ブログを書き始めてから約4年の月日が経ちました。
記事を書くことに行き詰まったとき、僕が決まってするのは読者登録をさせてもらっている方のブログを読みに行くことです。本当に、この世の中には面白いブログが多過ぎる。
例えば同じ「楽しい」という感情を表現するにも、一人ひとり言葉の選び方が違って面白い。それを読みながら「自分だったらこう書くかなあ」などと考えているうちに、自然とキーボードを叩く指の動きが滑らかになっていくことがあるんです。
適度にインプットを重ねることで固まっていた思考から抜け出し、色鉛筆が12色から36色にグレードアップしたみたいに、増えた選択肢で自分の書く文章に彩りを加えられる。僕がブログを書いていて最も楽しいと感じる瞬間のひとつです。
ただ、それは同時に深い「嫉妬心」につながるケースもあって…。
Twitter等で大変仲良くさせていただいているぞひ丸さん(@zohimaru000)の「イータイコト・イータイ」は、この世界でぞひ丸さんしか持ち得ないであろう観察眼とユーモアが文面から炸裂しているまさしく唯一無二のブログ。
ぞひ丸さんの脳内から溢れ出る感情をフィルターを通さずにそのまま文章にしたかのような、「俺にこの文章は真似できねぇ…!」と思わずジェラシーを感じてしまう記事の数々には拍手喝采。時たま登場するお母様のウルトラマンへの鋭い指摘や芯を食った的確な考察も非常に良いアクセントになっていて、同じブロガーとして尊敬の眼差しを送っています。
「あなたとトクサツ。」第7回は、そんなぞひ丸さんの「特撮と人生」の曲がり角で起きた出来事のお話。ぞひ丸さん、この文章はご自身のブログにも載せるべきですよ!
●「あなたとトクサツ。」とは?
「あなたとトクサツ。」は、読者の「特撮と人生」にスポットライトを当てる企画です。
人生で最初にハマった特撮作品、好きだった特撮を「卒業」または「復帰」することになったきっかけや時期、特撮のおかげでこんなに良い思い / 悪い思いをした等々、「特撮と人生」にまつわるお話をたっぷりと語っていただき、インタビューを通して更に深堀していきます。
人前で「特撮が好き」と言えるキッカケになった、ある女の子のお話。
第7回:ぞひ丸さん
特撮との出会いは、まだ幼稚園にも通っていない2〜3歳の頃。家にあった初代ウルトラマンの再放送の録画と、『ウルトラビッグファイト』が原体験だったと思います。丁度同じ頃、テレビではリアルタイムで平成三部作(TDG)が放送されていましたね。テレビでウルトラマンを観て、その興奮冷めやらぬままソフビ人形を戦わせて遊ぶ。そんなガキンチョでした。
今回投稿させていただくのは、僕が人前で「特撮が好き」と言えるキッカケになった、ある女の子のお話です。
物心ついた頃から特撮が好きだった僕も、幼稚園を卒業して、小学校に入学して、“特撮からの卒業”というものが、ごく身近になってきました。 一緒にウルトラマンごっこをやっていた周りの友達も、1人、また1人と、特撮を卒業していきました。それ自体はなんら悪い事ではないんですけど、やっぱり寂しかったですね。
で、僕もそんな周りに合わせて、特撮を卒業…………は、しなかったんですね(笑)。周りがどうであろうと、好きなものは好きでしたから。
ただ、自分が少数派であるという自覚もあったので、友達の前では特撮が好きだということは黙っていました。「お前まだそんなの観てるのかよ〜!」となじられるのが嫌だったんです。幸い特撮以外にも漫画やドラマ、お笑い番組なんかも好きだったので、クラスの話題について行けない、というようなことはありませんでした。
でもやっぱり、そんな状況、段々とストレスに感じてきたんですよね。周りのみんなに特撮へ戻ってきてほしいとかそういうことではなくて、好きなものを素直に好きと言えないストレス。
そんなこんなで、たしか小学4年生の頃だったと思うんですけど、意を決して、クラスで特撮好きをカミングアウトしようと思い立ったんです。カミングアウトと言っても、「みなさ〜〜〜ん!!!実は俺!!!特撮が好きなんで〜〜〜す!!!」とクラス全員に向かって叫ぶようなのじゃなくて、日常会話の中でサラッと……というのを目論みました(笑)。
重要なのは、誰に、どのようなタイミングで打ち明けるか。1対1の会話の時なのか、複数人で談笑している時なのか。その辺が煮えきらなかったので、「考えてもよく分からないから、『今だ!』と思ったときにサラッと言おう」というようなことを、心に決めておきました。
で……ある日、ホントに唐突に、パッと「あ、今ならサラッと言えるな」というタイミングが来たんですよ。クラスのある女の子と1対1でお喋りしていた時でした。
その娘は……そうですね、“モロボシ・ダン子”とでもしておきましょう(笑)。ダン子ちゃんは、あえてこういう書き方をしますが、女の子らしくない娘でした。短髪で、白やピンクの飾りのついた服は一切興味がなく、いつも赤や青のトレーナーを着ていて、ジーパンを履いている。クールでミステリアスな雰囲気だけど、暗い訳ではなく、話せば明るい。“ボーイッシュ”という言葉がとっても似合う娘でした。
なんとなく、「ダン子ちゃんなら言ってみても良いかな……」と、会話中に急に“来た”んですよね、その時が。
ぞひ丸「実はさぁ〜〜〜俺さぁ〜〜〜ウルトラマンとか好きでまだ観てるんだよねぇ〜〜〜」
ダン子ちゃん「へー良いじゃーん!」
この「へー良いじゃーん!」が、僕が望んでいた言葉、そのまま100%のド直球だったんです。特撮好きであることを馬鹿にされないのは勿論、こう、変に気を使われた訳でもない、絶妙な塩梅。
この日を境に、他のクラスメイトにも特撮好きを打ち明けられるようになりました。恐れていた「お前まだそんなの観てるのかよ〜!」という返事がきたことは、1度もありませんでした。
あの日、ダン子ちゃんがあの返事をしてくれなかったら?もしかしたら、人前で「特撮が好き」と言える自分は存在しなかったのでは?それか、そう言えるようになるのはもっと後になっていたのでは?
な〜〜〜んて事が頭によぎるのですが、まあ、多分、相手が誰であろうと、どんな返事が来ようと、結果は変わらず、人前で「特撮が好き」と言える自分にはなれていたと思います。(だって我慢できないもん!!!)
ただ、僕の中で、あの日、ダン子ちゃんがあの返事をしてくれたことは、とっても嬉しかった大切な思い出であることは揺るがないのです。
「運命の再会」は突然に
―ぞひ丸さんとはTwitterやスペース、またブログを通じて大変仲良くさせていただいております。今回は企画へのご参加ありがとうございます。ぞひ丸さんらしい実にユニークな文章を送っていただき、企画のことを忘れて僕も「モロボシ・ダン子」ちゃんに思いを馳せてしまいました。まさに「特撮と人生」というテーマにぴったりの内容を更に深堀りするべく、お話を伺っていこうと思います。よろしくお願いします!
ぞひ丸さんと言えば、特撮の中でも特に「ウルトラ」への愛が強い方という印象です。幼少期の原体験も含めて、数ある作品の中でウルトラシリーズを愛好されている理由を教えてください。
僕が特に「ウルトラ」が好きなのは、やはり両親の影響だと思います。
父が1959、母が1961年の生まれで、まさに第一期ウルトラシリーズ直撃世代なんです。そんな両親に育てられたので、幼少期からウルトラが常に身近にありました。今でも両親と僕の3人で、『シン・ウルトラマン』の続報を今か今かと待っている、そんな感じです(笑)。
―ご家族で『シン・ウルトラマン』を楽しみに待たれているとは、なんと羨ましい(笑)。
特撮に関して、僕も息子の友達なんかを見ていると卒園から小学校に入学する段階で一度「卒業の波」が来るなという印象です。周りの子が少しずつ卒業していく中で、子供の頃のぞひ丸さんがそれでも「好きなものは好き」と思えたきっかけやエピソードなどはありますか?
うーん、「好きなものは好き」と思えたきっかけやエピソードといったものは、特にないと思います。特オタの“性”、としか言えないと思います。
―そんな「特オタの“性”(さが)」をさらけ出せない、「好きなものを素直に好きと言えないストレス」には僕も思い当たる節がありとても共感しました。それを打ち明けようという勇気を、小学4年生の頃に持てたことは素直に凄いことだと思います。
さて、ぞひ丸さんの決死のカミングアウト。ボーイッシュな「モロボシ・ダン子」ちゃんに、「この子なら…」と思われた理由は何だったのでしょうか?
「ダン子ちゃんなら……」と当時の僕が思ったのは、彼女は同性の友達のように話しやすく、かつ、母性にも溢れていたからだと思います。……スミマセン、この表現、書いてて自分でも気持ち悪いと思いました(笑) 。
ダン子ちゃん、クールでボーイッシュで、怒ると男子のケツを蹴り飛ばすような娘だったんですけど、同時に、どんなアホな男子相手でもちゃんと話を聞いてくれたんですよ。「またアホなことやって(言って)んな〜」と言いつつ、見守ってくれる。
いつの世も男の子より女の子のほうが大人びていると思いますが、ダン子ちゃんは完全にオカン目線で男子を見てましたね……(笑)。
―なるほど…ダン子ちゃんはクラスに1人はいる、リーダーシップを自然と発揮出来てしまう活発な女の子だったんですね。そういう子がいるのといないのとでは、クラスの雰囲気も全然違ったりしますもんね。ぞひ丸さんや、それ以外の子たちにとっても凄くいいクラスメイトだったことが想像出来ます。
遅かれ早かれ、という話もありますが、多感な時期にそういう「自分を受け入れてくれる存在」が身近にいたことは、ぞひ丸さんの人生においてとても幸福なことだったはずだと僕は勝手に思ってしまいました。ダン子ちゃんとはその後も仲良くされていたんですか?
ダン子ちゃんとは小学校と中学校が同じで、その間ずっと仲は良かったです。ただ、中学卒業後は交流は全く無くなりました。
それから3年と少し経ち……僕が大学1年生のころ、地元の自動車教習所で、ダン子ちゃんとばったり再会したんですよ!
ただ……その左手の薬指には指輪が輝いており、思わず「キョーギェェ!!?」と、ガイガンの鳴き声のような悲鳴をあげてしまいました(笑)。……僕、ダン子ちゃんのこと、好きだったのかもしれません……(笑)。
―えーっ!それは何と言いますか、「運命の再会」的なあれなのでは?あーいやでも左手の薬指に指輪は…大学1年生だと、同級生にそんな子がいるだけでもびっくりですよね。
好きじゃなかったらそんなガイガンの鳴き声みたいな悲鳴をあげるはずないと思います!(笑)うわー、なんかぞひ丸さんの小学生の頃の思い出と教習所での再会、凄くドラマチックだなあ。朝ドラ見てる気分です。
再会したときに昔の思い出話などはされましたか?
思い出話も多少はしましたけど、「最近どう?」的な会話が主でした。
指輪のことを尋ねると、少し照れた様子で「ちょっとね……」と言うので、内心「ホゲーーーッッッ!!!」と血反吐をぶち撒けて倒れてました。
よせばいいのに、わざわざガイガンに突っ込んでいって腹の回転ノコギリで大流血するアンギラスの気分でしたよ(笑)。
―ぞひ丸さん、短い時間でガイガンになったりアンギラスになったりで忙し過ぎませんか?(笑)いやあ、でもその「ちょっとね……」はなかなか奥ゆかしさがあって、血反吐をぶちまけてしまうのも分かりますね…。
もし、今そのダン子ちゃんとまた再会出来たとして「これだけは伝えたい」ことなどはありますか?
「あなたの返事が、実は凄く嬉しかった」……ということは伝えてみたいです。ただ……向こうは「なんのこっちゃ」だと思いますけど(笑)。
―いやあ、「何かのきっかけでこの記事がダン子ちゃんに届かないかなあ…」という気持ちにさせられています(笑)。
クラスメイトに特撮好きを打ち明けられるようになった“あの日”を境に、ぞひ丸さんが特撮を楽しむ上で得をしたことや良かったことは何かありますでしょうか?
良かったことは、まず、話をするときに変な遠慮がなくなったこと。
あとは、休み時間のバトルで技のレパートリーが増えましたね……それまではかめはめ波や火遁豪火球の術やパロ・スペシャルなどが持ち技だったのですが、スペシウム光線や八つ裂き光輪やライダーキックを大っぴらに繰り出せるようになりました。
あと、「実は俺も……」「実は私も……」という同志が、実は何人かクラスにいることも分りました(笑)。
―「なんだ、お前もそうだったの?」って、そういう打ち解け方をした友達とは単なるクラスメイト以上の絆みたいなものが生まれそうですよね。仲間外れにされたり馬鹿にされるどころか、打ち明けたことで遠慮することがなくなったというのも、小学4年生の男の子が勇気を振り絞って得たものとしてはかなり大きいと思いました。ある意味、「世界を変えた男」とも言えるわけですから…
さて、それでは最後に恒例の質問をぶつけてもよろしいでしょうか。ぞひ丸さんにとって「特撮とは?」を一言でお願いします!
僕にとって特撮は……“絶対に嫌いにならないもの”、ですね。極論言うと、家族だって嫌いになる可能性はあるわけじゃないですか。でも……特撮は、そうはならないだろうな、という、根拠のない自信があります。
そしてRyoさんに言われて気づいたのですが、僕がカミングアウトしたことで「実は俺も……」「実は私も……」となった子たちの人生に、良い影響が与えられたのかな、そうだったら嬉しいな、と思いました。
僕がダン子ちゃんに抱いた感謝に似た感情を、他の子が僕に対して抱いてくれていたとしたら、とても嬉しいです。ちょっと話は飛びますけど、普段書いてるツイートやブログの記事も、たま〜〜〜に誰かの救いになっていたとしたら、嬉しいです。
―長時間のインタビューお疲れ様でした。またTwitter、スペースで楽しいお話を沢山聞かせてください。ありがとうございました!
お話を伺って感じたこと
自動車教習所で小学生の頃に好きだった(かもしれない)女の子と再会した話を、ガイガンやアンギラスの例えを用いてここまで分かりやすく説明出来る人を僕はぞひ丸さん以外に知らないですよ(笑)。
でも本当に、今回は僕もブログのインタビューであることを半分忘れてぞひ丸さんとのお話を心底楽しんでしまいました。
「モロボシ・ダン子ちゃんのあの返事がもし無くてもいずれは『特撮好き』を公言できる自分になっていた」と仰るぞひ丸さんの、特撮に対する底なしの愛。それでも尚、記憶に残り続けている、キッカケをくれたダン子ちゃんとの思い出。小学4年生の男の子にとって一歩を踏み出す勇気をくれた人がいかに大きな存在だったかを窺い知れる素敵なエピソードでした。
で、自分が小学生の頃はどうだっただろうと。ウルトラマンや戦隊といったヒーロー番組は見なくなっていたけど、ゴジラやガメラといった怪獣映画は好きでまだ見ていたなあ、とか。でもそれを周りに打ち明けられていたかというと…。やっぱり、アイデンティティも確立されていない頃に自ら少数派であることを打ち明けるというのはとても勇気の要ることだと思うんです。
ぞひ丸さんのお話を聞いて「僕にもダン子ちゃんみたいな子がいたら、また違った青春を送れたのかなあ」などと考えてしまいましたが、結局最後に勇気を持てるかどうかは自分次第というところもあります。そういう意味で、ぞひ丸さんの「特撮が好き」「絶対に嫌いにならないもの」という真っ直ぐな思いにはとても清々しさを感じました。
それに、堂々と打ち明けたことで同志を見つけることができたというのは、羨ましいのと同時に、勇気あるぞひ丸少年に手を叩いて拍手を送りたい気持ちにもなりましたよ。素晴らしい体験をお話してくださって感謝です。
うちの息子にも、“モロボシ・ダン子”ちゃんのようなクラスメイトとの出会いがあるといいのですが…。勇気を振り絞って世界を開く―。そんな経験を多感な時期にできたからこそ、人は人を楽しませたり笑わせたりすることができる。今回のお話を伺いながら、僕は一児の父としてそんなこともぼんやりと考えたのでした。
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