僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

息子(小3)と『シン・ウルトラマン』風アングルと

 

 息子が生まれた8年半前からというもの、僕のiPhoneのカメラロールは彼の写真で溢れ返っています。何万枚とか、そんなレベルで。

 

 今更ながら、携帯電話にカメラが実装されたのって本当に世紀の大発明だったんだなあと思わされます。いつでもどこでも、成長していく息子の一挙手一投足を写真に記録できるわけですから。インスタントカメラの時代だった僕らの幼少期であれば、おそらく形に残ることは無かったであろう息子のふいに見せる表情、変なポーズ、ちょっとしたハプニング等々……。容量パンパンでも削除できませんもんね。一度撮ったが最後、という感じ。

 僕、ポケットのiPhoneをサッと取り出す。それを息子にパッと向ける。この一連の動作のまあスムーズなこと。西部劇のガンマンみたいなスピード感です。

 

 で、これだけ息子ばかり撮っていると、「たまには凝った撮り方でもしてみるか」と僕の謎のアーティスティスト魂に火がついてしまい……というのが今日のお話。

 

 

「この辺で大丈夫ー?」

「ごめん、もうちょっと右!右に寄って!」

 

 ある日の、演者(息子)と監督(僕)のやり取り。

 

 

 そう、僕は今、息子を「『シン・ウルトラマン』風のアングル」で撮影するのにハマっているのです。とにかく物越しで、変な角度から、人間を撮る。これがめちゃくちゃ癖になる。

 

 

 

 

 「『シン・ウルトラマン』風アングル」とは、極端な「なめ」の構図、物越しから人物を撮ったり、画面を傾けた明らかにいつもとは違う構図のことを指します。

 原典は、初代『ウルトラマン』で監督を務めた実相寺昭雄監督によるいわゆる「実相寺アングル」。その個性的な演出技法は、庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』、樋口真嗣監督の『シン・ウルトラマン』でも原典へのオマージュとして数多く引用されています。

 「特撮オタクにカメラを持たせたら、まず最初にやる遊びがこの『実相寺アングル』だ」なんてことも言われてますよね。それくらい、幼少期からウルトラで育った人間にとっては刷り込まれてるんですよ、この変なアングルが。カメラを持つ手が斜めに上下にと本能で勝手に動いてる。

 

 この「実相寺アングル」の凄さは、素人の僕でもそれを真似しようとするだけで写真が自然と「アーティストみ」を帯びてくることです。

 何の意味もなく斜めに撮ったり物越しに撮ったりするだけで、そこに何かしらのドラマ性が生まれているような気がしてくる。

 ほら、息子がキディランドのポケモンパッドで遊んでいるこの写真も、こうやって物越しの構図になっているだけでなんとな〜く意味ありげなものに見えてきませんか?

 こういう遊び方を一つ覚えると、息子と外に出かける時間がまた一段と楽しくなるんですよねえ。息子は僕の意図を理解して前のめりになって付き合ってくれるときもあれば、「はいはい、言われた通りやりゃいいんでしょ」と言わんばかりの表情でうざったそうにしているときもあり。そのときはまあ、「また何か買ってやるから頼むよ」って僕からお願いして(笑)。

 

 

 

 ただ実際にやってみて思ったのは、『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』の「実相寺アングル」を真似たシャープな画というのは、カメラマンがもっともっと極端な位置取りをして、構図もちゃんと計算して撮らないときちんと再現できないということです。簡単そうに見えて意外と難しい。

 そう言えば『シン・ウルトラマン』のBlu-rayに収録されていたメイキング映像でも、樋口監督がiPhoneを使って色んな画角を試すところが映っていて。あのカットはそういう遊び心から生まれていたのかという驚きと、自分もちょっと真似してみたいなというクリエイティビティが刺激されるとても興味深いメイキングでした。改めて、原典である実相寺監督の演出が当時の視聴者とその後のクリエイターたちに与えた影響力は計り知れないなと感じた次第です。

 

 『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』は、今小3の息子が大人になってからも特撮ファンのマスターピースとして残っていく作品だと思います。

 果たしてそのときに、庵野監督や樋口監督の実相寺アングル風カットがどんな風に語り継がれていくのか。また同じように次世代のクリエイターたちにも「お馴染みの演出」として引き継がれていくのか。撮影技術の進歩や新しい発想によって更なる進化を見せていくのか。一特撮ファンとして楽しみに待ちたいと思います。

 まあそれはそれとして、僕のiPhoneに溜まっていく息子の写真がどんどん「『シン・ウルトラマン』風」にばかりなっていくのは成長の記録として一体どうなんだと思わなくもないのですが……。そのうち嫁さんに「普通に撮れ」って怒られそう。