お互いに、浮き足立ってしまったのかもしれません。
先週の日曜日、春休み最後の日。
例によって例の如く息子(小5)とウルトラマンカードゲーム(以下UCG)の公認大会ギャラクシーカップに出場しておりました。
この日は息子の調子がすこぶる良く、複数回優勝を経験されている強者たちを持ち前の素早いプレイングで次々と撃破。予選を4-1で駆け抜けると、決勝トーナメント1回戦も以前決勝で対決したライバルとの激闘(息子曰く「人生で一番白熱した試合」)を制し瞬く間にベスト4進出。あと2回勝てば念願の優勝というところまで来ていました。
僕もこの日は本当に珍しく調子が良くて、予選3-2からのトナメ1回戦を勝利し同じくベスト4まで上がることができました。
準決勝、僕と息子はそれぞれ違う卓での対戦。……と、これつまり、僕と息子がそれぞれ勝利すれば決勝は親子対決という状況です。
ギャラクシーカップの決勝で親子対決――。
UCGを始めた頃から僕が密かに思い続けている夢、ですね。いつかは実現したいと思っていた夢をようやく叶えられるシチュエーションがついにやってきました。
「勝ちたい」気持ち
普段の勝率を考えたときに、息子が決勝に上がる確率は大いにある。
一方で、弱者の僕は相当頑張らなければいけません。
正直、僕の実力ではもうベスト4くらいが精一杯という感覚があります。だからいつもだったら「ようやっとる自分、ようやっとる( ˘ω˘)」と開き直ってお気楽にプレイしていたところです。でも、このときばかりは……。多分、UCGを始めてから一番「勝ちたい」と力んだ一戦でした。「待ってろ息子よ、俺もすぐにそっちへ行くからな」という。
息子もこのシチュエーションはよく理解していました。対戦前、「これパパと決勝もあるやん〜」とわちゃわちゃ言ってましたしね。対戦が始まってからもチラチラ僕にアイコンタクトをとってきて、既に手応えがあったのか「俺はいけるぞ!」という表情をしていました。もう何回も優勝を経験している息子でも、親子で決勝に上がりたい気持ちは僕と一緒なんだなというのが分かって率直に嬉しかったですね。
しかし、いつぞやの記事で「人生、欲をかいた瞬間にこそ落とし穴が待っている」という話をした通り、絶対に勝つぞと意気込んでいた僕が息子よりも先に負けてしまいました。
特にプレイミスもなかったですし、やることをきっちりやってその上で負けたので悔いはなかったのですが、負けが決まった瞬間は「親子でギャラクシー決勝」という千載一遇のチャンスを逃してしまったことへの失望感がありました。今まで経験したどんな試合よりも悔しい一戦だった、ということは言えるかもしれません。
息子、悔し泣き
こうなると僕はもう息子を精一杯応援するのみです。
息子、予選からの勢いそのままに素早くプレイを進める。表情からみなぎる自信。カードをさばく手つきからも「今日は俺の日だ」という確信にも近い思いが感じられました。僕ももう直感的に「ああ、これ今日は息子が優勝するな」と思いましたもんね。
しかし、確信と慢心は本当に紙一重。表裏一体のところにあるもので。
彼の「絶対に勝てる」という直感からくるプレイングが思いもよらぬミスを誘発してしまいました。勝ちを確信した息子が最後のプレイを宣言した直後、相手が既に宣言していたあるプレイにようやっと気がつく。このターンで勝ち切るために手札を全て使い切っていた彼にとって、その一つのプレイを見逃していたことは痛恨の極みだったようです。結果そのターンで勝敗はつかず試合は継続し、手札の無い息子はもはや為す術なく次のターンにあえなく敗北。親子でギャラクシー決勝の夢はもちろん、息子の優勝もここで潰えました。
自分のプレイミスに気づいた瞬間の息子の顔が忘れられなくて。
さっきまでの威勢の良さが完全に消え、目の前で起きていることが理解できずに青ざめていました。少しパニックになっていたのかもしれませんね。彼も普段はプレイが抜群に上手いですから、なかなかそういう経験がなかったのだと思います。
お互いに夢破れた後、本当だったら「端っこで3位決定戦でもやるか〜」とのんきに声をかけるところでしたが、もうそれどころではなかったです。息子、ハンカチ顔にあててその場で悔し泣き。
両手で顔を覆う彼に父親としてどんな言葉をかけるべきか、難しかったです。
「気にすんな」っていうのもなんか違う。「次また頑張ろう」っていうのも、ちょっとまだ切り替えが早すぎる気がする。この時ばかりは自分の語彙力の無さを恨みました。息子の肩をポンポン叩いて「悔しいよな」と慰めるのが精一杯でしたね。
僕の30何年の人生を振り返ってみると、本気で悔し涙を流したことってもしかしたら無いかもしれません。シラケ世代というかなんというか、昔から今までもなんとなく惰性で生きてきた人間なので、笑うときも泣くときも全力という感情豊かな息子の生き方が時々羨ましくなります。
帰り道。「勝ててたのになあ」とプレミを悔やみ続ける息子が最後にぼそっと「パパと決勝戦、したかった……」と一言つぶやいたときはさすがの僕もぐっと来てしまいました。悔しいよなあ。この悔しい経験を糧にできるよう、また一緒に練習しような。そしていつか絶対、決勝で会おうぜ。
ひとしきり泣いた後の息子。耳真っ赤です。
息子の涙を見たあるウルトラリーガーの方は、「勝ったときは目いっぱい喜んで、負けたときは『所詮はカードゲームだし』と割り切ればいいんだから」と仰っていました。素晴らしいメンタリティだと思います。
UCGの実力で言えばおそらく割と上のほうの息子も、そういうメンタリティはまだ獲得できていない。勝つことも大事ですが、負けたときの振る舞いにこそその人の「生き方」が表れます。カードゲームを通じて、勝ったり負けたり色々な経験を積み重ねながら彼には人としてもっともっと大きくなっていってほしいな、と。
小学4年生最後の日に流した涙が彼の人生にとって大きな分岐点になるかもしれないことを思うと、息子の悔し涙を目の当たりにできている僕の人生なんて本当に最高なんですよ。もう何も言うことナシです。この子の父親になれて心底良かったと感じておるところです。
今日から小5です。 pic.twitter.com/aWqHfnsZlM
— Ryo (@ryo_nf3000) 2025年4月7日
ちなみにこちらが小学5年生最初の日の息子。うん、ちゃんと切り替えできててパパは安心だ!(笑)