この間、会社の元同僚との飲み会でたまたま特撮の話なったんです。
その元同僚は、普段は特撮にどっぷりというわけではないけど、気が向いたときにYouTubeやAmazonプライムで「仮面ライダー」を見ていると。
僕ら世代(30代前半)が今改めて見る仮面ライダー。僕も最近『ドライブ』にハマっているところなので、もしかしたら意気投合できるかも思い訊いてみました。
「何のライダー見てるの?竹内涼真が出てるドライブ?それとも菅田将暉のWとか?」
すると元同僚、「お前は全然分かってないなあ」と言わんばかりの表情を浮かべながらこう答えました。
「俺は平成の仮面ライダーは見ない!初代とV3や!」
…まさかの昭和ライダー!
いや、「まさかの」なんて言うと昭和ライダーファンの方に怒られてしまいますね。会話の流れの中で、僕は勝手に「仮面ライダー=平成ライダー」の方程式を作ってしまっていた。というのも、重度の特撮オタクである僕にとっても、昭和の仮面ライダーって全くと言っていいほど未知の世界だったんです。キャラクターは知っているけど、映像作品はほとんどまともに見たことがなくて。
仮面ライダーかくあるべし
同世代が語る昭和ライダーの世界はとても興味深く、僕はしばらくその元同僚の話に耳を傾けてみることにしました。
そしたらもうね……本当に彼は僕と同世代なのかと疑ってしまうようなライダーへのこだわりの数々。そう、それはまるで本郷猛こと藤岡弘、が乗り移ったかのようでした。
彼のこだわりその①。ライダーには欠かせない「変身!」の掛け声。
彼曰く、平成ライダーは「変身!」の瞬間がなよっとしていて見ていられないとのこと。彼が特に崇拝している本郷猛、一文字隼人、風見志郎の3人は、それはもう命を切り売りするような勢いで「変身!」の掛け声とポーズに全てを懸けている。
こだわりその②。特撮の迫力。
昭和ライダーが活躍していた1970年代。当然、現在のようなCGの技術はありませんが、撮影における規制が今よりずっとおおらかだった時代です。爆発シーンやライダーによるバイクアクションは全て本物。中にはスタント無しで俳優本人が演じているケースもあり、そこに真の迫力がある。
こだわりその③。孤独なヒーローの背中を見よ。
改造人間である事実を隠しながら人知れず戦うヒーロー、これこそが仮面ライダーの神髄。平成のライダーとは“孤独さ”のクローズアップの仕方には大きな違いがあり、その背中に「漢」を感じる。
実際に見てみました
彼がどうしてここまで「昭和ライダー」に心酔しているのか、理由はよく分かりました。そこまで言うならこ、の機会に僕も見てみよう。YouTubeで配信されているのなら尚更見ない理由はありません。
僕が今回見たのがこちらの作品。
『劇場版 仮面ライダーV3対デストロン怪人』とTVシリーズの第43話『敵か味方か?謎のライダーマン』。
まずは劇場版。初っ端からドでかい爆発音と共にバイクに乗って颯爽と登場するV3がひたすらにかっこいい。
豪快な火薬の演出も、今では見られない規模なだけにやはり迫力を感じます。そこから主人公・風見志郎を演じる宮内洋本人が唄う主題歌『戦え!仮面ライダーV3』へなだれ込む。なんかこう、1973年という時代の勢いみたいなものが画面からひしひしと感じられてテンション上がりました。
風見志郎は程よい男臭さを残しつつも見た目は凄くスマートで、現代でも通用するイケメンライダーという印象。変身ポーズのキレもハンパなかったけど、この映画ではまだ「ブイスリャア!」とは言ってませんでしたね。
海岸で怪人の攻撃を受けるシーンなんかは、恐らくスタント無しで宮内さん本人が演じられていますが、普通に至近距離で爆発受けていて本当に怪我が無かったのか心配になるレベルでした。
あと、怪人役の方も含めていわゆる「ヒーローもの芝居」が徹底されていて、ちょっと笑いそうにもなるんだけれども、見ていくうちにこれが癖になる。書道で言う「とめ、はね」の意識がばっちり行き届いている感じ。
アメトーークの仮面ライダー芸人でも紹介された、ファンには有名な爆薬大盤振る舞い。改めて見るとヤバ過ぎる……(笑)。
続いてTVシリーズ第43話。ライダーマンの初登場編です。
ライダーマン、申し訳ないけどそのビジュアルは子供の頃からずっと「かっこわりぃ~」でした。映像を見ても正直その印象は覆らなかったのですが、誕生の経緯はなかなかハードでドラマチック。硫酸のプールに腕を突っ込まれて溶かされるなんて、今の子供番組じゃ絶対あり得ない。
それと、V3って煙突の上とか橋のアーチのてっぺんとか、やたら高いところで怪人を待ち受けているのが面白いですね。これも合成なしで実際にアクターさんが上っているんですか……凄い時代だ。
時代が許した本物の迫力
昭和ライダーのほんの一部分をのぞき見してみて、平成ライダーとはまた違う刺激がありました。
スタント無しのアクションはもちろん、改造人間の描写や番組の見せ場としての変身シーンなど、時代が許した本物の迫力をこれでもかと見せつけられた気がします。
パロディコントのネタにもなった、「いかにも昭和なヒーロー」の演出も今見ると一周して新しい印象すら受けました。斜に構えた部分が無いというか、一つひとつのシーンに演者も演出側も真正面からぶち当たっていったが故の力強さと説得力。そして時々垣間見える不器用さが愛おしい。
4歳半の息子にもちらっと見せてみたところ、変身ポーズへの食いつきは昭和ライダーのほうが断然いい。10秒ずつ巻き戻して確認しながら、顔つきや指先の感じまできちっと真似したがります。僕がふざけて藤岡弘、風に「ライダぁ~!」って変身しようとしたらキャッキャッ言って喜んでます。昭和、平成もひっくるめて、やはり仮面ライダーには男の子を心を掴む普遍的な魅力があるのだな、と。
途中参戦という形にはなりますが、とりあえず『V3』はYouTubeの配信を追いかけてみようと思います。僕も風見志郎みたいに「ブイスリャア!」って変身ポーズとってみたい。で、時々ツッコミ入れながら楽しむとしよう。