生に強い影響力をずっと残していくのだと思います。
僕も30歳にして、あの頃の新鮮な「驚き」に近いものを毎週のように与えてくれた『ルパパト』には家族3人で相当のめり込みましたし、現在大ヒットを飛ばしている『シン・ウルトラマン』にも同様のものを感じています。時々こういう出会いがあるから、特撮オタクはやめられないな、と。
コロナ禍で機会は減ってしまったものの、出演者の方々と実際にお会いできるイベントの影響力も、自分が実際に参加してみてその凄みに気付かれたところがあります。
芸能人を街で見かけて嬉しい、というのとはもう全然違う感動があるわけです。テレビの中の、もっと言うと架空の物語の中にしか存在しないはずの「キャラクター」が自分の目の前にいる。優香さんも仰っていたように、イベントの後に家に帰って作品を見返すと、その世界そのものにますます愛着が湧いてくるんですよね。
そういった、特撮を通じた「好き」の好循環を経て、脚本家という将来の夢を見つけ動き出されている優香さん。これからも続々と僕たちの前に現れるであろうヒーローたち、特撮作品が、誰かの「好き」という気持ちに由来した夢から生まれると思うと、テレビや映画館に映る作品がより輝きを増して見えてくる気がします。
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