かつてウルトラシリーズでは、怪奇現象の調査や怪獣攻撃を目的とした防衛チーム、科学特捜隊やウルトラ警備隊のメンバーとその周辺の人間模様がドラマの中心でした。
しかし時代の移り変わりと共に、防衛チームそのものが設定されていないシリーズが増えてきています。本格的な防衛チームは『X』のXIO(ジオ)を最後に登場していません。
『オーブ』のビートル隊、『ジード』にもAIBという組織が設定として存在していたものの、あくまで作品の世界観を固めるための脇役に過ぎず、物語の中心に据えられていたのは、主人公とそれに敵対するちょっと癖のあるライバルたち。そして現時点での最新作『R/B』では、怪獣や宇宙人を専門に扱うチームの存在自体がいよいよ描かれなくなりました。
ウルトラシリーズから防衛チームが無くなりつつある要因。一説には、今の子供たちにはミリタリー要素はウケが悪く、戦闘機や基地の玩具が売れなくなっている、隊員の制服や基地のセットに膨大な予算がかかってしまう問題などが言われていますね。
子供の頃、テレビの向こうのウルトラホーク1号やマットアローにワクワクさせられた経験のある特撮オタクとしては、現在の流れは率直に寂しく思います。仕方のないことと理解はしつつも、心のどこかで「いやいや、メカあってのウルトラだろ!」という気持ちが捨てきれない(老害?)。
ウルトラメカは夢の体現者
僕は防衛チー厶そのものよりも、とにかくウルトラに出てくるメカニックが好きなんですよ。ウルトラマンのデザインよりも戦闘機のデザインの方が気になっていた、そんな子供でした。
ウルトラシリーズに登場するメカって、現実世界にあってもギリギリおかしくなさそうな絶妙なリアリティを保っているものが多くて。
例えば、ファンの間で今も高い人気を誇るウルトラホーク1号。戦闘機の分離合体自体はかなり現実離れしているのに、それが空を飛んでいる映像には自然と嘘が感じられないし、こんな飛行機が飛んでいたらいいなと思わせてくれる、なんかこう…夢の体現者という印象があって。その天翔ける姿に、空想特撮シリーズと呼ばれたウルトラ独自の空気を当時の僕はひしひしと感じていた気がします。
平成に入ってからも、『ダイナ』ではウルトラホーク1号をオマージュした分離合体機・ガッツイーグル、これまで以上にリアリティに力点を置きながら六角形型のコンテナにも変形するギミックが楽しい『ガイア』のXIGファイターなど、ウルトラメカの歴史は脈々と受け継がれてきました。
空を見上げると…
ニュージェネ世代の僕の息子も、YouTubeで配信されている『ウルトラマンガイア』のメカニックや、録画で見る『セブン』のウルトラホークに心ときめかせています。今の子供にミリタリー要素がウケないなんて本当なのかなと思ってしまうくらい。
うちの近所には空港があり、飛行機が離着陸するところを間近で見られるスカイパークには親子でよく足を運びます。そこでの息子のテンションの上がりっぷりと言ったらもう。離陸してどんどん小さくなっていく飛行機、散歩中に見上げた空に向かって「おーい!」と手を振る息子の後ろ姿は本当に微笑ましい。
「次はセブンのひこうき来る?」
そんな質問をされて、一瞬どう答えたらいいか分からないなんてことも…
小さな子供が空を見上げたときに感じているであろう、どこまでも続く広大さや世界が無限に広がっていく感覚。僕も子供の頃、電車の窓から見えた空にウルトラホークを脳内合成していました。
「この世ならざるもの」でありながら、現実世界の風景に驚くほど自然に溶け込んでいくのがウルトラメカの大きな魅力で。そういう意味では、『X』に登場したスカイマスケッティには第4話『オール・フォー・ワン』で見せた飛行シーンなどに大きな可能性を感じたのですが、これが今のところウルトラでは最後のスカイメカになっているのは残念です。
タイトルでは「ウルトラホークの再来」と大きく出ましたが、そこまで贅沢は言いません。息子が、自分の目に映る現実世界の飛行機に重ね合わせるのはウルトラホークでも全然いいんだけど、現行のウルトラに出てくる新しいスカイメカだったらもっといいのになと、新作のウルトラをリアルタイムで体験できなかった僕は思うわけです。