『ウルトラマンタイガ』第12話『それでも宇宙は夢を見る』。
個人的には、第11話が前後編の前編として割と理想的な展開だっただけに、「主人公が変身不能」というドラマ的に最も盛り上がる要素が妙にあっさりとしていたり、最後の「信じれば何でも叶う!」的な押し切り方にはやや不満が残りました。
息子はというと、放送が終わってからも録画を何度も繰り返し見ています。多分これまでの回で一番見てるんじゃないかなあ。
見終わった後の彼の感想、「今日のタイガ、めーっちゃ強かったなあ」の一言には、ドラマの部分に納得がいっていなかった僕にも素直にそうだねと思わせる力強さが。やっぱりちびっ子は強いヒーローに憧れるのだな。テレビの前で「なんか今日はいまひとつかも…」と首をかしげる僕の横で、息子はいつも以上にハイテンションでエアーパンチ、エアーキックを繰り出していました。
「強さ」をどう見せるか
今回の「ウルトラマンタイガの強さを見せる演出」は、素直に良かったと思います。
フォトンアースへの変身と共にかかる主題歌『Buddy,steady,go!』には思わず胸が熱くなってしまったし、昭和のウルトラ怪獣よろしく真っ二つになって倒されるギマイラの画も今の時代、逆に新鮮で印象に残りました。魔法使いの女の子をタイガが救出するシーンもめちゃくちゃヒロイックで。久々に「強くてかっこいいウルトラマンタイガ」を見せてもらった気がします。
『タイガ』の場合、主役のタイガの他にタイタスとフーマの活躍も過不足なく描く必要があり、ヒロユキが変身してからの戦闘シーンが若干せわしなく感じられるときがあります。ジレンマですね。
おまけにこのタイタスとフーマが「筋肉マンと忍者」という、ウルトラマンにしてはあまりにも濃過ぎるキャラクターの組み合わせなので、結果的にタイガのアピールタイムが短くなってしまうきらいがあります。タイガは「タロウの息子」という属性以外には、フォトンアースへのパワーアップくらいしかこれという見せ場が無かったですよね。3人のウルトラマンが1人の人間に同時に憑依する設定上、仕方のないことだと理解しつつもやはり主役のタイガが目立たない物足りなさは否定出来なくて。
息子も子供ながらにそういう部分を感じ取っていたからこそ、今回の「強くてかっこいいタイガ」には前のめりな反応を示したのだと思います。
『ウルトラマンタイガ』の挑戦
でもタイガばかりが怪獣を倒していたら今度は「タイタスとフーマは何してんの?」となりますし、この辺りはバランス感覚が問われるところ。
昨年の『ルーブ』が常に2人で戦う「兄弟ウルトラマン」を描くことに挑戦していたのに対して、『タイガ』の「バディもの+3人のウルトラマン」はそれ以上の大きな挑戦だと思うんですよね。その辺は作り手も自覚している部分なのか、トライスクワッドが地球にやって来るまでの物語はテレビ以外のメディアを積極的に活用して見せていく体制も取られています。
3人の過去に関しては、YouTubeの円谷公式チャンネルでボイスドラマという形で補完。『SSSS.GRIDMAN』で成功した手法をウルトラにも早速取り入れ、これもまた新しい挑戦と言えますね。
ただ、このボイスドラマ形式は息子があまり食いついてこないのがやや辛い。これを聴くか聴かないかでトライスクワッドの3人に対する印象がいい意味で変わるのになあ。「旦那」ことタイタスの長話に付き合わされてタジタジになるタイガとフーマ、スパークドールズ劇場みたいなのでいいから是非映像化して欲しい。
11月以降は『ウルトラヒーローズEXPO THE LIVE』と題して、テレビにつながるアナザーストーリーが舞台で明らかになるとか。ヒロユキのかっこいいポスターがそそる。早く円盤化してね。
『タイガ』が抱えるジレンマ
次回はニュージェネ恒例の総集編。予告ではギャグ回っぽい雰囲気も漂わせつつ、いよいよタイガの父親であるウルトラマンタロウも登場するみたいで、単なる総集編では終わらないんだろうなきっと。
タロウとトレギアの関係、トライスクワッドの活躍、ヒロユキと霧崎の対峙など、『タイガ』がこれから描いていくであろう要素には楽しみがいっぱいです。一方で、これらを本編の中できちんと描き切れるのか不安も正直大きい。そしてそれらと同時に子供たちが憧れるヒーローとしての強くてかっこいいタイガの姿も見たいわけで…って、ちょっと贅沢を言い過ぎですか。
冷静になって考えてみると、『タイガ』の一番のジレンマは、見ている側のウルトラマンへのハードルが上がり過ぎているところにあるのかもしれません。ニュージェネももう6年目ですから、それも自然な流れではあるんですけど。
普通だったらギマイラが新造形の着ぐるみで復活して、毎週のように豪華なミニチュア特撮が見られて、というところで満足しているはずなんですよ。やっぱりベリアルの息子『ジード』、兄弟ウルトラマンの『ルーブ』を経ての『タイガ』なので、どうしても注文が多くなってしまうというか。前作以上のものをと果敢な挑戦をしている作品だと僕らも分かっているからこそ、期待も大きくなる。
タイガの戦いを応援する息子の横で、僕は「もういっちょ、もう一声!」と心の中で円谷プロとテレビ東京へ声援を送っております。あ、でも円谷プロは無理しない程度に…でも息子(と、僕)が喜ぶいいもの作ってね、と。