僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

【あなたとトクサツ。-第16回-】「文脈」というロマンと、その先に見える新たな地平

 「あなたとトクサツ。」第16回のゲストは、Twitterの相互フォロワーとして仲良くさせていただいている葱さん(@neginegi0924)です。

 

●「あなたとトクサツ。」とは?

「あなたとトクサツ。」は、読者の「特撮と人生」にスポットライトを当てる企画です。

人生で最初にハマった特撮作品、好きだった特撮を「卒業」または「復帰」することになったきっかけや時期、特撮のおかげでこんなに良い思い / 悪い思いをした等々、「特撮と人生」にまつわるお話をたっぷりと語っていただき、インタビューを通して更に深堀していきます。

 

note.com

 こちらは「音楽とアイドル」が主題の葱さんのnote。アジカンのライブレポは知っている曲名が出てくる度に「う、うらやましい…!」と悶ながら読ませていただきました。

 一番熱中していた時期に比べると、現在は特撮からややフェードアウト気味だと語る葱さん。

 しかし、特撮というジャンルから得た「カルチャーの楽しみ方」は今もご自身の中にしっかりと根付いていて、音楽を中心とした生活を送る上で「指針」となって今も生き続けているそうです。

 特撮にも音楽にも同じように存在する「文脈」を汲み取りながら、カルチャーを多角的に楽しまれている葱さん独自の視点には、僕も見習うべき点が多々あると感じました。同時に、その視点の原点に特撮があったのかと思うと、僕も今楽しんでいる特撮作品により一層の愛着が生まれてくるような気がしています。

 それでは、「あなたとトクサツ。」第16回です。

 

 

 

 

撮から教わった「カルチャーの楽しみ方」

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第16回:葱(ねぎ)さん

 

 僕にとっての特撮は、自分の趣味の楽しみ方を定義付けてくれた、自分の好きな物の方向性を定めてくれた存在です。

 

 特撮の話をする前に、今の趣味について少し言及させていただきます。最近は音楽鑑賞、音楽制作、サークルでのコピーバンドなど、大学における勉強や友人付き合いを除いては、専ら音楽を中心とした生活を送っています。

 

 僕の音楽との付き合い方として、「文脈や流れを重視しないと気がすまない」という所に特徴があると思っています。

 

 ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアンカンフージェネレーション)というバンドが好きで、まず彼らに影響を与えたアーティストを調べることで自分の好きな音楽の幅を拡げました。このように、アーティストのルーツを辿る、ということをひたすら行って今の趣向が出来上がりました。

 

 前置きが長くなりましたが、このような「何か」と「何か」を繋げ、同一線上に並べる。歴史を踏まえて鑑賞する、という楽しみ方を教えてくれたのが特撮でした。

 

 2001年生まれの僕は、従兄弟の影響でニチアサとウルトラマン…いわゆる特撮を見始めました。『デカレンジャー』、『仮面ライダーブレイド』、『ウルトラマンネクサス』の玩具を身に着けて遊ぶ子供の頃の僕の写真が未だに家に飾ってあり、少し恥ずかしいですが親も巻き込み熱中していたようです。

 

 特にセンセーショナルだったのが2006年の『ウルトラマンメビウス』でした。

 

 主人公のミライとリュウを始めとした隊員たちの絆を描き、最終回の「CREW GUYSのメンバーが共にウルトラマンになる」というプロットには特に夢中になりました。そして何より、過去のウルトラマンや怪獣が登場し、これまでの作品の設定が引き継がれているところに幼いながら大きな魅力を感じていました。「父親と一緒にTSUTAYAで借りて見たあのレオがメビウスと一緒に戦っている…」と、興奮が抑えきれなかったのです。

 

 続いて熱中した特撮作品が『仮面ライダーディケイド』と『海賊戦隊ゴーカイジャー』でした。

 

 どちらも扱い方に差異があるとはいえ、過去の作品のキャラクターが出てきてその設定が現在の作品に密接に繋がるところが大きな特徴です。

 

 『ディケイド』の世界だけを楽しむのではなく、これまでの作品を知ることでよりワクワクが増し、仮面ライダーそのものの楽しみ方の選択肢が増えていく。このような、知識欲と好奇心を刺激してくれる作品、そして過去からの流れに自覚的で、かつそこから独自性を持って発展していこうとする作品がたまらなく好きでした。客演回が傑作揃いだった『ウルトラマンX』が好きなのもそれが理由だったりします。

 

 2010年代に入るとこの流れは加速します。ウルトラマンは毎シリーズ過去作の「力」をお借りし、仮面ライダーシリーズは毎春過去のキャラクターを集め映画を作る。少し食傷気味になりながらも毎年熱中していました。そんな流れの極致とも言えるのが、2019年の『仮面ライダージオウ』でした。

 

 毎回サプライズ的にオリジナルキャストをゲストに迎え、二次創作かと思えるほどの過剰なファンサービスを行う。何より「キャラクターだけ」を持ってくるのではなく、作品毎の設定も含め『ジオウ』の世界に取り込んでいく一種の強引さに惹かれました。まさに歴史との繋がりを知ることで楽しめる作品だったといえます。劇場版の『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』が、その「歴史」を物語の中で大肯定してくれたことは、中学高校になっても特撮作品に熱中していたあの日の自分までを肯定してくれたようで、非常に思い入れが深い作品です。

 

 ただ、結果的に『ジオウ』を持って私は特撮からフェードアウトしました。特撮作品以上に「歴史」に自覚的なMARVEL作品に夢中になったからなのか、『ジオウ』をきっかけに自分の中で特撮との折り合いがついたからなのか、『ゼロワン』の録画予約を忘れたからなのか、はっきりとした原因は分かりませんが、とにかく高三の夏に私は特撮から卒業しました。

 

 今は特撮から離れていますが、振り返ってみると、特撮は私に趣味の楽しみ方を教えてくれました。一つの作品だけではなく、そこに連なる幾多の作品を辿り視聴、あるいは聴取することでカルチャーをより深く楽しむことができる。この指針を与えてくれた特撮が、僕の人生におけるかけがえのない存在であり続けることは確かです。

「文脈」というロマン

―葱さん初めまして。この度は当ブログの企画へのご参加ありがとうございます。葱さんが幼少期の頃に熱中された特撮作品のお話から、その特撮を通じて知ることができた「趣味の楽しみ方」まで、ジャンルを越えたカルチャーへの向き合い方について、実例も混じえてとても分かりやすく語ってくださいました。ここから更に深堀りしたお話を伺えればと思っております。よろしくお願いします。

それではまず、葱さんが特にセンセーショナルだったと語る『ウルトラマンメビウス』について。過去のウルトラマンや怪獣が続々登場する中で、葱さんにとって特に印象的だった客演回や、思い出深い怪獣について教えてください。

 よろしくお願いします!

 『メビウス』の客演回で一番好きなのは、真夏竜さん演じるおおとりゲン/レオ師匠が出演した回(第34話「故郷のない男」)です。

 友人や恋人を失くしたゲンと、CREW GUYSという仲間に囲まれるミライの対比、修行シーンの新鮮さ、戦闘シーンのアグレッシブさ、最後に地球を「故郷」と定めた上でゲンが笑顔をみせるシーンのあたたかさ……。30分間に『レオ』と『メビウス』を結ぶ文脈の全てを詰め込んだ至高の1話だと強く思います。のちにレオが師匠キャラに就くきっかけにもなった重要エピソードではないでしょうか。

 怪獣で記憶に残っているのは『ウルトラマンA』に登場したバキシムですね。ベランダに降ってきた赤い血や、空を割って出てくる怪獣という特撮ならではの奇妙さ。昭和ウルトラマンに慣れていなかった私にトラウマを植え付けた怪獣です。

 あと、のちにバキシムは「てれびくん」などの児童誌で読者がオリジナル怪獣を作る応募キャンペーンの素材になったんですよね。そこで優勝した「バキシマム」という怪獣がめちゃくちゃかっこよくて、自分のオリジナル怪獣が選ばれなかった悔しさも無くなる程惚れ込んでしまいした。

 

―レオの客演回はファンの間でも非常に人気が高いエピソードですよね。ゲンとミライの対比は、葱さんが仰る「文脈」を頭に入れて見ることでよりドラマを感じられるシーンになっていて、僕は『メビウス』の放送当時は高校生でそこまで真剣には見ていなかったのですが、おおとりゲンの客演はまさに理想的な形で実現しているなと感激した記憶があります。

続いて熱中されたという『仮面ライダーディケイド』や『海賊戦隊ゴーカイジャー』も、やはりシリーズの「文脈」が常に意識された作品だったように思います。この2作品をきっかけに過去作の魅力を知る…といったことはありましたか?

 『ディケイド』や『ゴーカイジャー』を見ていた当時は自分の知っているヒーローがゲストとして出ていることにワクワクしていただけだったように思います。

 「過去作を見返そう!」と決めたのは、ディケイドとゴーカイジャーがダブル主演を果たした『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』を見たことがきっかけです。当時まだ現役感の強かったイマジンズに惹かれて『仮面ライダー電王』のTVシリーズを見返しました。

 リアルタイムで視聴していたときには気づけなかったストーリーの重厚さや、イマジンのワイワイ騒ぎの裏にある切なさに引き込まれ、その魅力に改めて気づかされたという感じです。

 

―『仮面ライダー電王』は僕もちょうど息子と見ているところなのですが、イマジンの個性的なキャラクターと、見る者の感情を揺さぶる「時間」の物語がマッチしていて素晴らしいですよね。しかもあれって『カブト』の次の番組じゃないですか。よくあそこまで思い切った作劇に変化させたなと思います。

 『電王』、息子さんと見てらっしゃるんですね!私も母と一緒に見ながらかなり熱中していたので、Ryoさん、息子さん共々の感想お待ちしています。

 

―ありがとうございます。今、息子のほうが勝手に先々見ていて追いてかれそうになっていて(笑)。親子で楽しめるいい作品ですよね。

さて、葱さんが、「過去作からの『文脈』を巧みに汲み取りながら作られた作品の極地」と語る『仮面ライダージオウ』についてもお聞きします。テレビシリーズの『ジオウ』はこれまでのアニバーサリー作品とは違い、ストレートな客演よりも、過去作の物語と世界観がモチーフの平行世界を『ジオウ』の世界に取り込むことで歴史の繋がりをファンサービスに昇華させていました。『ジオウ』の放送中はその特殊な取り組みに賛否が巻き起こっていましたが、葱さんは率直にどういった印象をお持ちでしたか?

 『ジオウ』は「本人出演」という言わば「切り札」を毎週使うのがずるい!と正直思います(笑)。

 ですが、それ以上に過去作のエッセンスを『ジオウ』の主人公の成長に繋げている点が優れていると感じています。『仮面ライダーオーズ』の「欲望」という要素をソウゴの成長に繋げたり、『仮面ライダーカブト』の主人公2人の友情を『ジオウ』の2人に重ねたり…と。過去作品の設定だけではなく、過去作品が持つ「熱さ」や「核」まで引き継いだ上でキャスト本人が出演していて、毎週見ながら震えていました。

 劇場版の『平成ジェネレーションズFOREVER』も「仮面ライダー制作陣から仮面ライダーを愛する貴方へ」という趣の大作で、佐藤健さんのサプライズ登場含めて平成ライダーシリーズの総決算のような感覚でした。

 もちろん粗い点も沢山あったとは思うんですけど、視聴者の思い入れも含めた平成仮面ライダーの20年間を祝福するような傑作だと結論付けています。

 

―『ジオウ』の、過去の作品の「文脈」を取り込む試みと、『平ジェネFOREVER』ではシリーズを見てきたファンの記憶も作品の一部に同化させていて、まさに平成ライダーの総決算という空気が演出されていましたよね。「特撮に熱中していた自分まで肯定してくれたよう」と語る葱さんから「祝福」の二文字が出てきたのには必然的なものを感じました。

その後、特撮からはフェードアウトされ現在はMARVEL作品に夢中とのことですが、「歴史」に自覚的であるというのは主にどういった部分を指すのでしょうか?また、葱さんの「楽しみ方」として、MARVELと日本の特撮作品に共通点または違いはありますでしょうか?

 まず「歴史」に関してですが、僕は高校生の頃に世界史の学習に夢中になっていまして。

 ある場所で起きた事件が別の地で大きなうねりを巻き起こし、どこかの土地で生まれた文化が別の土地へ渡り大きく花開く。世界中の横の繋がりと縦の繋がりが重層的に1つのストーリーを描き出す様は勉強というよりもロマンに突き動かされながら物語を追っているようでした。

 こういった「物語が独立していないことで生まれるロマン」は、MCUの作品のテーマのように思えます。

 アイアンマンが活躍したかと思えば、アイアンマンのお父さんとキャプテンアメリカが繋がっていて…とか、アイアンマンが起こした事件が後のヒーローを逆説的に生むことになったり…と。横の繋がりと縦の繋がりを楽しむために綿密に計画を立てて楽しませる、という自らのコンテンツの強みと真っ直ぐに向き合うのがMCUで、それが「自覚的」という言葉に含んだニュアンスです。

 勿論原作の有無という違いはありますが、見切り発車で1年間の明確なプロットを決めずにスタートする平成仮面ライダーシリーズとは、製作方針の面で目指している所が違うなと。結果的にあらゆるストーリーの文脈をまとめた『エンドゲーム』、「文脈をまとめ切ることができない・バラバラなのが素晴らしい!」と肯定した『ジオウ』の夏映画…と、シリーズの着地点がその差異を表しているといえます。

 とはいえ2つのシリーズで一番盛り上がるのが共に「過去のヒーロー大集合!!」シーンなので、ヒーローの活躍を楽しむことが第一という点では共通しています。

 

―「物語が独立していないことで生まれるロマン」とは、言い得て妙だと思います。一見似通った作品に見えても、シリーズの「文脈」をどういう方法で物語に取り込んでいくかというスタンスを比較すると、そこには全く異なるアプローチが見えてくる。僕も学生時代にその視点があれば、歴史の授業がもう少し楽しく聞けたかも…と今更ですが後悔しています。

葱さんが「文脈」や「流れ」を重視して趣味を楽しまれる中で、音楽ではアジアン・カンフー・ジェネレーションにそのルーツがあると仰っていますね。アジカンは僕も大好きなバンドですが、アジカンにおける「文脈」の中で特に印象的だったエピソード等があれば教えてください。

リライト (2016 Version)

リライト (2016 Version)

  • ASIAN KUNG-FU GENERATION
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 アジカンは僕に「現在の音楽は過去の音楽の上に成り立ち形作られている」という文脈を伝えてくれました。

 僕はアジカンと同世代のバンドのことをずっと大好きなのですが、そんなバンド達が影響を受けたアメリカやイギリスの音楽を僕に教えてくれたのがアジカンでした。歌詞、サウンド、メロディー、アティチュードといった要素を含め過去に紡がれた色んな音楽の上に現在の音楽が成り立っているという、言われてしまえば当たり前の事実をアジカンは教えてくれました。

 さらにアジカンから影響を受けたアーティストを好きになることも多いです。僕の頭では過去と現在の音楽がアジカンを起点に繋がり、強固なストーリーが出来上がっているような図式が出来上がっています。

 

―ちなみに、「アジカンから影響を受けたアーティスト」の中で「この人!」という方は誰になりますか?

極彩 I G L (S)

極彩 I G L (S)

  • ROTH BART BARON
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 まず一組目がROTH BART BARONです。

 昨年、ポカリスエットのCMソングを手掛けたり、Mステに出たりと最近キています。アジカンのボーカル後藤氏が行った音楽アワードでフックアップされたのをきっかけに聴き始めました。

 アジカンはライブで「自由に踊って!」という言葉をよく観客に投げかけるのですが、ROTH BART BARONも「祝祭」をキーワードにステージを作っていて、音楽性もそうですがアジカンの魂の部分を引き継いでいるように思えます。

OOPARTS

OOPARTS

  • 羊文学
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 二組目は羊文学です。

 最近色んなタイアップを行ったりフェスのメインステージに出演したりと、こちらももっと大きく羽ばたく予感がしています。

 羊文学は以前解散の危機に陥ったのですが、アジカンの「ソラニン」を聞いて改めてバンドを続ける決意を決めた、というエピソードがあります。装飾の少ないスリーピースバンドで鳴らされる羊文学の音は、アジカンを初めて聞いた時に得た「バンドっていいな!!」という感情を喚起させてくれます。

 

―お話を聞いて僕も少し聴いてみたのですが、ROTH BART BARONはアジカンとのセッションがやはり凄く印象に残りました。「極彩」という曲の「誰かが作った幸せに逃げるな」という歌詞からは、後藤さんが書く「自分自身と向き合う詞」に近いものを感じたり…。羊文学はバンドそのものの存続にあの「ソラニン」が深く関わっていたんですね。「OOPARTS」のMVに思いっきり怪獣が出てきてびっくりしました(笑)。バンドサウンドと透明感のあるボーカルがマッチしていて凄くいいですね。

葱さんのように、今はもうフェードアウトした特撮というジャンルから得た知見を、次のジャンルにも見い出して楽しむ軸にされているというのは僕も見習うべき点だと思わされました。この歳になると、なかなか新しいカルチャーの情報をキャッチする能力が衰えてくるもので…(笑)。

それでは最後に、葱さんにとっての「特撮とは?」を一言でお願いします!

 聴いてくださり嬉しいです!ROTH BART BARON×アジカンの演奏動画は特撮におけるクロスオーバー的熱さがあり興奮しました。羊文学のMVは完全にブラックキングですよね(笑)。

 特撮は、僕にとっての「オリジン」です。

 「オリジン」という言葉は、MCUや『僕のヒーローアカデミア』といった作品において、「原点」「はじまり」などと言った意味で使われる言葉です。何かを好きになることの豊かさ、どう趣味と付き合うか、どう好きなものを掘り下げていくかを特撮を通して身に着けました。人生の指針を決めてくれた存在として僕の根本にずっと生き続けてくれる特撮はまさに「オリジン」です。

 勿論完全にフェードアウトしたわけでもなく、たまに『クウガ』は見返すし、『シン・ウルトラマン』は初日に見に行ったし、『ドンブラザーズ』もチェックしているし…とこれからも適切な距離を保ちつつ追いかけたいと思っております。

 

―長時間のインタビューお疲れ様でした。葱さんをまた特撮の世界へ引きずり込むような作品の出現を、こっそり待っております(笑)。ありがとうございました!

 

 

 

 

話を伺って感じたこと

 人それぞれに「趣味の楽しみ方」がある中で、葱さんのように「こうでなきゃ気が済まない」というレベルの強いこだわりをここまで自己分析して他人に説明できる方はなかなかいないのでは、と思います。

 2000年代の後半から日本の3大テレビ特撮(仮面ライダー、スーパー戦隊、ウルトラマン)で流行した、最新作に過去作からの文脈や設定を取り込んでシリーズ全体の人気を拡大させる新たな手法。

 長期シリーズが持つ歴史という強みを存分に生かした作劇とその文脈の取り込み方には、シリーズ毎の気質の違いが顕著に表れていて。ある意味では過去作の究極のリブートとも言える『シン・ウルトラマン』や『シン・仮面ライダー』が話題の今だからこそ、改めて振り返る価値のあるトピックだと感じました。

 葱さんが様々な作品に触れる中でそれらが段々浮かび上がってきたのは、葱さんの趣味に対する姿勢に一貫したものがあったからに他なりません。僕は高校生の頃に、世界史の授業と特撮に共通するものなんて一つも見出だせなかったですよ(笑)。お話を伺いながら「なるほど」と膝を打ってしまいました。

 音楽のお話もとても興味深く聞かせてもらいました。特撮における「文脈」は、ジャンルの特性もあって我々視聴者に比較的分かりやすい形で物語の中に組み込まれていますが、確かに音楽からもそういうものを汲み取るチャンスはあるよなあ、と。

 葱さんに教えてもらったROTH BART BARONと羊文学、確かにほんのりとアジカンの風味が感じられる。音や詞から確かに伝わる「文脈」に、僕も聴いてて嬉しくなってしまいました。その昔、アジカンの『ソルファ』というアルバムを聴き倒した学生時代を思い出さずにはいられなかった…!

 インタビューの中でも言及している通り、アラサーすらも少しずつ遠のきつつあるこの年齢になると、カルチャーに対する視野が狭くなっているのが自分でも分かるんですよね。こんな風に読書の方から特撮以外のジャンルに対する知見が得られるのも、この企画を立ち上げて良かったと感じることの一つです。改めて、感謝ですね。

 

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