僕が僕であること(仮)

ウルトラマンが大好きな9歳の息子とのウルトラ備忘録です。

プロ野球の魅力を体現した男・鳥谷敬について語らせて欲しい。

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 僕はプロ野球・阪神タイガースのファンです。

 僕の阪神への思いはこちらの記事にも綴っておりますので、興味のある方は是非。ちょうど特撮から離れていた時期に阪神にのめり込んでいた感じで。子供が出来てから観戦する回数は減りましたが、もちろん今も阪神のことは大好きです。

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 先日、阪神一筋16年のベテラン、鳥谷敬選手が今シーズン限りでタイガースのユニフォームを脱ぐことを表明しました。契約最終年の成績不振を受けたフロントとの会談で、球団社長から「引退してくれないか」という言葉をかけられたことも明かしており、生え抜きのベテラン選手に対するあまりの配慮の無さに多くの阪神ファンは怒っています。当然、僕も怒ってます。

 僕の推しはこちらも同じくベテランの能見篤史投手なのですが、鳥谷敬という選手は阪神ファンにとって推すとか推さないとか以前に「いるのが当たり前」だったまさにタイガースの象徴のような選手なんですよ。だからこそ、思いを残さずにはいられなくて。

 

算2000本安打達成の感動

 2017年の鳥谷選手の通算2000本安打達成は、近年の阪神の中で最も感動的だったシーンの一つと言ってもいいのではないでしょうか。何せ、鳥谷選手以前に阪神の生え抜き野手で2000本安打を達成したのは1983年の藤田平選手ただ一人。あのミスタータイガース、掛布雅之選手も2000本安打は達成していないのです。

 鳥谷選手がデビューしたのは2004年で、ちょうど僕がプロ野球を見始めた頃と重なるんですね。

 早稲田大学卒の大型ルーキーとして鳴り物入りで入団した鳥谷選手のプロ初ヒット、確か東京ドームだったと思うのですが、「阪神の新しい歴史が始まった」という感じが凄くしたのを覚えています。そこから翌年にはショートのレギュラーを掴み優勝に貢献。代打・代走・守備固めも送られないフルイニング出場を長年に渡って続け、チームリーダーとして“鉄人”の称号を金本知憲選手から引き継ぐ活躍を見せたのは言うまでもありません。

 よく考えてみたらプロに入って最初の1本から通算2000本まで、球場でテレビでラジオで、全部見てるんですよ僕。だから感動の度合いが他の選手と全然違って、「あの細かった鳥谷がこんな立派になって…」と親戚のおやじみたいな気持ち(笑)。同じような阪神ファンの人、多いはずです。

があってもそこにある

 プロ野球の一番の魅力って、「いつもそこにあること」だと思うんです。

 開幕から約半年間に渡って、毎日のようにどこかで試合が行われていて。その長い期間故に、球場周辺の賑やかさとか、街中でスポーツ新聞を広げながらブツブツ言ってるおじさんの姿が日常の風景としてインプットされていく。

 試合も、例えばドラマチックな逆転劇や記録に残るシーンが毎日見られるわけではないけど、テレビやラジオをつけたら必ずそこにある。よく「プロ野球はみんなダラダラプレーして高校球児みたいな必死さが無い」ってディスり方する人がいるけど、プロ野球選手が毎日毎日ヘッスラなんかしてたら見てる方もそのうち息詰まりますよ。明日も明後日も試合があって、見ている側も適度に目を離せる安心感がプロ野球のいいところだと僕は思います。

 球場へ行けば必ず「そこにいた」鳥谷選手って、まさにこのプロ野球の魅力を体現したような選手でした。派手さは無くとも、打撃、守備共に極めて堅実。それでいて怪我をしない。顔面にデッドボールを受けた翌日、フェイスガードを装着して代打で出場なんてこともありましたね。だから正確には「怪我をしない」じゃなくて「怪我を怪我だと周りに思わせない」。鉄人の称号も納得のプロ根性でした。

実に突き進め

「幼いときからの親の教えが『自分で決めたことは最後までやり通しなさい』だった。(プロになって)生活や家族がかかっているし、読む本、取る食事、全てが野球につながっている。試合に出ることこそが、自分の価値と思ってやってきたからね」

 

(サンケイスポーツ2019年7月29日 球界ここだけの話(1963)より)

 鳥谷選手は寡黙なチームリーダー、若手を背中で引っ張っていくというイメージで、実際に色々なインタビューに目を通してもそのストイックさには驚かされるばかりでした。同時に自分を客観視する能力が高い。プロ野球の何たるやをよく理解している選手だと思います(名選手の中にもこの点に関してはトンチンカンなこと言ってる人が少なくない)。

 何かと「おもろい」ことが重視される関西の地で、彼のような堅実さが売りの選手は息苦しい場面も多かったと思います。実際、甲子園でそんなヤジを聞くこともありました。ヒーローインタビュー中に「もっとおもろいこと言えー!」とかね。いや、4万人の前でハードル上げすぎだから。

 鳥谷選手は今年で38歳。ベテランとは言えまだまだやれる年齢です。今シーズンの成績は確かに不振でも、まだ若手と一緒にショートを守れるくらい動きにキレがあるし、環境を変えてもう一花咲かせる可能性は十分でしょう。それこそ、阪神のフロントを見返すような大活躍を見せて欲しいものです。

 本当は阪神で、甲子園でみんなに見送られながら引退…というのが僕の理想だったんですけど。この退団がそれ以上のドラマに昇華することを祈りつつ、残り少なくなった鳥谷選手のタテジマ姿を目に焼き付けようと思います。夢のせて、はばたけ鳥谷―。