僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

感想『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』 / 「トクサツの因子」を未来へ残すために

 

 映画『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』を息子(小3)と見てきました。

 

 大怪獣首都激突――。

 『ブレーザー』のテレビシリーズが最終回を迎えてから今日まで、一体何度、この漢字7文字を「俺たち」は唱えてきたことか。

 大怪獣、首都、激突。見事に好きな単語しか並んでない。なんだこのどストレートで最高にアガるサブタイトルは。怪獣ファンにとって、特撮ファンにとって、そしてウルトラシリーズのファンにとってあまりにも甘美な響き。声に出して読みたくなる日本語暫定第1位。

 


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 予告篇ももう数え切れないほど見返した。

 まさかウルトラマンの特撮パートで国会議事堂が壊れる瞬間を見られる日が来ようとは!アナログ特撮のある意味最高到達点を目撃できるのでは、という期待が否が応でも高まる。止まらないワクワクドキドキ。『大怪獣首都激突』のことを考えている間、僕が完全に童心に帰っていたからか公開日までの一日一日が本当に子供の頃のように長く感じたぞ……!

 公開日当日。劇場の座席にゆっくりと腰掛ける。隣の息子もどこかソワソワしている。照明が消え、スクリーンに映し出される「TSUBURAYA」のロゴマークにぐっと目を見開く。さあここからは「トクサツの因子」を未来へ残すための、「俺たち」と円谷プロ、ひいては田口清隆監督との戦いだ。99%の期待と1%の不安を抱えつつ、いざ勝負!

 

 

 

 

は「田口特撮」の真髄を見たか

※以下、重大なネタバレを含む箇所があります。

 

 いやはや……完敗、完敗です。参りました。

 

 「着ぐるみとミニチュアの『トクサツ』だってまだまだやれるぜ!」

 全編に渡って田口監督のそんな心の叫びが聞こえてくるようでした。「田口特撮」の真髄ここにあり。

 ブレーザーがその独特な叫び声で怪獣を威嚇するかの如く、CGによる表現が主流となった現代の特撮映画界に、着ぐるみとミニチュアで一時代を築いた「世界の円谷」が殴り込みをかけるという構図が熱い。

 そしてその「殴り込み」は少なくとも、アラフォーに片足を突っ込んでいる僕と小学3年生の息子……テレビで『ウルトラマンブレーザー』を半年間存分に楽しんだ特撮オタクの2人にとって、過去最高と言ってもいい素晴らしき映画体験を提供してくれました特撮とウルトラマンの未来は明るい。そう確信させてくれる一作でした。

 

 なんと言っても白眉だったのは、先程も言及した国会議事堂の精巧なミニチュアとその破壊シーンです。

これまでにも特撮映画、怪獣映画に議事堂が出てきたことは何度もあるんですけど、あの建物はとても大きいので、ミニチュアは本来より小さいサイズで作られていたんです。そうしないと、怪獣が小さく見えてしまうんですね。そんな流れがあったので、今回は25分の1サイズのミニチュアにしてみたいと。実際、用意していただいたものは、かなり大きかったですよ。いま、このインタビューは6人掛けのテーブルでやっていますけど、このテーブルよりも大きいですから。

 

【劇場パンフレット 監督 田口清隆インタビューより】

 田口監督のミニチュアのサイズへのこだわり。実在する建造物だからこそ、「怪獣が小さく見えてしまう」という製作側の事情に寄っていくのではなく、あくまでリアルに忠実に再現するんだというこの心意気が嬉しい。

 

(こちらは「ウルトラヒーローズEXPO2024」で展示されていたゴンギルガンとの着ぐるみと国会議事堂のミニチュア。確かに実物はかなりの大きさだったことを映画を見て思い出しました)

 実際の縮尺に合わせたサイズの議事堂のミニチュアをバックにバトルを繰り広げるブレーザーとゴンギルガンには、やはり普段とは違う実在感。「ああ、国会議事堂ってこんなに大きいんだ」という驚きをミニチュアを通して得られる喜び、現実には存在し得ない50m級の巨人と怪獣が確かにそこにいる迫力。着ぐるみとミニチュアを使った昔ながらの「トクサツ」の魅力がスクリーンに大炸裂していました。

 子供の頃に「ゴジラVSシリーズ」で新宿の都庁や横浜のみなとみらいがゴジラにめちゃくちゃに壊されるシーンを浴びるように見てきた人間としては、「特撮というからにはやっぱりこうでなくっちゃな!」と思わず唸ってしまう映像のオンパレードでしたね。

 国会議事堂が破壊されていく様子を色々な角度から捉える試みもなされていて、「精巧で大きなミニチュアほど派手に壊れていく様をじっくり見たい」という特撮ファンのフェチシズムをぐりぐり刺激してきたのも良かった。力尽きたブレーザーが半壊した議事堂に「ごっつん」してしまったり……ああいうおそらく偶発的な要素もカメラのレンズを通すと全て「演出」にすり替わるのがミニチュア特撮の面白いところです。

 

 「VSシリーズ」と言えば、いわゆる「川北後光」でめちゃくちゃメカゴジラしていたアースガロンはあまりにオマージュ元へのてらいが無さ過ぎて「かっこいい」と感じるよりも先に笑いが来てしまいました。やり過ぎだって田口監督(褒めてます)。

 

クリーンで見るオープニング映像に涙

 テレビシリーズが終わってから完全な「ブレーザーロス」に陥っていたので、冒頭のダイジェスト映像から既に涙が……。自分でもSKaRDのメンバーたちにこんなに愛着が湧いていたんだなと嬉しくなりました。

 ダイジェストは第1話「ファースト・ウェイブ」からの引用が多く、映画館で見ても全く見劣りのしないバザンガの暴れっぷりや夜の池袋を再現したミニチュアセットに「こんなに贅沢なものをテレビで見せてもらっていたのか……」と改めて。

 そして毎週見ていたあのオープニング映像。しかもヴァラロンやザンギルといったシリーズ後半の怪獣たちも登場する新バージョンで、そんなのをまさか劇場の大スクリーンで見られるとは思っておらず。この映画の中で一番感情を揺さぶられたの、実はオープニングの部分だったかもしれません。意表を突かれたのもあってかなりグッときた。きただにひろしさんが唄う「僕らのスペクトラ」、ますます好きな一曲になりました。

僕らのスペクトラ

僕らのスペクトラ

  • きただにひろし
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 ストーリーの主なテーマは、テレビシリーズの最終回でも描かれたゲントを中心とした「家族愛」「家族の在り方」といったところでしょうか。

 一人息子であるマブセユウキを男手一つで育ててきたネクロマス社CEOのマブセイチロウは、怪獣の生態研究の第一人者でもある。マスコミでは「理想の父親」として取り上げられることもしばしばだが実際は……という導入。ユウキくんはゲントの息子ジュンくんよりも少しお兄さんで、自分との時間を犠牲にしてまで仕事に打ち込む父親に不満を抱えつつそのことを口には出せずにいる。

 この辺り、ゲントもジュンくんとのコミュニケーションを一歩間違えると……という少し先の未来を見ているようで結構ハラハラさせられました。「大人は責任をとらない。問題を大きくするばかりでそのツケを僕たち子供に押し付ける」と、ユウキくんの叫びには非常に現代的で重たいメッセージが内包されており、僕もまさに一人息子と一緒に映画を見ていたので思わず口をつぐんでしまいました。

 ただ、そういった重たいメッセージを台詞で一応は提示するものの、そこまで深く切り込んでいかないバランス感覚と選択はこの映画に関しては成功していたと思います。主題はあくまで「大怪獣が首都で激突すること」なんだと。

 何よりゲントにヒーローとしての見せ場を作る必要がある中で、ゴンギルガンに取り込まれたユウキくんをゲントが降下して救出する一連のシーンには一定のカタルシスがありましたし、マブセ親子も最後はハッピーエンドで物語の着地点としてはひとまずこれで良かったのかな、と。

 それよりも僕は、あのジュンくんがお兄さんになるという事実にもう落ち着かなくってねえ。だってほら、ジュンくんって小学校低学年にしてはあまりにも空気が読めすぎてしまう子だから……下の子への嫉妬心とか絶対表に出さないでしょ。そういうとこ、しっかりケアできる父親になれよゲント(何様)。

 

 

 

「ブレーザー、終わってほしくない」

 

 ここからは、『大怪獣首都激突』の公開を指折り数えて待っていた息子の記録を少々。

 

 と、まあこんな感じで、息子も段々ネタバレやら初見時の新鮮味とやらを若干過剰に意識するいわゆる「オタク」に育ってきました。

 『ブレーザー』に関しては、とにかく「終わってほしくない」という気持ちが彼の中で特に強かったようで、テレビの最終回を見終えても「いや、まだ『大怪獣首都激突』があるから!」と寂しさを紛らわすように自分に言い聞かせていた姿が印象に残っています。ブレーザーロスに陥っていた僕にもそう言って励ましてくれました。

 公開日の前日。「明日の『ブレーザー』楽しみやなあ」と僕が言ったら、息子は「楽しみやけど明日でとうとう終わっちゃうな〜」って。僕もブログを書きながらちょっとしんみりしています。楽しかった『ウルトラマンブレーザー』が本当に終わってしまったなあ、と。

 

 映画館へ行く前にウルトラマンショップに寄って、お目当てだったゴンギルガンのソフビをゲットした息子。このためにポケモンカードを我慢してお小遣いを貯めていたらしい。「なんでゴンギルガン、アドバンスで出してくれへんねん〜」と散々文句たれてた割にはウッキウキで遊んでいた。

 

 パンフレット片手に記念撮影。しかし息子、「『星と獣』は劇場で聴きたい」とあれだけこだわっていたのに、パンフレットは映画鑑賞前に我慢できずに熟読しておりました。あはは、お茶目なやつ(笑)。

 

 ちなみにこちらが息子の『大怪獣首都激突』感想ピックアップ。

 この他には、ゲントが走りながらブレーザーに変身するシーンもお気に入りだったようです。家に帰ってから自分で再現してましたもんね。ブレーザーブレスのスイッチを押した後、走るアクションを真似しながら「今!今ゲント!……はいこっからがブレーザー!見て!」みたいな(笑)。映画を見ていない嫁さんがそれを見て「ほんまに楽しんできたんやねえ」と大笑いしていました。

 

 「晩ご飯は『はま寿司』がいい!」と言うので連れて行ったら、ちょうどウルトラマンとコラボしていて「なるほど」と。ちなみにガチャはウルトラマンのバトル消しごむで、息子は2回回して2回ともエックスが出てました。「ブレーザーが出るまで回すで!」とのこと(ノ∀`)

 

 『大怪獣首都激突』。凄く良い意味で「テレビシリーズの延長」という作りの映画でした。『ブレーザー』というシリーズ自体は完結しましたが、ゲントとブレーザー、そしてSKaRDの物語はまだまだ続いていくんだよというエンディングで。田口監督も舞台挨拶かなにかで「いくらでも続きを作れる終わり方にした」と仰っていましたよね。もういくらでも作ってください、続き。

 ウルトラシリーズでこういう終わり方をした作品って意外と少ない気がするんです。ゲントの正体バレが本当に最後の最後まで無かったのも新鮮でした。だから、「終わってほしくない」という僕と息子の『ブレーザー』への思いが実は半分は叶っているのかなあみたいなことを思ったりして。

 多分、映画はこれから2人でまた何回か見に行きます。テレビの録画だって何度も見返すことになるでしょう。『ブレーザー』が描いたコミュニケーションの物語と、田口清隆監督がウルトラマンを通してばら撒こうとしている「トクサツの因子」。我が息子にはしっかりと届いていることをここに書き残しておきます。

 

 そう言えば、『トリガー』以降恒例だった次回作ウルトラマンの予告みたいなの、今回は無かったですよね?あれ毎年楽しみにしているんですけどね、今年に限っては無くて良かったなあって。やっぱりもうちょっとだけ『ブレーザー』の世界に浸っていたい。新しいウルトラマンが出てきちゃうと息子の興味も遅かれ早かれそっちに移っていくでしょうし……。

 僕はまだまだ息子と『ブレーザー』について語り合う気満々ですよ。彼も同じことを思ってくれているといいのですが。映画館からの帰り道、車の助手席ですやすや眠る彼の寝顔を見ながらそんなことをぼんやりと考えるのでした。