僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

『ウルトラマンタイガ』の絶妙な後味とウルトラの未来について考える

f:id:ryo_nf3000:20190810130048p:plain

「地球を、あなたみたいな人も自由に生きられる星にしたいの」

「地球人がそんな世の中を作れると思うかい?」

 

『ウルトラマンタイガ』第6話「円盤が来ない」より

  これまでの『ウルトラマンタイガ』に共通しているのは、その絶妙な後味ではないかと思うんです。

 今日放送の第6話は、『ウルトラセブン』の人気回「円盤が来た」の続編としての性格も持ち合わせていて、いつも以上に昭和の時代のウルトラシリーズを思い起こさせる演出が多かったですね。まさか2019年にペロリンガ星人をテレビで見ることになるなんて、僕も長いことウルトラシリーズ見てますけど思いもしなかった(笑)。

 こういったオマージュ回に限らず、『タイガ』は見終えた後の「胸にザラッとしたものが残る」感じが割と強くて。先週の「きみの決める未来」でも、主役のピリカが目の当たりにした悲しい現実をどう受け止めたのか直接は語られず、いつもと変わらない日常へ戻っていくところでパッとエンディングテーマがかかる。見ている方は一瞬「えっ?」となるんだけど、だからこそテレビの前を離れた後も色々考えてしまうんですよ。この辺、もの凄くウルトラっぽいな、と。

 

「ウルトラらしい」独特の味

 これまでのニュージェネは、エンディングテーマの爽やかさも相まって「後味の良さ」がなんとなく共通した魅力だったように思います。残酷な物語にも、いい意味での逃げ道を用意することで作り上げてきた「2010年代のウルトラ」の空気感。

 それが『タイガ』では、あえてほろ苦い終わり方をさせて、あとは自分で考えてねという作りになっている。「地球に宇宙人が潜伏している」ことが前提となっている世界で、ウルトラマンは何もかもを解決はしてくれない。目の前の怪獣や宇宙人が倒されたところで、物語の中心にいる人たちに突然幸福が訪れるわけでもない。子供が見る番組としてはかなりシビアなスタンスだなと思いながら見ています。

 見方によっては、人物の心の動きとウルトラマンのバトルが連動せずにバラバラな印象を受けなくもないのですが、そんな部分もひっくるめて「ウルトラらしい」と形容したくなる独特の味。

に生きていくために

 多様性の尊重。最近ニュースなんかでよく聞こえてくるフレーズです。『タイガ』では、そういった現実世界にある問題意識を浮き彫りにさせながら物語が進んでいくのでしょうか。どんなメッセージを発信してくれるんだろうと今からワクワクしています。

 僕は、「怪獣・宇宙人との共存」というテーマをウルトラシリーズが魅力的に見せるためには、相当色々なハードルを乗り越えなきゃいけないと前々から思っていて。

 そもそも番組の基本的なフォーマットとして、最後にウルトラマンが必殺技で敵を倒すことで成り立っている部分が大きいのです。「みんな仲良く」って、スタートの時点でそのフォーマットを否定してしまったらウルトラマンの存在意義が無くなってしまう。でも世相を反映させようとすると、ただ敵をやっつけてめでたしめでたしではもう通用しなくなっている側面もある。特に平成になってからのウルトラシリーズは、この矛盾の間で大きく揺れ動きながら歩みを進めてきました。

 自分と違うものを理解しようとしたときにぶち当たる様々な壁。『タイガ』では、この難しい問題を物語の中に上手く取り入れて、子供たちにも解りやすく見せてくれそうな期待感があります。

 なんでそんなことを僕が期待するのかというと、それは我が息子が一生懸命『タイガ』を見ているからに他なりません。

 極端なことを言うと、彼が大人になる頃には、もしかしたら現実世界で宇宙人と会えるようになっているかもしれないわけです。仮になっていなくても、「どうやって他者を理解していくか」って、地球に生きている限りは常に考えていかなきゃいけない。子供のうちから、ウルトラマンを通じてそういう世の中の問題に触れておく(例えまだ理解できないとしても)のは悪いことではないと思うんですね。

来を見つめる眼差し

 最初に後味の話をしましたが、僕が『タイガ』いいなと思うのは、その絶妙な後味の中にきちんと明るい未来への可能性を見せてくれている点です。

 冒頭に引用した台詞にもあるように、この世界の地球人は、他者との共存など到底できない存在だと周囲から認識されているようです。そして、それは僕たちの世界でも多分変わらない。

 「人間なんてどうせ身勝手な生き物だからこのまま放っておけば勝手に滅びるよ」と言い残して地球を去って行った宇宙人(『ウルトラマンマックス』第24話 参照)も過去にはいましたが、今日の第6話では「星に帰りたい男」が社長との出会いを通じて「もう少しこの星で暮らしてみるよ」と地球に留まる決意をしたところでエンディングを迎えました。

 彼が地球に留まったことが、果たして正解かどうかは分からない。それでも、その前向きな気持ちの変化にフォーカスしたドラマは、見ている側に「ひょっとしたら未来は明るいのかもしれない」と信じられる隙間を与えてくれる。

 河川敷のラストカット、良かったですね。この世界…というか、ウルトラの未来もきっと明るいに違いない。土曜日の朝から、オタクはテレビの前でしみじみさせられるのでした。

f:id:ryo_nf3000:20190810130202p:plain