僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

『シン・ウルトラマン』から『ULTRAMAN』へ / いま語るべき “銀色の流星” とその志について

ULTRAMAN

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  • 別所哲也
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 『シン・ウルトラマン』の大ヒットの影響で、18年前の映画『ULTRAMAN(2004)』がにわかに注目を浴びているようです。

 

 映画のタイトルにわざわざ「(2004)」と表記しなければならないのは、同じ題名の作品が以降も複数制作されている、もしくは制作中であることに由来しています。ただ、個人的な心情としては、「『ULTRAMAN』と言えばこの『ULTRAMAN』だろう!」という思いが未だにありましてですね。

 2004年。当時放送中だったテレビシリーズ『ウルトラマンネクサス』の前日譚として、あるいは『シン・ウルトラマン』と同じく、初代ウルトラマンのへの敬意と円谷プロのあくなきチャレンジ魂を込めたリブート作品として世に放たれた『ULTRAMAN』。

 この映画を一言で表すとすれば、それはまさに「当時の僕が見たかったウルトラマン」で。

 現実世界と「この世ならざるもの」の接点を一から描き直し、ウルトラマンと人間のファーストコンタクトから生まれるワンダーを再現する。その志の高い作劇は、内に秘めたる中二心を日々大切に育んでいた当時高校1年生の僕に、そりゃあもう、めちゃくちゃに刺さりました。

 今日はちょっとばかし僕の思い出話を。『ULTRAMAN』が、当時のウルトラマンオタクにとっていかに衝撃的な作品だったかをここで改めて語ってみようと思います。

 

 

 

 

『ULTRAMAN』の不幸

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 先週、「ウルトラマンオタクにとって『シン・ウルトラマン』は一般層と自分たちをつなぐパスポートのような作品になりつつある」という記事を書きました。

 『ULTRAMAN』は、ある意味そのパスポートに「なり損ねた作品」と言えるのかもしれません。『シン・ウルトラマン』と違って、全くヒットしなかったのです。

 『シン・ウルトラマン』のヒットの裏には、2016年の『シン・ゴジラ』の存在があることは言うまでもありません。特撮映画史上に残る空前の大ヒットを飛ばした『シン・ゴジラ』が「庵野秀明と樋口真嗣」という屈指のタッグを特撮ファン以外の客層にも広く認知させ、後に続く「シン」シリーズのブランド化につながった、という流れ。

 『ULTRAMAN』が不幸だったのは、そういった特撮作品としての文脈のようなものに恵まれなかったことだと僕は思っていて。

 小中和哉監督の「一般映画としてのウルトラマンを」という意気込みが、最も伝わってしかるべき一般層に全くと言っていいほど届いていなかった。当時のウルトラシリーズは、それを届かせる手段をおそらく持ち合わせていませんでした。ウルトラマンのコンテンツとしての認知度、テレビシリーズの『ネクサス』の定着度、映画としての宣伝の体制、どれも十分とは言い難い状況が高校生だった僕にも見てとれました。

 だから当時の僕は、それこそ『シン・ウルトラマン』と同じようにワクワクした気持ちで映画館に足を運び、『ULTRAMAN』の完成度の高さに感銘を受けつつも、周りの座席を見渡すとそこには誰もいない、ほぼ貸切状態の劇場……その光景に言い様もない寂しさを感じてしまったのでした。

こそ見て欲しい“銀色の流星”

 もちろん、映画がヒットしなかったことと、作品としての出来の良し悪しを同列に語ることはできません。

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 少なくとも僕は、この『ULTRAMAN』こそウルトラシリーズの「ウルトラマン再解釈の歴史」において最も成功した作品の一つだと考えています。

 主人公・真木舜一が、ある日突然背負うことになった「ザ・ネクスト」としての運命に苦悩しつつも、自身がパイロットを目指すきっかけとなった、幼き日に見た “銀色の流星” にウルトラマンの姿を重ね合わせる――。

 『ウルトラマン』の第1話「ウルトラ作戦第一号」をベースにした物語に、人がウルトラマンという「異形のもの」へ変身することの意味やダークサイドに堕ちた人間の末路といったリアルに踏み込み、同時に子供たちの持つ純粋なヒーローへの憧れを投影させる。平成ウルトラシリーズを牽引してきた長谷川圭一さんによるシナリオがあまりにも見事でした。

 自分が父親になった今見返すと、これがまた「お父さん世代」にも染みる内容だということが分かり、あの頃ぼんやりと「いい話だなあ」と思っていた真木と家族の話にもしっかりと輪郭が作られていく。18年という決して短くはない歳月もまた、2022年に見る『ULTRAMAN』をますます傑作に押し上げる要素の一つになる、というこのエモーショナル。

 

 

 

 

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 ビジュアル的にも、特にウルトラマンの体の模様にクリーチャーとしての解釈を加えたザ・ネクストのデザインは中二心をくすぐるカッコ良さで。当時購入して大切に置いておいたソフビは、いつの間にか息子のおもちゃになってしまいましたが。

 ウルトラマンオタクの間で語り継がれている、ネクストとザ・ワンの新宿を舞台にした決戦、いわゆる「板野サーカス」によるフルCGの空中戦スペクタクルも圧巻の一言。『シン・ウルトラマン』で初めてウルトラマンを知ったという人にこそ見て欲しい、ある意味「衝撃映像」です。18年も前から、ウルトラマンってこんなに凄いことやってたんだぜ、と。

Theme from ULTRAMAN

Theme from ULTRAMAN

  • 松本孝弘
  • インストゥルメンタル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 B'zの松本孝弘さんによるテーマ曲「Theme from ULTRAMAN」もまたかっこいいんだなあ…!

 

 今日のお昼にTwitterを見たら、この『ULTRAMAN』のDVDがAmazonの「キッズアニメ・映画」ジャンルでベストセラー1位になっていました。めでたい!というか、もはや奇跡!

 現時点ではサブスクによるネット配信が無く、「ツブイマは一体何をしとるんや」と憤っておるところで……。

 どうしても見たいと仰るそこのあなた、僕があなたの家に円盤をお届けしましょう!……と、割と本気で思ったんですが(笑)、多分息子が許してくれなさそう。小2の息子も大好きなんですよねえこの映画。