僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

~再利用(reuse)ではなく再生(reborn)を~ウルトラ怪獣のこれから

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 息子と一緒にウルトラ怪獣図鑑を眺めていると、彼の言葉に時々ハッとさせられることがあります。

 「エレキングって『セブン』にも出てたんやなー」

 え?いや、エレキングって元々ウルトラセブンに出てきた怪獣なんだけど。

 …あ、そうか。この子にとっての最初のエレキングは『ジード』の第4話に出てきたあのエレキングなのか。だからこの図鑑に載っているちょっとぶかぶかな着ぐるみのエレキングは、息子から見たら「いつもの」エレキングじゃないわけだ。

 全国のウルトラにハマるちびっ子たちも、息子と同じような感覚で怪獣図鑑を見ているのだろうか?これって、時代を越えて活躍するウルトラ怪獣の普遍的な魅力を証明する一つの事象なのではないかと思うのです。

 そこで今回は、ウルトラ新世代である我が息子がニュージェネシリーズを通してどのように怪獣の魅力に触れているか、歴代の傑作怪獣たちがいかにして再生を果たしていったのか、その辺りを語ってみたいと思います。

 

 

 

 

の頃の驚きを今も求めている

 『ギンガ』から始まったウルトラマン・ニュージェネレーションシリーズでは、エレキングやキングジョー、レッドキングといった歴代の名怪獣たちがそれぞれの世界観を飛び越えて度々登場します。それは恐らく、新規の怪獣を毎回作ることが予算的に厳しいという大人の事情が大きな理由で。だから僕たち大人が大人の目線で見たときに、どうしても「あ、また着ぐるみ使い回してる」というネガティブな感想に繋がってしまう。

 やっぱり、我々は新規の怪獣が見たいわけです。そもそも、ウルトラシリーズの原点である『ウルトラQ』ではウルトラマンのようなヒーローは登場せず、番組の主役は怪獣たちでした。これまでは映画館でしか見ることのできなかった怪獣たちをテレビで、しかも毎週のように見ることができる。『ウルトラQ』という番組の最大の売りはそこにあったのです。

 初期の平成ウルトラマンや僕が子供の頃に見ていた『電光超人グリッドマン』にも、当たり前のように毎週新怪獣が登場していました。僕もやはり心のどこかで、あの頃の新鮮な驚きを求め続けている部分があります。

 だから今のウルトラシリーズを見ていて、新規の怪獣が登場するとそれだけでテンションが2~3割くらいアップしてしまう。ウルトラの新たな歴史の証人になった高揚感で胸がいっぱいになるわけです。

利用(reuse)ではなく再生(reborn)である

 作っている側も、僕のような面倒なオタクに対するフォローは相当に意識しているのでしょう。実質的には着ぐるみの再利用であっても、ドラマの部分で歴代の怪獣の新たな魅力を発掘しようという意図を感じられるのがニュージェネシリーズの特色でもあります。

 例えば『オーブ』の『地図にないカフェ』という回では、『ウルトラマンレオ』に登場したノーバという円盤生物が再登場します。真っ赤なてるてる坊主という、見た目のインパクト抜群の名怪獣。

ウルトラ怪獣シリーズ 90 ノーバ

 改めて見るとやっぱり凄いデザイン(笑)。

 原典である『レオ』では、ブラックスターの操る凶悪な円盤生物という側面が強かったこの怪獣。『オーブ』では大枠の設定を受け継ぎつつも、「地球侵略という夢を諦めかけていたブラック司令と、その夢を一途に追い続けるノーバ」という新しい関係性を提示してきました。

 平成ウルトラではお馴染みのゲスト俳優・赤星昇一郎さん演じる、どこか哀愁をおびたブラック司令にノーバの奇抜なデザインを生かしたコミカルな演出が噛み合い、視聴者側が赤いてるてる坊主にすんなりと感情移入出来てしまう。まさかあのノーバが、本家のウルトラでこれほど愛すべきキャラクターへ変身するとは夢にも思いませんでした。

 『オーブ』では、こちらも『レオ』のババルウ星人が登場する『ニセモノのブルース』 でも、過去のキャラクターを現代に通ずるテーマで包み込み見事に再生させていましたね。ババルウ星人なんて、ほんのちょっと前までは結構マイナーなウルトラ怪獣の一体だったのに、分からないものです。

 現在放送中の『ウルトラマン・ニュージェネレーションクロニクル』でナビゲーターを務めているペガやブースカにも同じことが言えますね(ブースカは厳密に言うとウルトラ怪獣ではありませんが)。ペガッサ星人にあんなマスコットキャラ適性があったなんて、発見ですよ本当に。それに2014年生まれの僕の息子がブースカブースカ言ってる光景を見ていると、感慨深いと言いますか、特撮ファン的にも不思議な気持ちにさせられます。

 いずれの怪獣も、それぞれのバックボーンや関係性に新しい解釈を加えてドラマの中に落とし込むことで、過去の作品とのつながりを維持しながら潜在していた魅力を浮かび上がらせることに成功しています。ウルトラの強みである、歴史の長さとスケールの大きな世界観という部分を勿体ぶらずに生かしているな、と。

つの時代も、男の子は怪獣が好き

 息子は怪獣図鑑を指さしながら、「これルーブに出てくるかなー?」とか「あー!ジードに出てきたやつや!」みたいな感じで、新旧関係なく目の前に広がるウルトラワールドへ思いを馳せています。何年も前の作品に登場した怪獣の写真を図鑑で確認してから、最新作の映像で新たな魅力を発見する。なんて新しい楽しみ方なんだ。

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 別に喧嘩しようというわけではないのですが、ウルトラシリーズが今後ライダーシリーズやスーパー戦隊に何をもって対抗していくのかは、特撮ファンとして興味深いところです。

 今のところ「ウルトラ派」な息子のハマり方を見ていると、やはり歴代のウルトラ怪獣の力はお借りしなければならないと思いますね。今でも出先で、ウルトラ怪獣のソフビを持った息子を見て「あ、レッドキングだ!」と声をかけてくる子とか結構いますから。やっぱり男の子って、いつの時代も怪獣好きなんです。

 だからこそ、先述したように新しい怪獣をどんどん見たいという気持ちもあるのですが。でも、ゴモラとかレッドキングって、もう古典みたいなものですよね。今更ティラノサウルスを越える恐竜なんて多分見つからない。ならばそこにどんな味付けをしていくか、という方向性を探るのは必然なのだろうと。

 願わくば、ウルトラ怪獣にはこれからも、僕たちオタクも唸るような新しい味付けを見せて欲しいものです。同じ怪獣でも、僕と息子ではそれにまつわる思い出やエピソードが全然違うなんて面白いじゃないですか。世代を越えてその違いを楽しむことができるウルトラ怪獣を、これからも親子で応援したいと思います。