僕が僕であること(仮)

ジードとルーブが大好きな4歳の息子とのウルトラ備忘録です。

~絆という名のウルトラマン~『ウルトラマンネクサス』の逆転サヨナラ劇を回想する

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 YouTubeの円谷プロ公式チャンネルにて、先月から『ウルトラマンネクサス』の配信がスタートしました。

www.youtube.com

 昨年の9月からスタートした『ウルトラマンガイア』の配信もまだ終わらないうちに『ネクサス』の配信開始とは、平成ウルトラマンを応援してきたファンの一人として喜びを感じると同時に、こんな贅沢をしてもいいものかと戸惑ってしまうような状況です。79年のアニメ作品『ザ・ウルトラマン』の配信も進行中で、現行の『タイガ』も合わせると週に4回もウルトラマンを見ることができる。いやー、凄い時代になりました。

 今回は、僕が初めてウルトラマンをリアルタイムで完走した作品である『ネクサス』について、思いの丈を綴ってみようと思います。今でこそカルト的な人気を誇る当作品ですが、放送当時はファンの間で、もう賛否両論どころじゃないほどの騒ぎだったんですよ。その辺りの記憶も含めて。

 

送開始前の大きな期待

 『ネクサス』の記事を書くにあたり、実家からあるものを引っ張り出してきました。円谷プロのオフィシャルマガジン、ウルトラマンDNAの創刊号です。

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 この創刊号のネクサス特集が今読むとなかなか興味深くて。

 企画書から引用した、ウルトラファンの心をくすぐる熱いフレーズ。渋谷浩康プロデューサーの作品にかける並々ならぬ意気込みと、ネクサスそのものの奥ゆかしいデザインを堪能できるグラビアの数々。その内容は『ネクサス』放送開始前のウルトラマンを取り巻く空気感や、『コスモス』以来2年ぶりとなるテレビシリーズへの期待感で溢れています。

巨大ヒーローとリアルなメカアクションの共存!かつて円谷プロが構築したハードSF世界の完全再現と更なるエボリューション(進化)!!!

―「ウルトラマンネクサス」企画書より―

 「エボリューション(進化)!!!」ですよ。その括弧書きは果たして要るのかと(笑)。

 それはさておき。円谷プロのオフィシャル、という雑誌の性格も大いに関係しているとは思うのですが、まるでスタッフ全員が新しいウルトラマンの大成功を確信しているかのような自信満々の文言が放送開始前にズラリと並んでいるのには驚かされます。初代ウルトラマンが初めて人類の前に現れたときの衝撃を引用しながらネクサスの特徴的なシルエットを大きく掲載した見開きのページなんかは、もう読んでいるこっちが引いちゃうくらいの「黙って期待したまえ」感。

 僕も当時、これを読みながら一体どんなウルトラマンが見られるんだろうと本当にワクワクしました。ウルトラの長い歴史を大きく塗り替えるような伝説が生まれるのでは、と。

戦の結果…

 放送が始まると、『ネクサス』はウルトラシリーズのメインターゲットである未就学児の支持を十分に得ることができず、低視聴率と玩具売上不振のあおりを受けて結果的に番組自体が1クール分短縮されてしまったのは周知の通り。

 僕も、『ネクサス』はつまらないわけではないけど、特に初期の20話くらいまではどこか釈然としない気持ちを抱えたままリアルタイムで追っていたことをよく覚えています。一言で表すと、

「これ、思ってたんとちがーう!」

 本来のターゲットよりも上の年齢の層を取り込もうと、これまでのウルトラに無かった新しい設定や演出に挑戦した結果、画面からウルトラシリーズらしい爽快感が失われているように思えたのです。

 作風が暗いのはいいとして、登場する一般人にはほぼほぼビーストに食い殺される役割しか与えられていないし、ナイトレイダーの面々もみんないつもしかめっ面。人間らしい会話が聞こえて来ず、なんかこう、広い海を息継ぎせずに泳ぎ続けているような苦しい感じが…。同時期に放送されていた東映の戦隊シリーズやライダーと比べても、単純にキャラクターを魅力的に描く土壌が出来上がっていないように感じられました。

 メタフィールドやメモリーポリス等諸々の設定のガバガバ具合も気になりましたね。いくら人里離れた山奥と言っても、あんな50mもある怪獣や巨人が出現してその情報が一切漏れないなんてあり得ないでしょ、とか。新しいヒーロー像を作るために番組が自ら抱えた宿題を消化しきれていない、そんな印象で。

「絆ーネクサスー」という伝説

 それでも土曜の朝7時半にちゃんとテレビの前に座っていられたのは、一端のウルトラマン好きとして『ネクサス』というウルトラ史における挑戦の着地点をこの目で見届けたかった。これに尽きます。

 今なおファンの間で語り草となっている最終回「絆ーネクサスー」。僕もこれまでに数えきれないほど見返してきました。提示された伏線の回収、ウルトラマンの力が人から人へ受け継がれていくという独自のコンセプトを最大限活用した作劇、怒涛のクライマックスを力技で見せ切ったあの30分間は、まさにウルトラシリーズにおける一つの伝説と言ってもいいと思います。

 当時、僕は平成ウルトラシリーズのファンサイトを運営していました。『ネクサス』に関しては、特に24話までの姫矢編には厳しい批評を掲示板に書き込まれる方が多かったと記憶しています。

 ところが最終回の放送が終わった直後からその評価は一変。「散々文句言ったけど、最後まで見続けて本当に良かった」ほとんどの方がそういった趣旨の感想を述べていましたし、僕も全く同じ気持ちでした。最後の孤門のセリフじゃないですけど、「あきらめなくて良かった」と。

転劇はいつまでも記憶に残る

 プロ野球の試合とか見てても、例えば贔屓のチームが先制、中押し、ダメ押しと理想的な試合運びで勝利した試合より、劣勢を最後の最後に跳ね返した試合や、時には負け試合のほうが後々語り継がれたりする。それは多分、孤門が「変身しない主人公」としてデュナミストの伴走者であり続けたように、試合を見ながら感情移入できるシーンが節目節目にあって、折れそうになった気持ちが何度も繋ぎ止められたからなのだと思います。

 時々、自分が『ネクサス』をリアルタイムで完走できたことを誇らしげに語りたくなるんですよ。僕にとって『ネクサス』は文句なしの傑作とは言いづらいけど、頭の片隅にいつも置いておきたい、そして時々引っ張り出してきてぎゅっと抱きしめたい。そんな大切な作品であることは間違いないですね。

 そう言えば、YouTubeによる毎週配信を知った嫁さんが『ネクサス』に興味を持っていて。普段のウルトラマンとは違う感じらしいから見てみたいそうです。あ、いや確かに違う感じなんだけど…どう言ったらいいんだろう。他の作品を薦めるときのように、「とりあえず見て!」と無責任に言い放ちにくいぞ。

 せっかくだし、ナイトレイダーに入隊する直前の孤門に忠告した松永管理官のセリフを引用して、「どうします?今ならまだ後戻りできますよ」とビビらせてみようかしら(笑)。