「グリッドマンがアニメ化される」
この一報を耳にしたとき、僕は自分の耳を疑ってしまいました。
今更なぜ?誰がどうして?何のために…?
嬉しい、懐かしい、そんなポジティブな感情よりも「嘘だろう」という疑念がどうしても先に来てしまい、純粋に信じることが出来ませんでした。
今年の秋に放送が予定されている『SSSS.GRIDMAN』は、かつて円谷プロが世に送り出した特撮ヒーロー『電光超人グリッドマン』のアニメ版。既に開設されている公式サイトにはキービジュアルも公開されており、特撮ファンやアニメファンに向けて非常に大きな期待を抱かせる内容となっています。
何を隠そう、グリッドマンは僕が子供の頃に一番ハマった特撮ヒーロー。
そこで今回は、放送から20年以上が経過した今再び脚光を浴びつつある『電光超人グリッドマン』の魅力を、リアルタイムで体験したファンの一人として語ってみたい、いや語らせてくれ!(笑)
「人知れず―」が想像力を掻き立てる
本作で描かれる怪獣たちはいわゆるコンピューターウイルス。
現代社会に必要不可欠となっている様々なプログラムを、ウイルスである怪獣が破壊することでそこに住む人間たちを混乱に陥れます。
グリッドマンと怪獣が対峙するのは、コンピューターワールドと呼ばれる異空間。
人の目に触れない場所で密かに繰り広げられる戦い、そしてその戦いに関わっていくことになる人々…というのが大まかなストーリー。『グリッドマン』の放送開始は1993年。今のように家庭用のパソコンやインターネットなども普及していなかった時代に、特撮ヒーローでパソコン通信を題材にしたという点は非常に先見性を感じます。
ただ僕は、インターネットやコンピューターウイルスを取り上げた先見性よりも、それらを通して「人知れず繰り広げられる戦い」を説得力のある形で描いたことが、『グリッドマン』という作品の最も大きな魅力だったのではないかと思っています。
そりゃあパソコン通信の描写自体は20年以上も前のものですから、今見ると笑ってしまうようなシーンも少なくないです。ただ、舞台となっているのは我々が住んでいるのと同じ世界。ウルトラシリーズのように怪獣を攻撃するための防衛チームは存在しませんし、そもそも怪獣が現実世界に出てこない。だからこそ、「もしかしたら自分たちの知らないところでこんな戦いが繰り広げられているのでは?」という想像力を掻き立ててくれました。
子供の頃、父親と一緒に行ったパソコンのパーツ屋で基盤を眺めながら「マイ・コンピューターワールド」を想像していたのは自分だけではないはず!(分かって同世代の人)
主人公の翔直人が中学生というのも、子供にとっては身近に感じられて良かったかもしれません。
個人的に凄く憧れたのは、直人の友人である一平の自宅の地下にある秘密のラボ。基盤がむき出しの自作パソコン、ジャンクが薄暗い部屋の中でひと際存在感を放っていました。あの何とも言えない「自分でも作れそうな秘密基地」感は見ていて本当にワクワクしましたね。事件が起こり、3人がジャンクの前に戻ってくるときの階段のドタバタ音、今でもたまに思い出します(何人に伝わってるんだろうこれ 笑)。
知る人ぞ知る怪獣総進撃
『グリッドマン』は決して予算の高い番組ではなかったことでも知られていますが、原則として各回に一体の新怪獣が登場していました。
1993年と言えばご存知の通りウルトラシリーズは休止中の時期で、年に一度のゴジラシリーズくらいでしか怪獣の姿を見る機会がなかった時代。そんな中、『グリッドマン』では毎週のようにかっこいい新怪獣を見ることができたのです。
「炎と氷の兄弟怪獣」という分かりやすい属性をどストレートに表現した火炎怪獣フレムラー&冷凍怪獣ブリザラー。バルタン星人よりも忍者を体現している個性的なフォルムの忍者怪獣シノビラー。子供心をくすぐる鋭さと強さを的確に表現した鋼鉄怪獣メタラスなど…。怪獣冬の時代に蓄積されていたアイデアが一気に爆発したような名怪獣たちの総進撃はまさに圧巻の一言です。
ちなみに『SSSS.GRIDMAN』の公式サイトのトップ画にいるのは恐らく毒煙怪獣ベノラだと思われます。個人的には、グリッドマン怪獣の中で最も強敵だった印象のある一体。数ある怪獣の中であえてベノラを選んでいる辺り、グリッドマンファンのツボを心得ているなと嬉しくなってしまいますね。
SSSS.GRIDMANに求めるもの
公式サイトのティザービジュアル。
夜の街に立つグリッドマンは、デザインに現代風のアレンジが加えられよりスタイリッシュに生まれ変わっています。これを見ただけでも、『SSSS.GRIDMAN』の意気込みが相当なものであることが伝わってくるといいますか、もうとにかく期待するしかないという感じで放送開始を心待ちにしております。
ただひとつ、非常に面倒くさい厄介な特撮ファンの一人として、また子供の頃にグリッドマンをリアルタイムで見たファンの一人として、『SSSS.GRIDMAN』にこれだけは求めておきたいというものがあります。それは、僕たちが身近に感じられるような小さな物語を忘れずに描いて欲しいということです。
『グリッドマン』の魅力を語ろうとしたときに僕がまず思い出したのは、思いを寄せるゆかへ渡しそびれたラブレターを握りつぶす藤堂武史だったり、スペシャルドッグを食べられなかった一平が母親にゴネるシーンだったり、キャベツを丸かじりするゆかの兄貴だったり(笑)、はっきり言って本当にどうでもいいようなシーンばかりでした。ただ、先述した「人々が知らない戦いの説得力」という部分は、こういったどうでもいい描写の積み重ねがもたらしている面も大きいのではないか、と。
元々は怪獣もヒーローも存在しない現実世界に起こるハプニングを描くからこそ、そこに住む人々の生活やキャラクターには人間らしいリアリティをきちんと持たせて欲しいということですね。
『グリッドマン』は案外そこを疎かにしていなかったと僕は思っていますし、今も魅力的に感じる要素のひとつです。…まあでも、キャベツの丸かじりは身近ではないですね、失礼しました(笑)。