いつも息子とお散歩するコースにあるレンタルビデオ屋。特撮作品のラインナップがなかなか充実していて、息子に手を引っ張られつつも僕もそこに行くのが週末の一つの楽しみだったりします。
息子のお目当ては、ウルフェスや、年末恒例となっているウルトラヒーローズEXPOのライブステージのDVD。実際ウルフェスには親子で毎年通っていますが、年に数回しか見ることが出来ないライブステージを何度も繰り返し楽しめるDVDは息子の中でスペシャル感があるようで。大人の僕が見ても、最近のヒーローショーは演出も凄く凝っていて結構見応えがあるんですよ。
今回は、何の気無しにレンタルした『ウルトラマンライブ プレシャスステージ』のDVDを見て、父親の僕が不覚にも涙してしまった話。ジード&ベリアル、ゼロ&セブンとWウルトラ親子を中心に据えたジャケット写真に、「お父さんはウルトラセブン」といういかにもなサブタイトル。初っ端からお父さんを泣かせに来てるなって分かるんですけど、僕も年を取ったのか自分でも驚くほどまんまとハマってしまいました。
とある親子の物語
このプレシャスステージ、何が一番感動したかって、ウルトラマンや怪獣たちが繰り広げる迫力のバトルと、現実世界のとある親子のすれ違いから生まれるハートフルな物語を、舞台上でリンクさせることで一つの作品にしている点なんです。
幕が上がって最初のシーンは、ウルトラマンに夢中な小学生の男の子・たつやとその父親の日常のやり取り。
「なんだたつや、まだウルトラマン見てるのか。まだまだ子供だな」
「うるさいなあ。ほっといてよ!」
これ、当日劇場に見に来ている人たちのほとんどが親子で、しかも子供はまだ小学校に上がる前くらいの本当にウルトラマンに夢中な年ごろだからこそ響く非常に効果的なプロローグになっていて。日々の仕事に追われるあまり息子のことを気にかけてやれず、彼の誕生日すら忘れてしまう父親の姿。僕としては、「こうなるかもしれない」自分の未来を覗き見してしまったような感覚がありドキッとしました。
このステージにおけるウルトラマンたちの最初のバトルシーンは、冒頭のたつやがテレビで見ている映像を表現したもの。物語は終始その親子の視点で動いていきます。最初から最後までいわゆる「ウルトラマン世界」を舞台に物語が繰り広げられるウルフェスのステージとは、その視点の部分が明確に差別化されていました。
それ、親の方が泣いちゃうやつ
主人公のたつやが本物のウルトラマンに出会うきっかけは、突如現れた通りすがりの魔法使いが持つ結晶体。これに触れて願いを込めると…という筋立てで、話の構造的には『ウルトラマンガイア』の劇場版をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
「お父さんはウルトラセブン」のサブタイトル通り、セブンと父親が一体化し、負の感情から闇に堕ちゼロダークネスになってしまったたつやを救出に向かう、というのが大まかなストーリー。
たつやの思いにようやく気付いた父親が、我が子の生まれた瞬間からこれまでの出来事を走馬灯のように思い出す一連のシーンがほんとに良くて。「自分への愛情に疑念を抱かせることは、父親として一番やってはならないことだ」というセブンパパの名言も飛び出しつつ(笑)、メリハリのついた照明効果やプロジェクションマッピングといった舞台ならではの演出も加わりとても感動的に仕上がっていました。クレヨンしんちゃんの『オトナ帝国』的な、親のほうが泣いちゃうやつ。
思い出が進化する
まあ、散々褒めておきながらあれですけど、正直ストーリー自体はありがちな内容というか、特別驚くようなものではないです。ひょっとしたら人間の親子のパートは、子供たちの目には少々退屈に映っていたかもしれない。
ただ、こういう親子のどストレートな物語を、まさしくどストレートな演出で何度でも表現出来てしまう「ウルトラマン」というフィールドの懐の深さ。これは唯一無二の魅力だと思うんですよ。やっぱりね、憧れの存在に自分を置き換えられたりすると自然にアガるじゃないですか。だからこそ単純なストーリーにも感情移入できる。今回のDVDだったら僕はウルトラセブンで、息子はウルトラマンゼロなわけです。
僕が子供の頃のウルトラセブンと言えば、ゼロなんてまだいなかった頃ですから当然父親のイメージはありませんでした。それが長い年月を経て「ゼロのお父さん」と呼ばれるまでに変化していった。今やウルトラの父もおじいちゃんになる時代ですから、何年後かにはセブンも誰かのおじいちゃんに…なんてことを想像するのも楽しい。ウルトラマンは、ファンの人生や思い出も背負っているんだなあ、と。
ちなみに息子は今回のプレシャスステージ、例によって例のごとく終盤のバトルシーンだけ何度も繰り返し見ています。人間の親子の話を理解するにはまだ早かったかも。でも、このいつもとは少し趣向の違ったステージのことを、退屈だった記憶でもいいから「こんなのもあったな」と思い出せるくらいには心に留めておいて欲しい。一緒に見ながら不覚にも涙してしまった父親として、そんなことを思うのでした。