「えーっとね、わたしはね、この子を今から叩き潰すんでね、見ていてくださいお父さん」
息子の対戦相手がね、こう言っちゃなんですけど、どうしようもない「クソガキ」だったんですよ。
大阪のポケモンセンターで不定期に開催されている「ポケモンカード・フリーバトル」なるイベントがありまして、日曜日に親子で参加してきました。
それぞれが持ち寄ったデッキで、係の方がランダムにマッチングした相手と対戦する文字通りフリーなバトル。公式大会にバンバン出場しているいわゆる「ガチ勢」の方もいれば、僕のような「親子でエンジョイ勢」や完全に初心者の方も集まって、みんなでワイワイポケカを楽しもうというイベントです。
とにかく負けず嫌いの息子。
対戦が終わるたびに僕のところにやってきて、「今、4勝2敗!」と戦績を逐一伝えてくる。僕より勝数が多いと「いぇーい!」とか言って一人でぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ。とにかく勝ちたい、その一心。いいぞ、そのマインドはとても大事だ。
イベントの終了時間が近づいてきた頃。ちょうど息子と、おそらく同年代の子との対戦が始まろうとしていました。
それを僕が後ろからそーっと観戦していたら、いつの間にか親のほうが熱くなってしまっていた。今日はそんなお話。
煽られても煽られても……
うちの息子は、まあ人見知りするタイプというのもあるんでしょうけど、初めての対戦相手とは自分から積極的にコミュニケーションをとるタイプではないです。基本的に最初は静か。
それに対して、相手の子が息子のことをまあ煽ってくる煽ってくる。
「まあね、わたしもまだまだ初心者ですからねー」と大して意味のない謙遜をかましつつ、明らかに手慣れた手つきでパラパラっとカードをさばく。
僕の顔を見て、「あ、この子のお父さんですか?この子はポケモンカード強いですか?そんなに強くないですよね?」って、基本的にずーっと上から目線なんです。親の顔、一回見たろかと思いましたが、ポケモンセンターには1人で来ていたようです。ちっ。
苦笑いを浮かべつつイライラを溜める親の僕をよそに、しかし息子は淡々とゲームの準備を進めていて。何べんその子に煽られても無反応を貫く息子。おっ、大人……!
「がんばれ、絶対勝てよ……!」
息子の大人の対応を見て、僕の中に溜まっていたイライラが、だんだん彼を応援するパワーに変換されていくのが分かりました。
がんばれ、息子よ!
そうこうしているうちに対戦スタート。
序盤、押される息子。後ろから彼の手札が見える。プレイ中、思わず「いや、そこはそうじゃなくて……!」と口を出しそうになるも、なんとか我慢する僕。
中盤、拮抗。息子、粘りのプレイを続ける。家で僕と何度も対戦してきた経験がここで生きてくる。冷静なカードさばきにも成長を感じる。これはワンチャンいけるかも?
終盤。押されていた息子の逆襲が始まる。「あのカードさえ引ければ勝てる」という局面まできた。後ろの僕も、握りこぶしにグッと力が入る。息子、バシッと叩きつけた「博士の研究」(山札からカードを7枚引ける)のドローに運命を託す…結果は!
「よし!『かがやくリザードン』に『こだわりベルト』をつけてワザ使います!『アルセウスVSTAR』をきぜつさせて、俺の勝ちぃ!!」
さっきまで大人しくプレイしていた息子が、最後の最後に欲しかったカードを引き当て、今までの鬱憤を晴らすかのように大声で勝利を宣言。やったぜぇ〜!!
フリーバトルも、そうでないバトルも、基本的にはお互い気持ちよくやりたいもの。
ああいう煽りは当事者以外も見ていて不快だし良くない。あんまり酷かったんで、大人として一言注意しようかとも思ったんですけどね。でも息子の勝負の世界に、部外者の僕が首を突っ込むのもなんか違うよな、と。
帰り道、息子が不思議がるくらい大げさに、もう頭ガシガシなでて褒めてやりました。かっこ良かったぞ息子よ。
変に言い負かそうとしたり、喧嘩したりするでもなく、ちゃんと “ポケモンカードで” 相手を黙らせた息子、マジで「漢(おとこ)」だったな……。おかげで、最高の日曜日だったぜ。