僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

僕も思わず頷いてしまったウルトラマントレギアの鋭い指摘について

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「二言目には 絆 絆 うるさいんだよ。地球人風情に何が出来る?」

 

(『ウルトラマンタイガ』第15話「キミの声が聞こえない」より)

 『ウルトラマンタイガ』は後半戦に入り、恐らくラスボスになるであろう闇のウルトラマン・トレギアの出番がかなり増えてきました。

 第15話『キミの声が聞こえない』では、これまでヒロユキとタイガが怪獣を倒すたびに手に入れていた指輪が、実はトレギアによる罠だったことが判明。バディとして共に行動してきた2人の分離と、闇に飲み込まれて戦闘不能に陥ってしまったタイガのピンチがなかなかの絶望感で描かれており見応えたっぷりでした。かっこいいヒーローの「成す術も無く敗れる姿」は嫌でも盛り上がる。こういうの大好きです、僕。

 中でも「おっ」と思ったのが上の台詞。トレギアって『ルーブ』の映画に出てきたときから結構鋭いことを言うやつだなと思っていましたが、今回のそれは「これまでのウルトラシリーズが築いてきたヒーロー像」に真正面からとどめを刺してきたような内容でした。

 個人的には、「よくぞ言ってくれました」なんです。やっとここを指摘してくる悪役が出てきてくれたか、と。

 

 

 

 

金パターンの確立

 最近のウルトラマン、「絆」という言葉が水戸黄門で言うところの印籠のように扱われている部分が少なからずあったように感じます。オーブは「絆の力をお借り」していたし、ルーブも「絆のクリスタル」をセレクトしていた。その間のジードでも、劇場版の主題歌のタイトルがズバリ「絆」でした。

 ウルトラマンが怪獣や宇宙人をやっつける物語を作るときに、ただ強いヒーローが悪いやつを倒すだけではそこに感情的なものが一切生まれてこない。ピンチに陥ったウルトラマンと、視聴者がごく自然に感情移入できる「人間たち」との関係性をドラマに組み込むことで、単純なストーリーの中に見る側の感情を揺さぶる変化を加えることに成功していました。ある種の黄金パターンを確立していたのです。

 ただそれも、何度か繰り返すことで次第に新鮮味が薄れてきていた感があって。

 ウルトラマンで最初にそのパターンをやったのは、僕の知る限りでは『ティガ』の最終回だったと思います。邪神ガタノゾーアに敗れ石像と化してしまったティガを復活させたのは、世界中の子供たちの「光」だったという熱い展開。放送から22年が経過した今なお傑作として語り継がれている伝説の最終回ですね。

供番組としてのロジック

 ただこれにも批判が無かったわけではなくて、「GUTSの隊員たちの努力が無になった直後に、『子供たちの光』という抽象的なものに頼って物語を完結させるのはいかがなものか」「宗教的だ」との声が当時からあったそうです。

 僕は『ティガ』の最終回には文句なしに感動した側の人間ですが、批判的な声が出てくるのも凄く分かります。というのも、その後の『劇場版ティガ&ダイナ』でも、人間たちの光がウルトラマンを復活させる同じ展開をなぞっていたんですね。大好きな映画ではあるんですけど、最後のそれには「さすがに2回目はどうなの?」とツッコミを入れてしまいました。

 『ティガ』で描かれた「光」って、今のウルトラマンでいう「絆」にそっくりそのまま置き換えることが出来ますよね?つまりその…ウルトラマンがどうして絶体絶命のピンチから復活を果たせたのか、ロジックが曖昧なままでは子供が見る番組としてもあまり良くないと思うわけです。一緒に見ている息子から「なんでウルトラマンは勝てたの?」と仮に訊かれたとして、親の僕が曖昧にしか答えられなかったら困りますしね。

 みんなの声援のおかげで…仲間たちとの絆が…みたいなのは、子供たちが直接見に来るヒーローショーとかならいくらでもやればいいと思うんですけど、映画やテレビでやるのはもう少し慎重に、というのが僕の正直な意見です。

 人間誰しもがアントニオ猪木みたいに「元気があれば何でも出来る」わけじゃないですよね。不可能なこともあれば、届かない思いもある。ウルトラマンも同じように、光や絆で何もかも解決しちゃったら駄目だと思うんです。最後のその部分を見ている側に「なるほど」と思わせてこその映画なりテレビドラマでしょうよ、と。

 

 

 

 

レギアの先に見えるもの

 「絆」や「夢」って凄く綺麗な言葉ですから、特にこういう勧善懲悪のヒーローものには打ってつけなんだろうと思います。物語を作る上での制約が(おそらく)数多くある中で、何をやってもそこに行き着いてしまう側面も否定出来ないところがあります。

 ただ、確かに最近のウルトラマンはトレギアの言うように「二言目には絆絆うるさい」かもしれないけど、決して面白くないわけではないです。『ルーブ』の映画では「絆」や「夢」の美しいだけではない側面もちゃんと描かれていました。そういう意味では、平成の終わりと共にウルトラマンも新しい時代を迎えつつあるのかもしれません。

 次回の『タイガ』では、おもちゃのCMで壮大にネタバレしていたタイガの新しいフォームが登場しますね。トレギアの鋭い指摘の後にどんな経緯でパワーアップを果たしていくのか、見ものです。

 そして光の国出身の「正真正銘のウルトラマン」であるトレギアが、ウルトラマンの抱える矛盾を突いたその先に見えるものとは―。今年の年末まで、土曜日の朝はテレビから離れられそうにありません。