僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

【あなたとトクサツ。-第4回-】私の全てを救ってくれたヒーローたちへ

 

 「あなたとトクサツ。」早いものでもう第4回です。

 

 僕、実は「他人にインタビューをする」なんてこれまでの人生でそんな機会ほとんど無かったんですよね。正直、今も「インタビューって何だろう?」と自問自答しているところで…そんな段階で企画なんて立ち上げてどうするという話なのですが(笑)。

 子供の頃から、プロスポーツ選手や芸能人なんかに記者がマイクを向けて「どうですか?ああですか?」と矢継ぎ早に質問を繰り出す光景を、ちょっと冷めた目で見ていたりもしましたから。

 なんと言いますか…質問する側が必死であればあるほど「滑稽さ」が際立っていくあの空間が直視出来なくて。明らかに「何か」を言わせたい意図が透けて見える質問とか、「よくそんなこと聞けるよな」みたいな。

 で、実際に自分がインタビュアーになってみるともう全然、見るのとやるのとでは全くの別物で(笑)。

 もちろん同じ趣味を持つ方々から色々なお話を伺うのは楽しくて、僕もそこに興味があるからやらせてもらっていることなのですが、やはり人と人との関わり合いですから、単なる興味本位で質問を投げるばかりでも当然いけない。第4回にして、またこの歳になって、こんなに勉強させられることがあるのかと刺激的な毎日を送っているところです。

 さて、今回も第3回のナサリシチさんに続きこの企画を通じて知り合うことができたエレナさん(@KamenRiderReym)にお話を伺いました。

 

●「あなたとトクサツ。」とは?

「あなたとトクサツ。」は、読者の「特撮と人生」にスポットライトを当てる企画です。

人生で最初にハマった特撮作品、好きだった特撮を「卒業」または「復帰」することになったきっかけや時期、特撮のおかげでこんなに良い思い / 悪い思いをした等々、「特撮と人生」にまつわるお話をたっぷりと語っていただき、インタビューを通して更に深堀していきます。

 

 「好き」の原点であり、人間関係の原点であり、生きていく上での原点である。エレナさんの特撮への熱い思いを紹介させていただきます。

 

 

 

 

「私もあんな風になりたい」

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第4回:エレナさん

 

 私が特ヲタになった原点は、今から20年前放送されていた『仮面ライダー龍騎』『忍風戦隊ハリケンジャー』をリアタイしたのがきっかけです。

 

 当時はまだ5歳で、内容は正直なところ理解は出来ていなかったかもしれませんが、「私、ヒーロー好きだ!!!」って直感で思ったんですね。

 

 なんでも、子供の頃は持病の関係で入退院を繰り返し、幼稚園にも通っていませんでした。誰かと何かをすることが無い入院生活、小学校へ入学するまでの楽しみの一つが『スーパーヒーロータイム』でした。同時に「このキャラが好き!!!」という推しも、幼いながらにいました。『龍騎』では仮面ライダーファム、『ハリケンジャー』は霞一甲/カブトライジャー。それ以降も推しは年一で増えてます(笑)。

 

 特撮を通じて私が学んだことは、「どんな事があっても誰かを信じ抜くこと」「誰かを大切に想えば、自分を大切に想ってくれる」…簡単に言えば、人との関係の楽しさ、尊さ、愛しさ、友情。またその逆の切なさ、絶望、苦しみ。全てをヒーローから学びました。

 

 学生時代、高校に進学するまで集団いじめを受けていて学校に通うのも苦痛でした。死を考えた時期もありました。

 

 だけど、私の好きなヒーロー・ヒロインはどんな苦境でも立ち向かい、目標や夢を叶えていて「ぁあ‥‥なんて格好いいだろう。凄いなぁ、私もあんな風になりたい」と思うようになりました。

 

 そんな時、ふと「イジメに立ち向かえるんじゃない?」と思い、弱い勇気だったかもしれませんが男女関係なくイジメている相手に反抗が出来るようになり、自然と私を受け入れてくれる人も出てきて 「一人でも強いけど誰かと一緒ならもっと強くなれるんだ」と、スーパー戦隊でレッドが他の仲間たちと出会うように、ライダーが新たなライダーと出会うように、私も出来るじゃん!!!って。それからは学校生活も楽しく過ごせましたし、当時出来た友人ともずっと続いてます😊

 

 大人になった現在でもニチアサの視聴は欠かせません。仕事のモチベーションにもなっています。なんなら職場が特ヲタにとても理解があって救われています(笑)。長くなってしまいましたが、これが私の特撮体験の原点です。私の全てを救ってくれたのは「特撮」なんです。

「その壁」を越えるために

―エレナさん初めまして。この度は当ブログの企画へのご参加ありがとうございます。幼少期の頃から現在まで、エレナさんの「特撮と人生」が文章の中に簡潔にまとめられていて非常に読みやすかったです。更に深掘りするべく、お話を伺っていこうと思います。よろしくお願いします!

5歳の頃、入退院を繰り返されていた中でハマった『龍騎』と『ハリケンジャー』。特に仮面ライダーファムとカブトライジャーが推しとのことですが、それぞれのキャラクターへの思い入れを詳しく教えてください。

 そうですね…では、まず『仮面ライダー龍騎』の仮面ライダーファムから!

 ファムは平成ライダー初の女性ライダーでした。当時の私は女の子でも「ライダー=変身」が出来ることを知らなくて 、美穂さんがファムに変身する回を見て心から「格好いい!!!!女の子もライダーなれる!!!!凄い!!!!」と思って(笑)。私もライダーになりたいって、子供ながらの夢になりました。

 スラッとしていて、凛として品がある。に反してあの強さ…大人になった今も憧れます!

 次はカブトライジャーなのですが、簡潔に言ってしまえば「一目惚れ」です(笑)。

 カブトライジャー=霞一甲の初登場回を見てからだったかなぁ…。雷流の忍としての使命、マンバルバとの死闘、影として光を守る、色々背負いながらもソレと向き合ってる姿を素直を応援したくなったんです。大きくなってからそうやって思えるようになって、ホント当時は一目惚れでしたね(笑)。

 

―『龍騎』の劇場版に登場したファムは当時の特撮ファンの間でもかなり話題になった記憶があります。確かに、変身前の加藤夏希さん演じる霧島美穂の雰囲気からして、エレナさんの仰る「品」と「強さ」が見事に同居したキャラクターでしたよね。ファムのデザインも、他のライダーに交じっても違和感がなくそれでいて女性らしさも兼ね備えた優れたものでした。

カブトライジャー=霞一甲が様々な使命を背負いながら戦う姿も、子供の頃に入退院を繰り返されていたエレナさんを勇気づけたことと思います。エレナさんがヒーローから学んだと仰る「人との関係」ですが、その中でも、このエピソードのこの展開が特に印象的だったという具体例はありますでしょうか?

 『龍騎』の世界は、子供からしたら結構感情がしんどくなりそうな深い人間関係の話が基本なのですが、戦いの中にいる紅一点には華があると言いますか、女性ライダーはファムに限らず女性だからこその「強さ」を必ず持っている。それは誰と比べることなく、真っ直ぐにシンを貫いてると思います。

 運命、とは必ずしも楽な道ではないですよね。子供には上手く伝わらないかもしれないですけど、直感で伝わる「ナニカ」が当時の私の姿と重なったのかもしれません。

 「人との関係」…そうですね。どの仮面ライダーも戦隊も、些細なことを学べる機会が多いと私は思うんです。特にそれを強く感じたのは、中学生の頃に見返した『仮面ライダー555(ファイズ)』の第40話から最終話でした。

 オルフェノクと人間の対立の中で、人間を信じるオルフェノクが恐れているのもまた人間で。でも、人間も同じ人間のことを怖いと感じることがある。自分と違う者への批判、蔑み、軽蔑。『555』の世界は、そういった現実世界の人間関係を生々しく反映しているように感じました。そして、その中で何とかして上手く関係を築きあげようとする乾巧と木場、海堂の姿を見て、私も違った人との関係を信じることで変わるんじゃないかと学んだんです。

 

―『仮面ライダー555』は、特に終盤の展開においてレギュラーメンバーの関係性が目まぐるしく変化していましたよね。しかもそれが決して非現実的なものではなく、ある一定の生々しいリアリティを保ち続けていたことは僕も視聴しながら感じたことです。エレナさんがふと「イジメに立ち向かえる」と思われた直接的なきっかけも、やはり特撮ヒーローにありましたか?

 そうなんですよね。遠くて近い、近くて遠い。ギリギリの境界線があるかのように物語は進んでいったんですよね、人間とは?オルフェノクとは?という感じに。

 特撮ヒーローって、中盤戦になってくると大きな壁=ボスの次に強い好敵手(ライバル)や因縁の怪人との戦闘シーンがあったりするじゃないですか。

 最初はこちら側の攻撃が一切効かなくて、ヒーローはボロボロになって一度負けてしまう。でも「ナニカ」を変えること、「ナニカ」を手にすることで新しい力・強さを手に入れ、再び戦ってその壁を越える。その時は決してひとりじゃない、誰かが力を与えてくれたり見守ってくれたりしている。

 作品で言えば、『轟轟戦隊ボウケンジャー』の高丘映士(ボウケンシルバー)とアシュのガイとレイの因縁。アシュと人間の間で生まれ監視者としての使命と運命に向き合う姿を見ながら、映士の近くにはチーフ達仲間が居る。仲間の存在が自分を変える、 “まだ” 友達も居なかった私でもきっとイジメに立ち向かえてその壁を越えられるんじゃないかと思い、実行という形で前に歩けたんです。

 

学生時代に死を考えたというほどの集団イジメを受けていたという経験は、きっと思い出すのも辛い記憶かと思います。その中で、小学校に入学するまでの楽しみの一つだったヒーロー番組がエレナさんの「私もあんな風になりたい」という感情を引き出すトリガーになったことは、同じ特撮番組を愛する人間の一人としてとても誇らしく思います。

 私自身、変われるキッカケ=トリガーが目の前にあった特撮だったんだと身にしみて感じていますね!そして、それはこの先もずっと誇れる、私にとっての自信であり長所でもあります。

 

―特撮ヒーローから勇気をもらい、それを実生活で自身の行動に反映させることができたという経験は、エレナさんの人生において何にも代えがたい大きな出来事だったと思います。その時に出来た友人と今も関係が続いているなんて素敵ですよ。お話を伺っていて、僕まで嬉しくなってしまいましたから(笑)。 それでは最後に、エレナさんにとって「特撮とは?」を一言でお願いします!

 勇気をもらっても簡単に行動に移せないのが当たり前な世の中なのかもしれません。でも、当時の私は負けたくないと素直に思ったのでその強さで一歩進むことがき、今があるんだと振り返れば振り返るほど思います。友人は一生の宝ですね、ホント。かなりヘビーな話だったのに、素敵だと感じてくださって嬉しいです!ありがとうございます!

 私にとって「特撮」とは、自分を成長させてくれて、大人になった今の私を支えてくれる「心の薬」です!!! 

 

―長時間のインタビューお疲れさまでした。お話をさせていただいた中で、僕も勇気をもらえた気がします。ありがとうございました!

話を伺って感じたこと

 特撮ヒーローから勇気をもらい、憧れの気持ちを抱いたことで、直面していた「いじめ」という理不尽に立ち向かうことができた…エレナさんの経験談からは、やはり単なる趣味には留まらない特撮ヒーローの懐の深さを感じ、僕も大変勇気づけられた次第です。「トクサツ」の力って凄いんだな、と。

 人生において、辛い時期やどうしようもない理不尽にぶち当たる経験は多かれ少なかれ誰にでもあることですが、それをどう乗り越えたかというプロセスの中に特撮ヒーローが深く関わっている…という方は実は多いのかもしれません。困難を乗り越えて強くなる…そんなキャラクターの人間的な成長を長いスパンで描いていくヒーロー番組が持つ、それがある種の使命でもあるのだと感じました。

 僕が興味深かったのは、例えば『龍騎』や『555』って従来の分かりやすい特撮ヒーロー番組の勧善懲悪の概念を意識的に崩しに行っていた作品じゃないですか。

 それは、万人共通の「正義」というものが見えにくくなりつつある時代に作られた作品故のコンセプトだと思うのですが、エレナさんがファムの「芯の強さ」に感銘を受けたり、オルフェノクと人間の関係性の変化に学びを得たりされたことは、当時番組を制作されていた方たちにとって一番求めていた反応だったのかもしれないな、と。

 エレナさんの特撮を語る言葉の端々から常に前向きな空気が感じられるのは、重たい過去を自分の手で切り開いた経験があるからなのだと思います。それこそ、仮面ライダーファムのような凛とした雰囲気すらも感じさせるのは、5歳の頃の「ヒーローが好きだ!」というあの直感とも無関係ではないのでしょう。

 今回はエレナさんご自身も仰っているように、学生時代にいじめを受けたというかなりヘビーなお話を聞かせてもらうことになり、インタビュアーとしては正直何でもかんでも首を突っ込んで質問するわけにはいかないという思いがありました。ただエレナさんのお人柄もあり、僕の不躾な質問にも快く答えてくださり終始とても楽しくお話をさせていただけたこと、大変感謝しております。

 最後に残してくださった「心の薬」という一言を聞いたときに、僕も一特撮ファンとして、この企画を立ち上げて本当に良かったと心から思えたのでした。

 

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