何の予定もない休日。その日にしか出来ない「特別なこと」をしてみたくなること、ありませんか?
朝起きる。諸々の支度を終える。家族に「いってらっしゃい」をする。さあ、僕だけの特別な休日はここからが本番。
パッと部屋を見渡して目に留まったもの。この間Amazonで注文して一度封を開けた後、今の今までデスクのオブジェと化していた「シン・ウルトラマン音楽集」。
CDをコンポに入れて聴くなんて一体何年ぶりだろう。しかも作業中のBGMとかではなく、身を入れて「鑑賞」しようだなんて。今の時代、もうそれ自体が「特別なこと」になってしまっている。
今日はこれをじっくりと、そして「しっとり」と聴いていくことにしよう。
どうして「しっとり」かと言うと、その日がしとしと雨の降る湿気の多い日だったからですね。部屋にこもって音楽を「しっとり」楽しむには絶好の「シン・ウルトラマン日和」だった、というわけです。
CDとの再会
『シン・ウルトラマン』のサウンドトラック自体はCDが発売される前にサブスクで解禁されていたので、もうたっぷり聴き込んではいました。
プラスチックケースを開けてディスクを取り出す。コンポの使い方が分からず一瞬焦るも、そこは青春時代の記憶を手繰り寄せながらなんとか再生までこぎつける。ちなみにコンポは僕ではなく嫁さんの所有物。壊さなくて良かったあ。
さあ、初めてCDで聴く「シン・ウルトラマン音楽集」。
音が流れ始めるまでにほんの少しだけ「ツー」みたいな空白がある。ああ、そう言えばこうだったなあCDって。この一瞬で「さあ聴くぞ…」という気持ちにさせてくれる。
#1は「メインタイトル ウルトラマンOP」。「ドン、カーッ!」で始まる空想特撮シリーズへの入り口から既に、やっぱりスマホで聴くのとは全く違う音質で驚きました。凄いじゃんかCD。
なんと言いうかこう……音が立体的で奥行きがあるというか、部屋全体に音が行き渡って自分の耳に届いているような感覚、とでも言えばいいのでしょうか。「今、俺は音楽を『鑑賞』している……!」この充実感ですよ。
そして間髪入れずに#3の「ウルトラQ テーマ曲」。やばい、もう今からでも映画館に『シン・ウルトラマン』をもう一度見に行きたい。
宮内國郎楽曲の凄さ
モノラルで収録されている宮内國郎さんの劇伴。目を閉じて、『シン・ウルトラマン』の映像を思い浮かべながらかなりのハイテンションで聴けました。どれも勇ましくて本当にかっこいい。
でも、過去の傑作を評する際によく用いる、「56年も前の音楽とは思えない」というような印象ではないんですよ。
そこに「古さ」を全く感じないかと言えば嘘になる。なんなら間違いなく古臭くはある。宮内楽曲の凄さは、その古さが「ダサさ」に直結していないところだと僕は思っていて。
言ってみれば、「心地のいい古さ」。昭和レトロの旨味成分がぎっしりと詰め込まれたような旋律が、現代人の僕の耳にも意外なほどすんなりと入ってくるんですね。
特に#27の「遊星から来た兄弟 勝利」など、「ロンドンオーケストラによる」とクレジットされている楽曲に関しては是非CDで聴くことをおすすめします。音の奥行き(この表現しか出てこない)がスマホやパソコンで聴くのとは全然違いますから。
改めて、初代『ウルトラマン』ってとんでもない作品だったんだなあ、と。
窓の外はしとしと雨…
で、これら宮内さんの楽曲と、後半の鷺巣詩郎さんの楽曲が同じアルバムの中で水と油みたいに分離していないのも何気に凄くて。
鷺巣さんの楽曲を聴いていても、別に宮内さんに寄せて作った感じは全くしないのに、どういうわけか全体的に調和が取れている。プロの作曲家の耳ってどうなっているんだろうと本気で思ってしまいました。
#32の「An Out of Body State〈体外離脱〉」。映画ではメフィラスとウルトラマンの対決のシーンで使われていた曲ですね。息子がこれを何度も繰り返し聴いて、自分の口で再現することに情熱を傾けていた時期がありました(笑)。
僕のお気に入りは#31「Univers reels et irreels〈現実と非現実〉」。ロケ地の公園が聖地化したと言われている、山本耕史と斎藤工がブランコに乗って会話するシーンで使われていた曲です。
これ、「癒やし系ブーム」で爆発的にヒットした坂本龍一の「energy flow」っていうピアノのインスト曲にちょっとテイストが似ている気がしました。
遠くの景色を眺めながら物思いに耽るにはぴったりの、日常にそっと寄り添ってくれるまさに「癒やし」の曲。
癒やしの旋律に魅せられつつ、窓の外はしとしと雨。
僕も部屋でひとり音楽鑑賞だなんて慣れないことをしていたら、段々背中がムズ痒くなってきたんですけれども。
その日の雨音は、僕に「もう少し『特別な休日』を楽しんだらどうだ?」と語りかけてくれていたのでしょうか。おかげで「シン・ウルトラマン音楽集」、しっとりと楽しむことが出来ました。また今度、好きな音楽はCDを買ってちゃんと聴いてみようかなあ。