「あなたとトクサツ。」第19回のゲストは、昨年末の「ウルトラヒーローズEXPO2022」で息子共々ご一緒させていただき大変お世話になりました、うらひろ三世さん(id:urahiro003)です。
●「あなたとトクサツ。」とは?
「あなたとトクサツ。」は、読者の「特撮と人生」にスポットライトを当てる企画です。
人生で最初にハマった特撮作品、好きだった特撮を「卒業」または「復帰」することになったきっかけや時期、特撮のおかげでこんなに良い思い / 悪い思いをした等々、「特撮と人生」にまつわるお話をたっぷりと語っていただき、インタビューを通して更に深堀していきます。
ウルフェスやウルサマをはじめとする様々なウルトライベントに積極的に足を運ばれているうらひろさん。
ブログでは、美しい写真の数々と共に、イベントの詳細なレポートも残してくださっており、なかなか頻繁に関東へは行けない関西の民としてはいつも感謝の気持ちで拝見しております。
今回うらひろさんに伺ったのは、ちょうどご自身が特撮を卒業するかしないかという微妙な時期に熱中されていたという、『ウルトラマンコスモス』についてのお話です。
「怪獣をむやみに倒さない慈愛の戦士」というコンセプトは子供心に新鮮で、池袋のウルフェスに通われた思い出と共に、うらひろさんにとってはとても印象深いウルトラマンだそうです。
そしてその完結編である『劇場版 ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』では、主人公・春野ムサシとコスモスの構図に、ご自身の人生にも重なる「何か」を感じられた、とのこと。
僕も『コスモスVSジャスティス』は、中学3年生のときに映画館へ足を運んで鑑賞したことを覚えています。
それもあってか、今回は聞き手としても「あの時の映画館にいたかもしれないチビっ子から、こんなに素敵なお話が聴けるなんて」という充実感があり、終始楽しく和やかなムードでインタビューさせていただきました。
それでは「あなたとトクサツ。」第19回です。
父と子の新たな一歩として
第19回:うらひろⅢ世さん
今まで20数年生きてきた中で、自分の「特撮と人生」を結びつけられるような経験などあっただろうか……。
そう思いながら自身の特撮のルーツを考えていたところ、思い出のある、またはノスタルジーを覚える作品として決して無視できないのが『ウルトラマンコスモス』であることに気づきました。
「ウルトラマンは怪獣を倒す」という流れが常識となっていた時代において、怪獣保護を謳う主人公・春野ムサシの主張や、光線技で怪獣を爆砕せずに心を鎮める慈愛の勇者・ウルトラマンコスモスの活躍は、当時小学生だった僕にとっては非常に新鮮でした。『コスモス』は、ウルトラシリーズの幅広い作風を代表する一作であると今でも思ってます。
そんな『コスモス』の、特に劇場版『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』について思い出を語っていこうと思います。
『コスモス』の劇場版と聞いて真っ先に思い浮かぶのは「ウルトラマンフェスティバル」いわゆる「ウルフェス」の存在です。
『コスモス』の劇場版は3作とも7月か8月の夏休み期間中の公開で、劇場公開と同時期に池袋サンシャインシティにてウルフェスが開催されていました。
その中でも、『コスモスVSジャスティス』の時期は、父と一緒に池袋の劇場で映画を鑑賞した後に、そのままウルフェスに直行するという贅沢な体験をしたためとても印象に残ってます。
同時にその年は、僕にとって父と一緒に行った最後のウルフェスになりました。
当時小学生として特撮が好きな自分に恥ずかしさを感じ始めていたこととも重なり、いきなり卒業とまではいかなかったものの、『コスモス』シリーズの完結が、自分の特撮人生において一つのピリオドとなったことは間違いありません。
その後も、僕の特撮人生は上昇と下降を繰り返しながらも何とか続いていきましたが、父と最後に行ったウルフェスと『コスモス』の思い出は、特に自分の中で大きなターニングポイントとして存在しています。
もう一つ、『コスモスVSジャスティス』といえば主題歌の「High Hope」。20年近く経った今でも泣きそうになってしまうほど大好きな曲です。
「僕はこれから ひとりでいける」
少年時代から夢を追いかけていたムサシにとって遠い存在だったコスモスと、最後は肩を並べて共に宇宙を飛ぶ姿に強いシンクロを感じました。そして、改めて聴いてみると “独り立ちした子を見守る父” の目線が感じられるのも、この作品の魅力を表しているように思えるのです。
「愛されたように 愛してあげよう」
そんな日が来るかは分かりませんが、自分も子どもを持つ時が来たら、歌詞にあるこの言葉を胸に、まだ見ぬその子たちと向き合っていきたいと思わせてくれました。
僕にとって『コスモスVSジャスティス』は、父と子の新たな一歩を後押ししてくれた作品だと思うのです。
「父を、改めてすごいと思うように――」
―うらひろⅢ世さんとは、昨年末の『ウルトラヒーローズEXPO2022』で実際にお会いでき、息子共々大変お世話になりました。その節は本当にありがとうございました。
そしてこの度は「あなたとトクサツ。」へのご参加、誠にありがとうございます。当時のうらひろさんにとって新鮮だったという『ウルトラマンコスモス』の話題から、お父様との「ウルフェス」の思い出まで、作品の内容とリンクさせながら実に分かりやすく言語化してくださいました。インタビューを通して更に深掘りさせていただければと思います。よろしくお願いしします!
はい、よろしくお願いします!
―それではまず、うらひろさんがご自身の特撮のルーツと仰る『ウルトラマンコスモス』についてお聞きします。
怪獣をむやみに倒さない慈愛の戦士・コスモスの活躍の中で、当時のうらひろさんが最も印象に残った回は何ですか?
テレビシリーズのエピソードだと「動け!怪獣」がとても印象に残っていますね。
チームEYESのコミカルな奮闘がキャッチーに感じられたうえに、子どもと再会して涙を流しながら散っていくムードンのシーンが、BGMも相まってすごく好きでした。今見ても、つい涙ぐんでしまいます。
そういったウルトラマンの「優しさ」の面が強く押し出されているからこそ、悪意に対して敢然と立ち向かうコスモスのヒーロー性も引き立つというギャップの見せ方も秀逸でした。
その点でいうと、ワロガが登場する「時の娘」も印象深いエピソードです。
どちらのエピソードも『コスモス』という作品が掲げる “優しさと強さ” を強く体現しているものだと思います。
―確かに、どちらのエピソードもテイストこそ違えど、『コスモス』の掲げる「優しさと強さ」というテーマが特に前面に出ていましたよね。怪獣を倒さないからこそ引き立つヒーロー性は、その後も色々なウルトラマンが登場してきた中で、今もコスモスが慈愛の戦士として異彩を放っている点だと思います。
うらひろさんが最も思い出深い作品として挙げられた『劇場版 ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』では、怪獣と人類の共存の一方で、主張の異なる2人のウルトラマンの戦いも描かれていました。当時小学生だったうらひろさんの目には、どんな作品に映っていましたか?
この映画で「やっとジャスティスが活躍するんだな!」と、当時の僕は前向きに考えていました。
というのも、前作の『コスモス2 BLUE PLANET』でジャスティスが出てきた当時、「『コスモス』の後番組に出てくるヒーローなのかな?」みたいな、淡い期待を勝手に抱いていたんですよね。
だからあの映画での活躍だけでは少し物足りなく感じていたんです。ジャスティスの、ヒーローとしてのアイデンティティが見えなかったというか。
結局ジャスティスのテレビシリーズは作られませんでしたが、そのジャスティスが何らかの理由を持ってコスモスと対立するという『コスモスVSジャスティス』には、予告の段階からワクワクさせられました。
『コスモス』シリーズの最終作でありながら、その主軸はジャスティス=ジュリが担っているというのも特徴的ですよね。
ジャスティスに変身するジュリにも様々な出会いと過去と葛藤があり、しかし最終的にはコスモスと並んで共に戦う姿に、子供の頃の僕は釘付けになっていた記憶があります。
ムサシの出番が少なかったのは少し寂しかったですが、ジュリをメインヒーローに据えることで、親(デラシオン)から一人立ちしようとする子を描く意図も感じられました。
『コスモスVSジャスティス』は、『コスモス』という作品全体の幅を広げてくれていたんだと、大人になってから作品の奥深さをより実感しましたね。
―待望のジャスティスの活躍と、大人になってから感じたという作品の奥深さ。
まさにうらひろさんの「特撮と人生」を語る上で、『コスモスVSジャスティス』は欠かすことのできない大切な作品だったんですね。
僕もこの映画は大好きで、当時は中学3年生でしたが映画館に3回ほど見に行きました。あの映画館にいたチビっ子たちの中に、うらひろさんがいたかもしれないと思うと、こうして今お話を伺っているのも少し不思議な感じがします(笑)。
いやー、3回も観に行けたなんて羨ましい(笑)。
あの時の僕にはまだ映画をおかわりしようなんて発想は無かったので、その一度きりの出会いがより作品の記憶を濃いものにしているのかもしれません。
―さて、劇場版コスモスの公開時期と重なって開催されていたことで、うらひろさんにとって特に印象深いイベントとなった池袋の「ウルトラマンフェスティバル」。
ご一緒に楽しまれていたお父様とウルフェスについて、何か思い出などがありましたら教えてください。
父とのウルフェスの記憶に関してですが、正直なところ結構ボンヤリしています。
巨大なバルタン星人(だったかな?)にボールぶつけたりだとか、お昼ご飯にマクドナルドに行ったりとか、限定品のテックライガーKSセットを買ってもらったな、とか……。
鮮明に覚えてるのは、ライブステージでコスモスの全形態が並んだ場面ですね。今見てもワクワクするステージならではの演出に、小学生の僕は引き込まれてしまいました。
その影響か、後年のウルトラヒーローズEXPOでオーブやジード、トリガーの全形態が並ぶステージがあった時には、「こ、これはあの時の!?」と、小学生の頃に見たコスモスのステージが頭をよぎりましたね。
他に、池袋サンシャインシティの展示ホールの空気も昔から好きだったんです。
その時期のウルフェスとほぼ同時に開催されていたコミックボンボン主催の「ボンボンフェスティバル」にもよく行きました。
またその影響からか、後継イベントである「ウルサマ」に今も通い詰めてしまっています。
最近の狙いは専ら、ウルトラマンと写真が撮れるウルトラショットなのですが、イベント特有の空気感を肌で感じられるのもウルフェス及びウルサマの醍醐味なんですよね。
ウルトラショットといえば、今度コスモスとジャスティスがコンビで来る回があるので、作品同様にフューチャーモードとクラッシャーモードで来ないかなと、ちょうどワクワクしていたところでもあります(笑)。
―昨年末のニューイヤーフェスティバルでは、息子共々お世話になりました。息子のいい写真が沢山撮れたのは、うらひろさんがウルトラショットのスケジュールや列に並ぶコツを教えてくださったおかげです。
いえいえこちらこそ!
Ryoさんと息子さんのおかげで、僕もあの日は楽しく過ごせました。機会があればまたご一緒させていただきたいです。
(こちらこそ是非お願いします!ちなみに、うらひろさんとご一緒させていただいた日の記事はこちら)
―ご自身のブログでウルトラ関係のイベントについてとても綺麗な写真を沢山アップしてくださっているうらひろさんですが、『コスモス』の完結をきっかけに特撮を一度卒業されていたんですね。
「特撮が好きな自分に恥ずかしさを感じ始めていた」という部分で、何か具体的なエピソードなどはありますか?
印象的なエピソードとしては、「クリスマスプレゼントは何をもらったか」を友達に言うのが恥ずかしかった時ですね。
当時の僕はクリスマスプレゼントに仮面ライダーの玩具を頼むことが多かったのですが、その翌日、友達と何もらったかを話す時に口籠もってしまうことがほとんどで……。
小学校高学年になってからはコロコロコミックを読み始めて、『ロックマンエグゼ』や『バトルビーダマン』などにハマっていきました。
それでも特撮は当時もこっそり見てはいたので、卒業というほどではなかったんですが、やはり同級生たちがあまり特撮ヒーローの話をしなくなって、自分の中で特撮からホビーアニメなんかにウェイトが移った、みたいな感じの時期でしたね。
ただ、中学生になってさすがに本格的に卒業かなぁと思い始めたところに、『仮面ライダー電王』が始まって、バッチリ特撮に引き戻されてしまったのですが(笑)。
―僕もコロコロコミックの存在は、特撮から一度離れるきっかけの一つだったのでとても共感しますね……。別に嫌いになるわけではないんだけど、「特撮好き」を表立って発言しない空気に自然となっていくというか。結果的に特撮に引き戻されてしまうところも100%共感です(笑)。
コロコロコミックは自分の新しい「好き」が見つかるかもしれないので、全日本男児に絶対通ってほしい道ですね!
(うちの息子も最近コロコロを読み始めました……!)
―そんな中で、うらひろさんが今も大好きだと仰るのが『コスモスVSジャスティス』の主題歌「High Hope」。
「“独り立ちした子を見守る父”の目線」というのは、リアルタイム世代ならではの視点で、なるほどと思わされました。うらひろさんのお父様はこの曲を聴いて何か感想を口にしたり…といったことはありましたか?
正直、特に何も言ってはいなかったですね(笑)。
普段から口数が少ないタイプなので、今でも何かを語り合うような会話はしないです。
それでも子どもの時は色々な場所に連れていってもらえたことはいい思い出として残っています。自分が社会人になってからは、休日を割いて僕に付き合ってくれていた父を、改めてすごいと思うようになりました。
今見ると、『コスモス』自体がムサシとコスモスの擬似的な親子の物語とも受け取れます。その完結作である『コスモスVSジャスティス』は、自分たち親子にとっても一つの区切りとなった作品でもあり、そこの重なりには運命的なものを感じていますね。
今でも父は孫(僕にとっての姪と甥)に対してサービス精神旺盛で、自分も子どもが出来た時に参考にできたらなと思ってます。
―昔も今も、常にうらひろさんがお父様の背中をじっと観察されている様子が凄く伝わってきます。素敵な親子の関係を築いていらっしゃるなあ、と。そしてその中心には『ウルトラマンコスモス』という忘れられない作品があって……。お話を伺いながら、「High Hope」が僕の脳内でずっと再生されていました(笑)。
うらひろさんにお子さんができた際には是非、今回お話されたことをいつか伝えてあげて欲しいですね。それ自体がきっといい思い出になると思います。
それでは最後に、うらひろさんにとって「特撮とは?」を一言でお願いします!
「継承」なのかな、と思います。
特撮は子どもの時に触れる方が多いと思うので、幼少期に作品を通して上の世代から受けた思いやりや気遣いを、大きくなってからその下の世代に受け渡していく手段でもあると考えています。
今度3歳になる甥っ子が最近『ドンブラザーズ』を見始めたみたいで。小さい時だけでもいいので、叔父として許される範囲で「特撮は良いもの」だと、甥っ子と話していけたらなと思っています。
―長時間のインタビューお疲れ様でした。最後の「継承」の一言、なるほどと思わされました。ブログの更新も楽しみにしています。ありがとうございました!
お話を伺って感じたこと
僕も「ウルフェス」ではないですが、子供の頃に父とよく行ったミニ四駆のイベントのことなんかは大人になった今でもよく覚えています。
今回うらひろさんにお話を伺う中で、そういった父との記憶に、自分の成長を感じる瞬間があったり、僕の人生の中で何か区切りになったことがあっただろうかと、少しばかり考えてみました。
正直に言うと、僕の記憶にそういったものはほとんど無かったです。ウルトラマンもミニ四駆も、いつの間にか一緒に見なくなっていたし、やらなくなっていた。確かにいい思い出ではありますが、それらを「区切ったもの」については、はっきりと思い出せなかった。
うらひろさんのように、大人になった今も楽しまれているウルトラシリーズの中に、父と子にとっての明確な区切りと言える作品がきちっと存在しているのは凄く大切なことだと思わされました。
お父様とそれについて語り合うことが無くても、それこそ「High Hope」の歌詞にあるように、「愛されたように 愛してあげよう」と、次の世代への「継承」を意識することができる。
きっとそれはうらひろさんのお父様にとっても、理想的な親子の形だと言えるんじゃないでしょうか。20年以上前の思い出が、うらひろさんにとっては単なる思い出以上の、新たな一歩を踏み出すための推進力になっている。素晴らしいことです。
しかもその作品が、僕が中3の頃に、チビっ子だらけの映画館で一人寂しく観た『コスモスVSジャスティス』とは……!
いや、偉そうに言っちゃって申し訳ないですけど、「あのチビっ子たちが今はもうこんな立派な大人になっているんだなあ」と、感慨深くなってしまいまして。ははは、誰目線やねんって感じですね(笑)。
僕もオタクになり始めたあの頃のことを少し思い出せて、うらひろさんにインタビューができて本当に良かったです。改めて、ありがとうございました。
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