僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

『シン・ウルトラマン』という名の「FA選手」を僕たちはどう受け入れるのか

 

 少し話題に乗り遅れてしまった感はありますが、庵野秀明企画・脚本による『シン・ウルトラマン』製作決定のニュースは衝撃的でした。

 

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 『シン・ゴジラ』が決まったときも、「庵野監督が『ゴジラ』を撮る」日がついにやって来たんだと一端の特撮ファンとして長年の夢が叶ったような充実感でいっぱいだったことを思い出します。その後の大ヒットに関してはここで言うまでもなく。一時期はその存在自体が消えて無くなってしまうのではと言われていた「巨大特撮」のジャンルに、見事に復活の息吹を与えてくれたのは記憶に新しいところでしょう。

 で、今回の『シン・ウルトラマン』です。

 驚いたのは、長年に渡って円谷プロと関係の途絶えていた東宝とのタッグが実現するということ。明らかに『シン・ゴジラ』からの流れをくむ作品で、これはもう、歴史的な作品になる予感が。ほとんどの特撮ファンの方が、これで人生思い残すことはないってくらいの心境でぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでると思うんです。

 しかし今回は、「いや、それはそうとして」という話を。

 

 

 

 

ルトラマン再解釈の歴史

 円谷プロの公式サイトによると『シン・ウルトラマン』は初代ウルトラマンをベースにした作品になるとのこと。『シン・ゴジラ』に、初代ゴジラの現代風解釈とも言うべき趣が含まれていたのと同じように、『シン・ウルトラマン』も初代ウルトラマンの現代風リメイクになりそうです。

 初代マンの再解釈と言って特撮ファンがまず思い浮かべるのは、2004年に公開された映画『ULTRAMAN』ではないでしょうか。

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 『ウルトラマン』の第1話「ウルトラ作戦第一号」をベースに、ウルトラマンというキャラクターを再分解して大人の鑑賞にも耐え得るようリアルに描写した意欲作でした。いわゆる「板野サーカス」によってウルトラマンが縦横無尽に空を飛び回るシークエンスを、映画館の巨大なスクリーンで目の当たりにしたときのあの新鮮な驚きは今も忘れられません。

 

 漫画版『ULTRAMAN』ではその分解の度合いが更に強まり、ウルトラマンは地球を守る宇宙人から特別な人間だけが身に着けられる強化スーツへ変貌を遂げました。そのデザインは、「ウルトラマンだけどウルトラマンじゃない」ギリギリのラインを狙った挑戦的なもので。

ULTRAMAN1(ヒーローズコミックス)

ULTRAMAN1(ヒーローズコミックス)

 

 

 また、ウルトラマンを「超古代の巨人」として設定し直した平成ウルトラマンの第1作『ウルトラマンティガ』も、広い意味ではウルトラマンを再解釈した作品と言えますね。

 ゴジラシリーズと決定的に違うのは、ウルトラマンは定期的に訪れた再解釈の機会でそれなりの成功を収めているという点です。

 映画『ULTRAMAN』は興行的には大失敗だったようですが、先述した板野サーカスや自衛隊協力の元撮影されたF-15の出撃シーンなどクオリティは非常に高く、今なおファンの間で名作として語り継がれています。漫画版『ULTRAMAN』はNetfrixでアニメ化もされシーズン2の配信も決定。『ティガ』の人気は言うまでもなく、ですね。

 これらの歴史を踏まえた上で、『シン・ウルトラマン』が同じようなウルトラマンの再解釈のみに終始するとは僕にはちょっと思えなくて。庵野監督のことだから、もっと僕らが想像もしないようなアプローチを仕掛けてくるんじゃないかと期待しています。

 

 

 

 

「生え抜き」も大事にして欲しい

 ゴジラとウルトラの違いで言うと、ウルトラマンはテレビでシリーズが継続中であることも大きいです。

 息子と一緒に『タイガ』を毎週楽しみにしている身からすると、ここはかなりデリケートな問題になりそうな予感がしているんですよ。世間的な認知度で言えば、テレビ東京系で放送されている今のウルトラシリーズよりも断然「庵野秀明」でしょう。つまりその、『シン・ウルトラマン』の登場によって、今頑張っているウルトラマンたちの存在が霞んでしまいやしないかと。

 例えばプロ野球でよく見かける光景……球団生え抜きの選手が頑張っているところに、急に他所からFAで大物選手がやって来て、元々いた選手たちの存在感が薄くなっちゃうみたいな。もちろん、生え抜きであろうがFAであろうが実力のある選手が目立つのは当然のことなんですが、ファンの心理ってそんな単純なものじゃないわけで。

 僕はこのブログでも書いてきた通り、『ギンガ』からスタートした現在のニュージェネレーションシリーズには自分の人生も重ね合わして語りたいくらいの強い愛着を持っています。

 彼らは更地同然の場所からスタートせざる得えない状況で、一から今の人気を積み上げてきた。円谷プロが時間をかけて育ててきた、ウルトラマン文化復活の大功労者だと言ってもいいと思うんです。そんな「生え抜き選手」を、円谷プロにはこれからもどうか大切に扱ってもらいたい。

 庵野秀明&樋口真嗣の最強コンビ、東宝とのタッグ。『シン・ウルトラマン』は、製作予算も宣伝費も現行のシリーズとは比べ物にならないほど大きなものになるはずです。ウルトラマンというコンテンツにとって人気拡大のこれ以上ないチャンスだからこそ、映画のヒットがテレビのウルトラマンの認知拡大につながる流れを是非作って欲しいな、と。

 いや、まあだからと言って別宇宙からやってきたウルトラマンゼロを庵野演出で見たいとか、そういうわけではないのですが(実はちょっと見たいかも 笑)。