今更ですが『ウルトラマンデッカー』第5話「湖の食いしん坊」は、なかなかいいお話でした。
エレキング。僕も子供の頃から大好きな怪獣の一体です。
今回登場したエレキングは着ぐるみの出来もかなり良くて、『ウルトラセブン』の第3話「湖のひみつ」に登場したあの “初代エレキング” により近い造形になっていました。
CGでもない手作りの着ぐるみで、よくあんなそっくりに作れるよなあと毎度のことながら。番組を通して円谷プロの「職人の技」が見られるのはやっぱり嬉しいもんです。
肘の出っ張りや、腰回りのブカブカした感じ、顔も今まで見たエレキングの中では一番初代に似ていた気がする。
見た目はあまり凶悪な怪獣っぽくない。しかし一度暴れ出すと、「電気を食べる怪獣」というだけあって、あっちこっちにとてつもないエネルギーを放出してしまう。そうそう、エレキングはこうでなくっちゃね。
ただ、そんな僕にとっての「理想のエレキング」が、『デッカー』の今風にリファインされたストーリーの中でちょっとだけ許しがたい存在になっていて.....というのが今日のお話。
「ギャップ」という魅力
何が許せなかったって、とにかくかわいくて仕方なかったんです、エレキングが。
飼い主がとる、素っ頓狂なポーズを一つひとつ真似するシーンがあったでしょ。あれ、僕と息子だけじゃなくて、ちょっと離れてテレビを見ていた嫁さんまで「かわいい〜」とニコニコしていたくらいで。
エレキングの魅力って、一言で言うなら「ギャップ」だと思うんです。怪獣のくせに見た目はちょっと愛らしくもある。その間にあるギャップ。
湖から突如出現し発電所を襲った巨大怪獣が、実はピット星人に可愛がられているだけのペットだった。今回のエレキングは、そのギャップを惜しげもなく見せつけてくれました。
あんな風にポーズまで取られちゃうと、普段はウルトラマンの怪獣なんて気にも留めていない僕の嫁さんまで思わず「かわいい〜」と口にしてしまう。改めて、エレキングって凄い怪獣なんだなあ、と。
エレキングの「あざとさ」
「じゃあそれでいいじゃん、お前は何が許せないんだ?」って話なんですけどね。
僕の目には、あのポーズをとるエレキングがちょっと「あざとく」見えてしまったんですよ。
もう、自分の魅力が「怪獣ならではのギャップ」であることに、エレキング自身が気づいてしまっている(ように僕には見えた)。
気づいた上であれをやっていると思うと、「視聴者が『かわいい~』ってなるの、完全に分かってるだろこいつ.....!」って、怪獣に対してなんとも言えない変な感情が生まれてきちゃって。
僕が子供の頃から見てきたエレキングは、セブンのアイスラッガーに首をスパーンと切り落とされるあのイメージです。地球人にとって、明確な敵としての怪獣。
初代エレキングは侵略者としてのピット星人に従順で、その従順さが愛らしい見た目とのギャップを生んでいました。でもそこに「あざとさ」までは感じなかった。
今回のエレキングは、ピット星人のペットだと判明する過程にあのポーズを真似するくだりがありました。で、それが怪獣らしからぬかわいさだ、と。絶対、本人(本獣?)も分かってやってたと思うんですよね。「怪獣なのにこんなにかわいいポーズ取れちゃうぜ、俺」って。
デッカー相手にも一瞬だけポーズを取り合うくだりがありましたよね。確かにかわいかったけど、直後の反撃も含めてあれもめちゃくちゃあざとかったぞ!
宇宙人や怪獣にも色々ある
今回のエレキングの立ち位置は、宇宙旅行中に円盤が故障して地球に不時着したピット星人の「旅のお供」ということでした。
ピット星人にも、我々人間と同じように良いヤツもいれば悪いヤツもいる。エレキングを使って地球を侵略しようと企む者もいれば、そういう意図はなく、単に宇宙旅行を楽しんでいる者もいる、というわけですね。
宇宙人や怪獣の存在を通して、現実世界の「みんな色々あるよね」を極々自然に描こうとする今のウルトラシリーズの姿勢は、個人的にとても好感度が高いです。息子と一緒に見ながら、ディスカッションの機会にもなりますし。
今回も、「あざといエレキング」を中心に、デッカーの新形態やイチカのキャラクターを描ききったシナリオ・演出は実に見事でした。『デッカー』は初回から本当に堅実な作りで頑張ってますね。
息子がまだ3歳くらいの頃に買ったエレキングのソフビ。長いこと遊ばれて結構ボロボロですけど、今見るとそのキズ一つひとつにもまた愛着が湧いてくるから不思議です。ほら、やっぱりエレキングはあざとい。
もうエレキングは、僕の中で「あざとさ」が魅力の新しいウルトラ怪獣に生まれ変わった気がします。ちょっと悔しいけど。