息子の保育園で今大ブームなのが、ポケモンパンの付録についてくる通称「デコキャラシール」。
ポケモンパン。僕も小学生の頃に必死になって食べていました。
もちろん、目的はパンではなく「デコキャラシール」のほう。集めたシールを下敷きに貼って、毎日のようにクラスメイトと「○○のシール持ってる?」なんてトレードの交渉をしていたことを思い出します。
この「デコキャラシール」は「貼ったらおしまい」の普通のシールとは違い、一度貼り付けても簡単に剥がせる仕様になっているのがポイント。なので、色々なところに貼っては剥がしを繰り返せるのが子供心に凄く楽しくて。
教室の机の上をポケモンで埋め尽くして先生に怒られたり、あまりのブームに学校から「ポケモンシール禁止令」が出たりもしました。息子はこのシールを保育園に持っていくコップに貼って、友達と見せ合いっこしたり交換したりして遊んでいるようです。
僕も自分が子供の頃の記憶を掘り起こしつつ、シールのためにポケモンパンをはむはむ食べる息子を微笑ましく見ているのですが、最近ちょっと父親として心配になる出来事がありまして……
消えたポケモンのシール
トップの写真にあるように、デコキャラシールにはポケモンの絵柄のシールとは別に名前のシールがついています。
ある日、保育園を終えて息子が持って帰ってきたいつものコップ。その日の朝まで所狭しと貼られていたポケモンのシールが、ほとんどこの名前のシールに替わっていました。
僕も昔集めていたから分かるのですが…というか普通に考えて、ポケモンの絵柄のシールより名前のシールが欲しい子供なんてまずいない、と思います。
「まさかいじめでも受けているんじゃ…」と一気に僕の心配ゲージがピークに達してしまったのですが、息子にそれが伝わるといけません。心の中で一度深呼吸した後、いつもの感じで息子に「あれ、コップに貼ってあったポケモンのシールは?」と訊いてみました。
すると息子も、これまたいつもの感じで「保育園のお友だちにあげたよー」と一言。いやいや…あんなに一生懸命パンを食べて集めたシールをそんな簡単に…?このびっしり貼ってある名前のシールは…?正直、問い質したいことだらけでした。
逆に不安な「いつも通り」
嫁さんによると、保育園の友達にポケモンの絵柄のシールと名前のシールの交換を持ち掛けられ、うっかりそれに乗っかってしまったというのが真相でした。
息子自身はショックを受けた風でもなく、いつも通りケロッとしていて。
でも、僕も子供の頃に学校で嫌なことがあったとき、それを親に悟られないように平静を装っていた記憶があります。だから息子の「いつも通り」な様子には逆に不安を駆り立てられました。
少なくとも、息子が友達に向かってはっきり「嫌だ」となかなか言えない性格であることは間違いなさそうです。僕もそうだったから、何が起きているのかだいたい分かります。
ポケモンパンのシールの話だと、最初は単にそれぞれの持っているシールを見せ合って楽しいというだけだったのが、いつの間にか「どのポケモンを持っているか」「どれくらいの量を持っているか」で同じグループの中にも序列みたいなものが出来ていく、みたいなことが僕の頃にもありました。
シールの交換にしても、積極的に持ち掛けられる子とそうでない子にどうしても分かれます。そこで、友達同士の関係のバランスを取るための損得が生まれてしまう。
意思表示の仕方
一応、僕から息子に「嫌なときははっきり『いや!』って言ってもいいんやで」と一言言ってはおきました。
まあでも、それで済むなら世の中にあるややこしい人間関係はほとんど簡単に解決出来てしまいます。言いたいけど言えない、息子も5歳にしてそういう状況にぶち当たってるのかと思うと父親として胸が締め付けられる思いです。
嫁さんは、息子の状況を理解しつつも割とキツめに叱ったようで、それもまた一つの方法ではあります。シールがどうこうというよりも息子のこれからの生き方にさえ大きく関わる問題ですから、むしろバシッと叱るほうが効果的かもしれません。
一番簡単な解決方法は「ポケモンのシールを保育園へ持って行かせない」ことなのですが、それをやると今度は「シールを持っていない」ことでまた新しい問題が生まれてくるでしょう。どちらかというとそっちのほうが息子を更に可哀想な状況へ追いやってしまいそうな気がします。大人から見ればたかがシールでも、子供にとっては大切なコミュニケーションツールの一つでしょうからね。
僕、子供の頃からお人好し…というか、元々自己肯定感があまり高いほうではなく、何でも取りあえず許したり、「いいよー」と表面上だけでも受け入れることでしか自分の存在を認めてもらえないような気がずっとしていたんです。ポケモンパンのシールも、心の中で「嫌だなぁ」と思いつつ空気を読んで交換したこと、何度もありました。
息子には、僕と同じ思いをして欲しくない。
我がままとは違う「自分の意思表示」の仕方を身につけて欲しいのです。その為に、今の自分に何が出来るかを考えています。僕みたいに大人になってからその大切さに気付いたのではもう遅いと思うので。